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なでしこ、“有意義な一週間”とするために…連携や共通理解は解決気配、日常からの意識改革を

アイスランド戦に続き、オランダ戦でも先発した長谷川 [写真]=Getty Images

 2022年1月のAFC女子アジアカップに向けた試金石としては、いささか寂しい一戦だった。

 29日、なでしこジャパンは国際親善試合でオランダ女子代表と対戦してスコアレスドローに終わった。


「このオランダに勝てないようじゃ…というか、勝たなければいけない相手だったなというのは、やりながらもすごく思っていて」

 そう語るのは新生なでしこジャパンのキャプテンに任命されたDF熊谷紗希だ。オランダは2019年のFIFA女子ワールドカップ決勝トーナメント1回戦で日本が敗れた相手だったが、今回の試合では当時の面影はなく、全く別のチームがピッチ上に並んでいた。

 というのもオランダは本来26日にワールドカップ予選のアウェイゲームを戦う予定だったが、開催地のチェコで大雪が降り順延に。同27日の昼に試合をこなし、移動込みの中1日で日本戦を迎えるという超強行スケジュールになってしまった。

 不測の事態にオランダはU-23代表から5選手と予備登録リスト入りしていた1選手を急きょ呼び寄せて追加招集。チェコでの試合に先発した主力の多くをベンチからも外し、スタメンを全員入れ替えたフレッシュな構成で日本戦に挑んできた。

 試合を開催してくれただけでも感謝すべき状況だが、本来期待していたオランダ女子代表ではない。即興感が強く、タレント力でも想定には遠く及ばない物足りなさの残る相手に、ほとんど決定機を作れず「このオランダに勝てないようじゃ…」と本音が漏れるのも無理はない。

 ただ、なでしこジャパンの選手たちは手を抜かず、池田太監督の掲げるチームコンセプトを懸命に表現しようとした。もしオランダが主力を揃えていたら惨敗していてもおかしくない内容だったかもしれないが、「このオランダ」相手に見せたパフォーマンスが日本の現在地と見て差し支えないだろう。

「攻撃のところで(複数人が)関わって(ペナルティエリア内へ)侵入したりというトライはありましたが、コンビネーションや回数、共通のタイミングを作って突破していくところは、もっともっと高めていかなければいけないなと。実際にゴールも生まれませんでしたので、これから取り組んでいかなければいけないところだなと思います」

 池田監督は主に攻撃面に課題を感じているようだった。選手たちの攻守におけるコンセプトの理解は進んでおり、特に守備では前線からの「奪う」を意識した激しいプレッシングが機能し始めているが、「奪ってから」の迫力が物足りない。実際、アイスランド戦とオランダ戦の2試合で1点も決められていないことからも明らかだ。

 それでもチームコンセプトの理解が進んでいる分、選手同士の連係や共通意識の情勢は試合を重ねていけば解決に向いていきそうな気配がある。

 例えばFW岩渕真奈は「チームの中にも個々の判断があるし、個人の特徴があって、今日であれば長野風花と宮澤ひなたと一緒にやるのはものすごく久しぶりで、もちろん彼女たちの特徴を理解しているつもりではありますけど、もう少し時間が必要というか。もっともっと積み重ねなければいけないですし、もっともっと一緒にやることで、もっといい場面が生まれてくるのかなと思います」と話していた。

 招集メンバー自体が東京五輪から半分近く入れ替わり、若い選手も増えている中、限られた準備時間でピッチ上の連係を構築するのは容易ではなかった。まして岩渕は負傷の影響で合宿の前半を別メニューでの調整に費やしており、全体練習に参加できたのは3日間しかない。

 国際的に女子サッカーの試合数が増えてきている影響もあって、男子のA代表と同じくなでしこジャパンも集まってチームで練習できる機会は限られている。岩渕や熊谷のような海外組はなおさら、国内合宿に参加できないなど連係構築において難しい面がある。

 そこで1つの解決策となりうるのは、なでしこジャパンで「ユニット」ごとの起用を視野に入れることだ。池田監督も「個人の良さ、あとはペアとかコンビですよね。組み合わせによってその選手や、チーム力がどれぐらいアップできるかを見極めながら、個人を大きくするところと、その個人の個性の組み合わせをさらに(チームに)生かせるようなところも考えているところです」と語っている。

 なでしこジャパンで長年一緒に組んできた、世代別代表時代から関係性がある、所属クラブでチームメイト、一緒にプレーすると自然に噛み合う…。これらの様々な要因を考慮しながら複数人で構成するユニットを掛け合わせて11人の潜在能力を引き出そうという考え方を積極的に取り入れていきたい。

 幸いにも池田監督と世代別代表時代から共闘してきた選手たちは多く、彼女たちは指揮官の考え方をよく理解しているし、選手間の相互理解も深い。例えばオランダ戦では、2018年のU-20女子ワールドカップ優勝に大きく貢献し、決勝でもコンビを組んだMF長野風花とMF林穂之香というダブルボランチが先発起用された。

 長野は「試合に入る前は『お互いがしっかりいい距離感でボールに関わっていこう』という会話をしました。実際にいざピッチに立ってみて、もちろんU-20代表などで一緒にダブルボランチをしていたので、やりやすさというのはあったし、しっかりコミュニケーションも取れていた中でのプレーだったので、もっともっと改善していく部分はありますけど、お互いがやりたいことがわかっていたので、そこは良かったのかなと思います」と、林とのコンビ再結成となった一戦を振り返った。

 2人の関係性は数年ぶりと思えないくらいスムーズで「どちらかがしっかりプレッシャーに行って、(もう片方が)そのこぼれ球を拾ったりとかはうまくできていたので、そこは良かったなと思います」と長野が語った通り、局面に応じた状況判断も的確に機能していた。

 こうした補完関係や相互関係の良好なユニットを見つけていき、組み合わせることで新たなシナジーを生み出していく。そして複数ユニットの掛け合わせでチーム力を引き上げつつ、個々のクオリティの向上や結果を求めて競争を促していくのである。

 新生なでしこジャパンの初陣となったオランダ遠征は2試合で1分1敗と勝利こそつかめなかったものの、海外組も含めた23人で今後のチームが進むべき方向性を見定めることができた有意義な1週間だった。

 もし今回の2試合がないまま来年のアジアカップに臨んでいたら…と考えると、それはそれでゾッとする。12月の合宿では国内組の新たな選手にもチャンスが与えられ、アイスランド戦とオランダ戦で出た成果と課題をフィードバックしながら強化が進められることになるだろう。

「一人ひとりの個を伸ばして、その集合体が強いなでしこジャパンだと思っていますし、選手一人ひとりが自分が向上できることを常に考えてプレーし、これからどうやって行動していくかというところにもかかってくると思います」

 池田監督は選手たちにさらなる意識改革を求める。2011年にワールドカップ優勝を経験している岩渕も「このチームで世界一を目指しています、と言うのはまだ早い」と厳しい現実を突きつけた。

 なでしこジャパンで世界と戦っていくことを目指す選手たちが、日常をどう変えられるか。それも連係向上とともに、今回の海外遠征で選手個々に突きつけられた重要テーマだ。世界で勝っていくには、超えなければならない壁がたくさんある。

取材・文=舩木渉

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