(上段左から)長谷部、山口、細貝、遠藤保、柴崎、藤田(下段左から)永木、田口、遠藤航、大谷、米本 [写真]=Getty Images
日本代表の監督就任が内定し、ビザなどの手続きが間に合えば3月27日のチュニジア戦から指揮をとることになるヴァヒド・ハリルホジッチ氏。その初戦のメンバー選考は技術委員会が主導となる見込みだが、ハリルホジッチの意向も大なり小なり反映されるはずだ。
徹底して勝利にこだわる性格で、チームへの献身と規律を強く要求する同氏。戦術面ではプレッシングとシンプルで速いパスワークを理想としながら、必要に応じて引いた位置からのロングカウンターも繰り出すなど、豊富な運動量と柔軟な戦術意識が求められる。
サイドアタッカーや攻撃的な中盤は個性的な武器を持った選手をチームに融合して行く傾向にあるが、チームの心臓となるボランチに関しては高いアベレージの貢献度が重視される。また過去に率いたチームを見る限り、特に守備での強さは高い水準を求められることになるだろう。ボランチが2枚でも3枚でも、プラスアルファの個性は尊重されても、ある程度は戦術的な役割を共有することになる。
精神的にも戦術的にも、長谷部誠(フランクフルト)は引き続き有力候補だが、高いインテンシティの流れで90分間ハードワークし、体も張れる選手としては山口蛍(セレッソ大阪)がベストチョイスかもしれない。負傷で長く戦列を離れ、今季はJ2でプレーする立場だが、ハリルホジッチの基準から見ても資質は高い。
タイプとしては細貝萌(ヘルタ・ベルリン)も該当するが、速い流れの中で正確なプレーが求められるため、クラブで出場機会を失っていると評価を下げざるをえない。年齢にこだわるタイプではないため遠藤保仁(ガンバ大阪)も選考の対象にはなるが、このポジションに求める機動力の部分で割引かれるかもしれない。若い柴崎岳(鹿島アントラーズ)は鮮やかなサイドアタックを実現しうる視野の広さと高いセンスを買われるはずだが、主力に定着するには、よりハードワークをベースに持ち味を発揮していく必要があるだろう。
このポジションで抜擢の可能性がある選手として、サガン鳥栖の藤田直之と湘南ベルマーレの永木亮太を推す。両者ともハードワークをベースとしたチームで主軸を担い、その中でプレーの正確性も発揮できているのはアドバンテージだ。藤田はロングスロー、永木はFKというリスタートの武器を持っていることもプラスアルファになる。ハビエル・アギーレ前監督に何度か選ばれた田口泰士(名古屋グランパス)もスキルの正確性は間違いないが、守備面で大きな成長が見られないと難しい。
ポテンシャルとしては遠藤航(湘南)も面白いが、クラブではDFラインに入っており、リオ五輪を目指すU-22代表でのプレー次第という部分もある。ただ、アギーレ前監督と同じく、ハリルホジッチは複数のポジションができる選手を必ず入れるので、そうした基準からも早い段階から重宝される可能性がある。また代表経験が無く、30歳という年齢からも難しいかもしれないが、本質的なタイプとしてハリルホジッチの理想に近い大谷秀和(柏レイソル)が、国内組ベースの東アジアカップ(8月開催)などで選出されても不思議ではない。
長らく代表入りが期待される米本拓司(FC東京)はボール奪取力と機動力の面で外国人監督から見ても光るものがあるはずで、攻撃センスもあるが、攻守の切り替わりの瞬間でポジショニングにバラツキが出る課題をハリルホジッチがどう見るかはポイントになりそうだ。ただ、多少荒削りな選手を育てることに意欲を見せるタイプなので、チームに入れて改善点をアドバイスしていくかもしれない。
色々な引き出しを持つ監督であるため、ベースのシステムが[4-2-3-1]なのか[4-3-3]か、あるいは他の形か定かではないが、ボランチの軸がしっかりと定まること。全体的に競争が活性化する中でも、コートジボワールのディディエ・ゾコラやアルジェリアのメディ・ラセンの様な強さ、柔軟性、正確性を兼ね備え、組織に影響力のあるボランチが主力を担っていくはずだ。
文=河治良幸