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指揮官が「底知れない」と称える植田直通…経験を重ね世界規格のDFへ

2015.07.01

A代表にも招集されて成長著しい植田直通[写真]=Getty Images

文=飯尾篤史

 日本人は個の能力で劣るから、数的優位を作って戦う必要がある――。そんな風に、組織で戦うことの重要性が説かれて久しいが、植田直通の考えは、シンプルだ。

「一対一では誰にも負けたくないし、負ける気もしない。自分が相手のエースを潰せば、チームも勝てると思うんで」

 その言葉には、サッカーの本質がなんたるかが示されている。

 身長186センチ、体重77キロ。韓国や中東の屈強なストライカーと並んでもまったく見劣りしない。相手FWもろとも叩き潰すような力強いヘディングでチームのピンチを何度も救ってきた。パワーだけでなく、50メートル6秒1で駆け抜けるスピードも兼ね備え、「強さ」「高さ」「速さ」の三拍子揃った、日本においては稀有なセンターバックだ。

 その経歴も珍しい。小学生時代にはサッカーとテコンドーの両方に打ち込み、テコンドーでは世界大会にも出場した根っからのファイター。サッカーに専念するようになったのは中学からで、大津高時代にFWからセンターバックにコンバートされ、わずか1年でU-16日本代表に選出されると、翌2011年にはU-17ワールドカップに出場した。

 このときセンターバックのコンビを組んだのが、U-22日本代表でもパートナーで、互いにライバルと認め合う岩波拓也だった。

 面白いのはこのふたり、身長こそ同じ186センチだが、パーソナリティもプレースタイルもまるで異なっていることだ。

 昨年9月のアジア大会でのことだ。岩波が「僕はコミュニケーションを大事にするタイプ」と語り、練習後もチームメイトとボールを蹴ったり、コーチ陣と議論をかわしたりしていたのに対し、植田は仲間から少し離れたところに座り込み、膝にボールをはさんで黙々と、ストイックに腹筋に励んでいた。取材陣に対しても、饒舌な岩波とは異なり、プレーで示します、とばかりに植田の口数は決して多くない。

 プレー面でも、ラインコントロールや攻撃の起点となる縦パスなど、トータルバランスが高い岩波に対し、植田は豪快だが、身体能力に頼りすぎるときもあり、やや粗削りな面がある。だが、粗さとは、可能性の裏返しでもある。安定したパフォーマンスが発揮できるようになれば、世界規格のとんでもないDFへと成長するのではないか、という期待を抱かせる。

「植田のポテンシャルは底知れないね」と手倉森誠監督も称えるが、その可能性に惚れたのは、U-22日本代表の指揮官だけではない。今年1月にはハビエル・アギーレ前日本代表監督によってアジアカップのメンバーに選ばれ、5月の日本代表候補キャンプではヴァイッド・ハリルホジッチ現日本代表監督の声がかかった。

 U-22日本代表の結成から1年半が経ち、所属する鹿島アントラーズでも経験を積み、代表チームの中心としての自覚も増している。

「自分が引っ張っていくぐらいの気持ちでやろうと思っています。鹿島の代表として来ているし、日本を代表する覚悟を持って。自分がこのチームをしっかり盛り上げていきたいと思います」

 7月1日のコスタリカ戦、そして半年後のリオ五輪アジア最終予選。相手FWが強烈であればあるほど、植田の輝きは増す。

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