リーベル・プレート戦に出場したG大阪MF倉田秋 [写真]=兼子愼一郎
文=青山知雄
突然のスクランブル起用だった。
11日に行われたスルガ銀行チャンピオンシップ2015でリーベル・プレート(アルゼンチン)と対戦したガンバ大阪は、EAFF東アジアカップ2015の中国代表戦に出場したGK東口順昭、DF丹羽大輝、MF米倉恒貴、FW宇佐美貴史の4選手をメンバーから外し、DF藤春廣輝、MF倉田秋をベンチに置いて試合に臨んだ。
だが、キックオフから圧力を強めてくる相手に押し込まれて先制を許したことで状況が一変。「追いつくために」と考えた長谷川健太監督は、前日に中国から帰国したばかりの倉田を前半途中から、藤春を後半開始から投入する。
試合前に長谷川監督から「いつ行くか分からないから準備しておくように」と言われていた倉田は、早々にリードを許したことで「ハル(藤春)と『意外と早めに出番があるかも』と話していた」ことが的中。リードを2点に広げられた41分にピッチへ送り出された。
前半をベンチから見ていた倉田は、「前でタメができていなかったし、ゴール前に運ぶ回数が少なかったので、自分が入ったらリスクを負ってでも仕掛けてボールを前に運ぼうと意識した」と考えた。前半終了間際にドリブルで相手DFを引き剥がしてペナルティエリア付近をえぐってチャンスを作ると、後半もゴール前でシュートを放つなど決定機に絡んでいる。惜しくもゴールはならなかったが、この日は東アジアカップの大会期間中に日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督から言われた言葉を意識してプレーしていた。
「中国ではハリルさんから毎日のように『お前はペナルティエリアの中へどんどん入っていけ』と言われていたことが頭にこびりついていた。今日はそれを意識していたし、監督にはずっと『ゴールを取れ』と言われていたので、いつもより悔しいし、情けなかった。あれを決め切ることが自分にとって一番の課題」と反省しきり。ただし、東アジアカップから続く過密日程については「これを繰り返して乗り越えれば、もっとタフで強い選手になれると思うんで、どんどん試合がしたい」と意識の高さを見せていた。
一方の藤春は「長くて45分と言われていたので、まさか後半開始から行くとは」と驚きの表情を見せながら、「とりあえず45分だけだったんで、ガンガン行って、死ぬ気で走ろうと思った」と果敢に走り回って自慢のスピードを披露。85分にはFW赤嶺真吾のポストプレーから高速ドリブルで持ち上がって決定機を演出した。藤春も倉田と同じくハリルホジッチ監督の言葉が頭に残っていたという。
「向こうが強いチームだったんで、相手にボールが入った時にはガツンと行こうという気持ちでやっていた。そのへんはやれたかなという自信はあります。そこは代表でもめっちゃ言われていたし、こういう試合からやっていかないと代表にはもう呼ばれなくなると思う。どんどん意識を変えなければいけないし、球際の部分は初めて代表に呼んでもらった時から意識していますけど、そこはこれからも本当に積極的にやっていきたい。今日は体力的に今までで一番きつかったし、負けたのは悔しかったですけど、本当に充実した45分間でした」
試合は結局0-3で完敗したが、両選手ともこの試合を踏まえて、Jリーグでのプレーに強い覚悟を固めている様子だった。
倉田が「今日の試合はいい感じでドリブルやパスで相手を剥がせる場面があった。その精度を上げていきたいし、全員が絡んだコンビネーションだったり、1人で打開する能力をつけなあかんと感じた。決めきる部分はもっと追求していきたいし、ミスを恐れずに仕掛けて成功する回数を増やしたい」と話せば、藤春は「まだまだJリーグのプレッシャーは甘い。そういうところをしっかりやらないと海外の選手には敵わないと感じた。このタイミングにリーベルとやれたのは良かったし、またJリーグでしっかり結果を残して、代表に呼ばれるようにしないと」とコメントしている。
東アジアカップの苦闘で味わった自身の力不足、そしてハリルホジッチ監督の薫陶を糧にJリーグでの進化を誓う。一足早くチームで試合に出場した倉田と藤春の言葉とプレーからも、その意識が感じられた点はポジティブな部分と言える。「継続なくして成長なし」。決して一朝一夕で変わるものではないが、彼らを含めた代表組の今後の戦いに注目していきたい。