2014.07.03

W杯ラウンド16に見る日本代表が目指すべき方向性は?

ザッケローニ
グループリーグで敗れたザック・ジャパン。日本代表が今後目指すべきスタイルは? [写真]=Getty Images

 日本代表がワールドカップでベスト8に行くためには、何が必要なのか。どういった方向性に進むべきなのか。ベスト8を賭けたラウンド16の試合を現地で取材しながら、そんなことばかりを考えていた。ラウンド16の8試合は、そのすべてが本当にレベルの高いゲームだった。「今回の日本代表が代わりに戦っても、何とかなるかもしれない」と感じたのは、正直、コスタリカvsギリシャの一戦のみ。あとの7試合は、残念ながら、大きなレベル差を感じる試合だった。ラウンド16で敗れたチームも含めて、ほとんどのチームが日本より明らかに格上と感じさせられたことはショックではあるが、それが現実だろう。日本も4年前より進歩したことは間違いないが、他国の進歩がそれ以上のスピードだということをまずは認めなければならない。

 その上で、今回は、ラウンド16で敗れた8カ国の戦いぶりを振り返りながら、日本代表が目指す方向性を考えてみたいと思う。

 まず、ブラジルをPK戦まで追い詰めたチリ。延長後半の最後のチャンス、クロスバーを叩いたマウリシオ・ピニージャのシュートが、あと数10センチ下だったならば、歴史に残る勝利を収めていたはずだ。日本と同様に小柄な選手が多いことから、「日本の目指すべきスタイル」と言われがちなチリのサッカーだが、彼らのテクニック球際の強さは強豪国と比べても遜色ないレベルである。また、アレクシス・サンチェスを始め、得点につながる決定的なプレーができる選手もそろっている。将来的には、目指したいスタイルではあるが、4年後にこのレベルまで行くのはかなり難しそうだ。

 コロンビアと激戦を演じたウルグアイは、ルイス・スアレスという圧倒的な個を失ったことにより、この段階での敗戦となったが、仮にスアレスがあのような愚行を犯していなければ、前回同様、上位に食い込んでいた可能性は十分にある。タレント力、チームとしての組織力という面で見ても、ベスト8以上にふさわしいチームだった。日本が目指す方向とは異なるが、今後も定期的に試合をして、世界との距離を測る座標としたいチームである。

 グループリーグでは、ブラジル相手に真っ向勝負を仕掛けて互角に戦い(スコアは0-0)、ラウンド16ではオランダ相手に後半終了間際までリードと、ベスト8まであと一歩のところまで迫ったメキシコ。彼らのスタイルも、チリ以上に、「日本の目指すべきスタイル」と言われている。今回、アルベルト・ザッケローニ監督の後任として名前の挙がっているハビエル・アギーレは、まさにこの方向性を意識しての人選だろう。ただ、メキシコのスタイルも、結局は、突出した個があっての組織であることは間違いない。チリ同様、メキシコを目指す上でも、まずは個のレベルを上げるために、育成システムから徹底的に見直していく必要がある。

 日本と同組だったギリシャは、“死のグループ”を1位で抜けたコスタリカと対戦。PK戦により大会から去ることにはなったが、グループリーグ同様に、最後まで諦めない戦いぶりで、後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めて延長に持ち込むなど、その“気持ちが前面に出た戦いぶり”は、今大会の日本には欠けていたものだった。

 フランスを追い詰めたナイジェリア。優れた身体能力だけでなく、今大会では強い結束力も感じられるチームだった。残念ながら、このチームのスタイルはほとんど日本の参考にはならないか。ただ、このアフリカの雄ですら、まだ一度もベスト8進出を果たしていないという事実は、忘れてはならない。

 優勝候補のドイツ相手に、延長でも死闘を演じたアルジェリア。今大会のラウンド16では、最も差のあるカードと言われていたが、その前評判を覆す奮闘を見せた。ドイツのGKがマヌエル・ノイアーでなければ、と思わせる戦いができたことは、世界中から賞賛を浴びただけではなく、アルジェリア国民にとっても大いに誇りとなったはずだ。アルジェリアのような去り方は一つの理想形と言えるだろう。

 グループリーグを全勝で突破した優勝候補アルゼンチンに対して、真っ向から戦いを挑み、こちらもあと一歩のところまで追いつめたスイス。グループリーグではいまいち調子が上がらなかったが、ラウンド16では彼らの良さを存分に出すことに成功した。「しっかりとした守備ブロックで相手の攻撃を防ぎ、高速カウンターで得点のチャンスを奪う」戦い方は、強豪国を脅かす最もスタンダードな戦い方である。今大会でラウンド16に進んだスイス、アルジェリア、ギリシャを含め、ヨーロッパの中位国の多くはこの戦い方を選択している。

 アメリカのプロスポーツの中で、「最もアメリカ的でない」と言われるアメリカは、タレント軍団ベルギーを相手に一歩も引かない戦いを見せた。90分間走り続けるスタイルをグループリーグから続けてきたツケが出たのか、最後はガス欠気味ではあったが、それでも粘り強い戦いぶりにより、アメリカ全土にサッカーによる熱狂をもたらしたのは大きな成果だった。この結果を受けて、さらなる強化に乗り出せば、強豪国の仲間入りをする可能性は十分にある。これまで以上にそう感じさせるアメリカの戦いぶりであった。アメリカの勇敢な戦いぶりは、日本代表にも参考になるものだったと思う。引いて守るだけではなく、攻める時には人数をかけて攻めるスタイルは、そのまま真似できるものではないが、コンセプトとしては十分に取り入れることが可能ではないだろうか。

 さて、こうしてラウンド16で敗退した8チームの戦いを振り返っても、スタイルは本当に千差万別である。例えば、前述のように、スイス、アルジェリア、ギリシャのように、「しっかりとした守備ブロックで相手の攻撃を防ぎ、高速カウンターで得点のチャンスを奪う」戦い方は、日本がベスト8を目指す上で最も現実的かつ、すぐに目指せる戦い方のは間違いない。前回の南アフリカ大会やロンドンオリンピックでの結果がそれを証明している。ただ、この戦い方では、限界があるのもまた事実だ。日本サッカーとして、代表チームにどの戦い方を求めるのか。今、それを改めて考える時期が来ているのではないだろうか。

 個人的には、ザッケローニ監督の目指した方向で、さらなる成熟を求めてもらいたい。もちろん、今大会のように、「自分たちのサッカー」をしようとするあまり、状況に応じたプレーができなくなってしまうのは本末転倒であるし、もう一度、戦い方の優先順位をつけることも含めて、見直す必要があるだろう。理想のサッカーを追いつつ、強豪国との対戦ではどうやって勝利をもぎ取るのか。今回、改めて明らかになった課題を、放置してしまっては前進はない。また、当然のことではあるが、新しい監督が来れば新たな戦略、戦術がもたらされる。それと日本サッカーが進むべき方向を、いかにすり合わせていくかも、日本サッカー協会にとっては重要な仕事になる。

 4年後に向けた戦いはすでに始まっている。望むことは、日本代表が今回の経験を生かして、さらに進歩していくこと。そして4年後のワールドカップで、ファン・サポーターが誇れる戦いぶりを見せること。新たな日本代表の挑戦に期待しよう。

文・岩本義弘

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