和やかな雰囲気で行われたキプロス戦前日練習 [写真]=山口剛生
ブラジル・ワールドカップ前の国内最後の日本代表戦が27日に行われるが、試合の位置付けは確認の場となりそうだ。
日本は、21日から25日まで鹿児島県指宿市で合宿を実施。初日と最終日を除く3日間で、午前と午後の2部練習を行ってきた。連日4時間以上のトレーニングをこなした選手達は一様にグッタリした様子で、疲労もかなり溜まっているようだ。
アルベルト・ザッケローニ監督も、「ワールドカップの第一戦から逆算した上で、フィジカルと戦術や技術のトレーニングを指宿でやった」と語り、「明日はフィジカルのキレや輝きは求められない」と認めている。相手のキプロス代表は、24日から埼玉で練習を開始。コンディション面で上回ることは難しそうだ。
ただ、「エネルギーが残っていて、フィジカルのところでスピードに乗れればいいし、もしそれが残っていないならば、判断力のところでスピードを出していければいい」と指揮官が期待を寄せ、「判断力や頭のキレを求めたい」というようにコンディションが整わない中でもやるべきことは少なくない。
例えば、指宿合宿の公開された部分では、4-2-3-1のフォーメーションで守備時のプレスや攻撃でのビルドアップのやり方の確認に時間が割かれていた。今年の代表戦は、3月にニュージーランド代表と対戦した一試合のみとなっているため、チームの基本に立ち返ることは必要だろう。加えて、疲労度の高い状況下でオートマチックに約束事をこなせるかどうかは、チームの熟練度を見極めるにはうってつけとも言える。
そして、もうひとつ確認したいポイントがある。負傷から試合復帰を目指す選手達の状態だ。
内田篤人と吉田麻也は負傷後、試合復帰せずに代表に合流。長谷部誠も、ブンデスリーガ最終節でようやく復帰した状態となっている。3選手ともにしっかりとチーム練習をこなしていることから問題はなさそうだが、内田自身も「お客さんが入ってやるのと普通の紅白戦とか大学生とやるのとは違う」と語る。ワールドカップが短期決戦という場であることを考えれば、試合後の反動など、連戦に耐えられるかどうかは実際に試合をこなさないと分からない部分もあるだろう。
ザッケローニ監督は、「コンディショニングコーチと相談して出場時間に関しては決めようと思う」と深くは語らなかったが、「スタメンかどうかはとくに大きな意味はなく、何分出るかというところが大切になってくる。当然、彼らに関してもワールドカップの初戦に100パーセントのコンディションに合わせるというところに目的を置いている」と、状況把握に重きを置いている口振りだった。
ちなみに、対戦相手のキプロスは、FIFAランク130位。ワールドカップのグループリーグで対戦するギリシャ代表に類似しているとも評されるが、ユーロ2016出場を狙う若いチーム。今年からチームを率いるハラランポス・フリストドゥル監督も、ギリシャとの共通点を聞かれると、「精神と全力を尽くすこと。システムやフォーメーションは、監督の問題なのでそういう話はできない」と語るにとどまり、「若い選手を育てるために、できるだけ使いたい。けがなどで出られない選手もいるが、日本にお手本を見せてもらいたい」と今後を見据えている。
チーム状態と相手の状況を考慮すれば、キプロスをギリシャに見立てるのは、少々無理強いか。ワールドカップへ向けた壮行試合や“仮想ギリシャ”といったポイントに関心が寄りがちになりそうだが、「内容や情報を収集した上で、課題やどこに手を加えたらいいのかということを測る」という指揮官の言葉通り、本番に向けた現状把握と問題点のあぶり出しをしっかりと行うことが最優先となりそうだ。
文=小谷紘友