日本の先制点を挙げ、7ゴールの口火を切った岡崎慎司 [写真]=兼子愼一郎
まさに“電光石火”の一撃だった。
オフサイドギリギリで飛び出したエースストライカーがファーストチャンスでゴールネットを揺らす。この一発がゴールラッシュの口火を切った。
6月3日にキリンカップサッカー2016の初戦でブルガリア代表と対戦した日本代表は、開始4分に岡崎慎司(レスター)のヘディングで先制に成功。守りを固めてくることが予想された相手に対して早い時間にリードを奪い、7-2の大勝で6月7日に大阪・市立吹田スタジアムで行われるヴァイッド・ハリルホジッチ監督の母国ボスニア・ヘルツェゴヴィナとの決勝に駒を進めた。
試合の流れを決める会心の一撃を、岡崎が得意のヘディングで叩き込んだ。長谷部誠(フランクフルト)が中盤の底から大きく右へ展開したボールを酒井宏樹(ハノーファー)がつなぎ、ペナルティエリア右手前の柏木陽介(浦和レッズ)が相手DFに囲まれながら巧みにターンして得意の左足で浮き球パス。これに「陽介がボールを持つと見ていないようなところでも出してくれる」と信じて鋭く抜け出した岡崎が頭で合わせて先制点をマークした。これで日本代表通算49ゴール目。イングランド・プレミアリーグを制した男が、凱旋試合を自らの祝砲で盛り上げた形だ。
「早い時間帯に先制点を狙っていた。ちょっと(タイミング)が早いかなと思ったけど、オフサイドはなかったので。あそこで左利きの選手がボールを持つと、いい位置に出してくれる。それがうまく決まって良かった」
得点シーン以外にも岡崎らしさは随所に現れていた。中盤に顔を出してポストプレーでビルドアップに貢献すると、35分には右サイドで粘ってボールをつなぎ、香川真司(ドルトムント)のチーム3点目の起点に。前半だけで滝川二高の後輩でもある金崎夢生(鹿島アントラーズ)との交代で“お役御免”となったが、その存在感は十分に見せつけた。
フィジカルコンディションは決してベストではなかった。プレミアリーグ終了後、優勝を祝福するイベントへの出席などでピッチから離れる時間が長かった影響だ。
「(帰国直後に比べたら)だいぶ体は動いたと思いますけど、トップコンディションから比べたらキツかった。(45分間の出場は)最初から言われていたんですけど、もともとは『出すかどうかも分からない』と言われていたので。45分だけでも使ってもらえてありがたかったですね」
出るからには限られた時間でも結果を出す――。それが世界を相手に戦ってきたストライカーとしての矜持だ。チームを勢いづける一発を叩き込んだ岡崎の勝負強さが、日本代表に大勝を呼び込んだ。
文=青山知雄