2015.12.29

決断迫る手倉森ジャパン、リオ五輪最終予選メンバー“残り2枠”は?

手倉森誠
異例のメンバー発表を行った手倉森監督。チームマネジメントにも注目が集まる
元サッカーダイジェスト記者。12年からフリーランスに。

 決定力不足ならぬ、決断力不足――。

 来年1月にリオデジャネイロ・オリンピック アジア最終予選に臨むU-22日本代表は、12月上旬に行われたカタール・UAE遠征で、U-22イエメン戦、U-22ウズベキスタン戦のいずれもスコアレスドローと、もどかしいゲームを続けてしまったが、チームを率いる手倉森誠監督も煮え切らない姿勢を示してしまった。

 12月18日に行われた会見で代表メンバー23人を発表するはずが、21人しか決められず、残り2名の発表を30日に先延ばしにしたのだ。指揮官が発表前夜の心境を明かす。

「昨日まで悩んでも絞り切れなかったので、霜田(正浩技術委員長)さんに電話して21人の発表でいいですか、と相談しました」

 たとえそれが事実だとしても、「最後まで競争させたい」と宣言してしまえば「おい、おい、大丈夫か」と余計な心配を生じさせることもないのだが、決められなかったことを素直に明かし、笑いに変えてしまうあたりが手倉森監督の憎めないところでもある。

 発表されたメンバーを見れば、どのポジションで悩んでいるのかは一目瞭然だ。

 23人のエントリーは、ワールドカップと同じ人数である。フィールドプレーヤーの各ポジションに2人ずつを選び、GKだけ3人にするというのがセオリーだ。

 その通例にそって見ていくと、GKは櫛引政敏(清水エスパルス)、杉本大地(京都サンガF.C.)、中村航輔(アビスパ福岡)。右サイドバックは松原健(アルビレックス新潟)と室屋成(明治大学)、左サイドバックは山中亮輔(柏レイソル)と亀川諒史(アビスパ福岡)。ここまではセオリーどおりだが、左右のセンターバックは、奈良竜樹(FC東京)、岩波拓也(ヴィッセル神戸)、植田直通(鹿島アントラーズ)の3人しかいない。

 中盤より前のポジションにおいても、ダブルボランチには大島僚太(川崎フロンターレ)、遠藤航(湘南ベルマーレ)、原川力(京都サンガF.C.)、井手口陽介(ガンバ大阪)。2トップには久保裕也(ヤング・ボーイズ/スイス)、鈴木武蔵(水戸ホーリーホック)、浅野拓磨(サンフレッチェ広島)、オナイウ阿道(ジェフユナイテッド千葉)と、2ポジションに対して4人ずつ選ばれているが、左右の攻撃的MFには矢島慎也(ファジアーノ岡山)、中島翔哉(FC東京)、南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)の3人しか選出されなかった。

 1人少ないのはセンターバックと、攻撃的MF――。

「無得点に終わったカタール(・UAE)遠征の際に、攻撃の武器、特徴のある選手を入れるべきかを考えました。センターバックが1枚少ない状況ですけれど、その分を前に入れるかどうかをもう少し考えたい」

 指揮官の言葉を額面どおり受け取れば、残りの2名は攻撃的MFかFWの選手を選ぶことになる。2名の発表を先延ばしにしたことはともかく、攻撃の枚数を増やすという決断自体には納得がいく。

 カタールで行われるアジア最終予選は、セントラル方式のトーナメント戦によって争われる。グループステージのあとのノックアウトステージは、負けたら終わり。勝たなければ、リオ五輪への出場権は掴み取れない。それには、ゴールをもぎ取る必要がある。バラエティに富む攻撃のカードをなるべく多く懐に備えておきたいと指揮官が考えるのも当然だろう。

 22日からスタートした石垣島キャンプでは、ボランチの遠藤をセンターバックで起用するテストも行っている。4人目のセンターバックと目されていた西野貴治(G大阪)が、負傷のために天皇杯を欠場していることを考えても、センターバックは前述の3人でいくと見ていいだろう。

 となれば、18日のメンバー発表会見の時点で予想される“最後のふたり”の候補は、荒野拓馬(コンサドーレ札幌)、金森健志(アビスパ福岡)、前田直輝(松本山雅FC)、豊川雄太(鹿島アントラーズ)、関根貴大(浦和レッズ)、鎌田大地(サガン鳥栖)の6人になる。

 荒野は14年1月のチーム立ち上げ時のメンバーで、それ以降コンスタントに招集されてきた。2列目でも前線でもプレーできるユーティリティ性と守備意識の高さが魅力で、14年1月のU-22アジア選手権、14年9月のアジア大会ではスーパーサブとして起用され、指揮官の信頼も厚い。

 金森も立ち上げ時から選ばれている選手。15年3月のリオ五輪アジア1次予選では選考から漏れたものの、所属する福岡でレギュラーポジションを掴んで成長すると、U-22日本代表にも再び選ばれるようになった。1.5列目から飛び出し、フィニッシュまで持ち込む能力に優れ、U-22日本代表でのシュート練習においても、その精度の高さが光る。

 今シーズン、東京ヴェルディから松本山雅に期限付き移籍した前田は、苦手としていた守備力やハードワークを身につけ、7月のU-22コスタリカ戦でU-22日本代表デビューを果たした。右サイドからカットインして左足で放つ強烈なシュートとドリブルが武器で、野津田岳人(広島)が負傷した今、攻撃陣で唯一のレフティという希少価値もある。

 昨年12月のタイ・バングラディシュ遠征のU-21タイ戦でゴール奪い、存在感を高めた豊川は、主に左サイドを主戦場とするアタッカー。今シーズンは所属する鹿島で出場機会になかなか恵まれず、カタール・UAE遠征にも招集されなかったが、石垣島合宿には招集され、アピールのチャンスに恵まれた。

 浦和の関根は、J1でコンスタントに出場する数少ない選手。初招集された10月の佐賀合宿で右サイドハーフとしてプレーし、指揮官から「スピードとドリブルだけでなく、間や意外性のあるパスも見せてくれて、チームのアクセントになり得る存在」との賛辞を引き出すことに成功した。ただし、1年間プレーし続けた疲労が出たのか、カタール・UAE遠征では少し元気がなかったのが気になった。

 今シーズンのルーキーである鎌田は8月の京都合宿に初めて呼ばれて以降、コンスタントに招集されている。本職はトップ下だが、U-22日本代表では前線で起用されることが多い。高さもあって、キープ力もあり、ゴール前でも決定的な仕事もできる。

 もっとも、石垣島合宿が終わりに近づくに連れ、状況が少し変わってきている。

 右大腿部を傷めた金森が途中離脱することになり、事実上、最終予選のメンバーに選ばれる可能性はなくなった。

 さらに、「26日の天皇杯準々決勝で敗れたチームの選手は27日に合流させる」と霜田技術委員長が明言していたにもかかわらず、G大阪に敗れた鳥栖の鎌田は追加招集されなかったため、落選したということが考えられる。

 石垣島合宿は22日から30日まで行われ、来たる決戦に向け、合宿の雰囲気も良好だという。そこで、チームと過ごす時間の長い選手を優先したい、と指揮官が考えたのだとしても不思議はなく、だとすれば、鎌田のみならず、浦和が天皇杯準決勝に勝ち進んだため、石垣島合宿に合流できない関根も選出は難しいかもしれない。

 となれば、荒野、前田、豊川の中から2人が選ばれることになり、カタール・UAE遠征に招集されていた前田と荒野が最有力候補となりそうだ。

 2名を先送りするという異例のメンバー発表によって、最後まで競争意識を煽ることもできたかもしれないが、合宿に参加しているメンバーの中に、「すでに確定した選手」「ラスト2名を争う選手」「バックアップの選手」と混在すれば、モチベーションのコントロール、チームマネジメントは難しくなった可能性もある。最後の2名の選択とともに、手倉森監督のチームコントロールの手腕にも注目したい。

 最終発表は30日。そして年明け1月2日には23人のメンバーで、決戦の地、カタールのドーハに向けて旅立つ。

文=飯尾篤史

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