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【WEリーグインタビュー】女子リーグの盟主、ベレーザが挑戦するプロ化1年目

©TOKYO VERDY

 日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』(Women Empowerment League)が2021年9月に開幕を迎える。

 日本女子サッカーを引っ張ってきたクラブの一つが日テレ・東京ヴェルディベレーザだ。1989年に「日本女子サッカーリーグ」が立ち上がって以降、リーグ優勝は2020年までに17回を数えた。

 WEリーグへの参加も決まったベレーザはプロリーグ1年目にどういった姿勢で臨むのか。昨シーズンまでGMを務め、WEリーグ初年度はS級ライセンスの兼ね合いもあり、監督として臨む竹本一彦氏に、現状や展望を聞いた。

インタビュー=小松春生

竹本一彦監督 ©TOKYO VERDY

―――改めてWEリーグ参入の経緯からお聞かせください。

竹本一彦(以下、竹本) 10年前になでしこジャパンがワールドカップで優勝し、その後、改めて日本女子サッカーを再び世界一にすることが私たちの目標でした。WEリーグを通して日本女子サッカーが活性化すれば、代表チームも強くなっていく。つまりWEリーグに参入すれば、私たちの目標達成に近づけると思いました。ベレーザは日本でトップレベルにあるという自負があります。私たちはWEリーグを大きな武器にして、将来的には世界に出ていく気構えでいます。参入にあたっては、男子と女子のプロチームを持つことが経営面で問題ないか、WEリーグにかかる予算はどれくらいか、実際に集客できるのかという基本的なところから検討して、参入を決めるに至りました。

―――プロ化に伴い、各クラブはプロA契約選手5名以上およびプロB・C契約選手10名以上と契約を結ばなければなりませんが、与えられた準備期間が短かったように感じます。

竹本 昨シーズンのなでしこリーグが終わった頃から様々な課題が明確になっていきました。選手の移籍はどうなるか、補強の予算は確保できているか、そもそも試合運営はできるか、目標とする観客動員5000人に見合うホームスタジアムを確保できるか。現場では「できるの?」という不安と、「やろうよ」という前向きな気持ちが交差していました。チーム編成で言えば、12月から在籍選手と契約交渉をしたり、他チームの選手にアタックしたりする動きが活発になっていきました。どのクラブも模索しながら動いていたと思います。

―――ベレーザは“狙われる”立場です。

竹本 ほとんどが代表クラスの選手なので当然です。特に新設クラブは、ある程度資金を確保しているので、どんどんアタックしてきます。その動きに対応するには、“ベレーザ愛”を盾にするだけではダメで、年俸や環境の整備をしなければならないと感じました。クラブ間でプロ契約を結べる選手を取り合うような状況になったのは確かです。それこそ、プロの世界では当然の環境であり、改めてプロチームとしてのベレーザの価値を高めていきたいと気持ちを新たにしています。取り組むサッカー、チームの持つ雰囲気、環境面など、すべての面で女王だと自負できるチームを目指していきたいと思います。

新背番号10の小林里歌子 ©TOKYO VERDY

―――登録選手は19名、新戦力はアカデミーからの昇格組が中心です。プロクラブになっても育成年代から強化していくクラブ方針を貫いているように感じます。

竹本 そうですね。ウチの強みは育成なので、そこは今後も生かしながら進めていきたいと思っています。本当は昨季の戦力全員に残ってもらいたかったんです。海外挑戦の夢を持つ選手、出場機会が少なくなった選手、新しい場所でやってみたいと考える選手もいました。その中で私たちは新しいベレーザにならなければいけないと感じました。19人しかいないということは、選手一人ひとりが試合に関わる頻度が増えるし、期待度も高まる。メニーナからトップチームへ引き上げて育てるという意味もありますが、無用な選手を置くつもりはありません。ベレーザとして求めるクオリティでプレーできる選手が揃ったと思います。

―――これまで学校に通ったり、仕事をしながらサッカーをやってきた選手が、急に「明日からプロです」と言われても戸惑いもあると思います。選手への教育も必要になってくるなかで、クラブとしてどのようなアプローチを考えていますか?

竹本 この部分はプロ化元年に必要だと思っています。まず、契約交渉時や個別に話した際にプロとしての心構えを伝えました。ただ年齢が違えば、理解力、感じ方も違う。だからプロとしての自覚を持つように、言い続けなければいけないと思っています。試合を見に来てくれた方やスポンサーの方々からお金をいただいていること、期待を背負っていること、人から見られる存在だということを自覚してもらわなければなりません。クラブのビジネスサイドの各部署にも研修を実施してもらい、プロのサッカーチームがどのように成り立っているのか、自分の給料がどうやって生まれているかを知る機会を作っています。

昨季は監督、今季はヘッドコートを務める永田雅人氏 ©TOKYO VERDY

―――自覚してもらうために何が必要になってきますか?

竹本 挨拶、笑顔、ファンを大事にする言動です。それらを持って、ピッチの上で自分の好きなサッカーをしながら最大限のパフォーマンスを見せる。サッカーが楽しいということを感じながら成長していく。選手たちにはそういういいサイクルを作っていこうと伝えています。ウチには男子のプロ選手もいるし、指導者もいるし、OB、OGがいる。そういった人たちや他競技のプロ選手のアドバイスを聞けるような機会を作ろうと考えています。プロになるということは個人事業主になるということなので、お金の管理や仲介人の選び方など学ぶことはたくさんあります。ただサッカーをやっているだけの人間にはしたくないので、クラブとしてもできる限りのサポートをしていくつもりです。

―――WEリーグの岡島喜久子チェアは「女の子たちにスタジアムへ来てもらいたい」と話していますが、こういった新規層を開拓するにはどういった取り組みが必要になってくるでしょうか?

竹本 とても難しい問題です。少女たちに試合を見てもらうには、まず彼女たちの親がスタジアムに足を運べるような日程、環境作りをしていくべきだと思っています。また、10〜20代の女性に興味を持ってもらうために、リーグ全体で「あの人に会いたい」、「あの人のプレーが見たい」という選手を作り上げていくことが必要です。Jリーグが開幕したとき、三浦知良や武田修宏、ラモス瑠偉を目当てに、まさにアイドルを見るような感覚でスタジアムに来ていた人たちがいた。そういう話題になるような選手を輩出することも一つの手段だと思っています。新しいファン層を開拓するのはとても難しいことです。だからこそ突飛な発想と行動が必要なんじゃないかなと。自由な発想ができる人を巻き込みながら取り組んでいきたいですね。

出産を経て、復帰のシーズンとなる岩清水梓 ©TOKYO VERDY

―――今シーズン、ベレーザはどのように戦っていきますか?

竹本 おそらくベレーザが独走することはないでしょうし、そうなってはつまらないと思っています。4、5チームが最後まで優勝争いをする展開になってほしいですね。選手層の厚い三菱重工浦和レッズレディースやINAC神戸レオネッサは上位に絡んでくると思いますが、サンフレッチェ広島レジーナや大宮アルディージャVENTUSも優れた選手を集めています。新興クラブがどのようなサッカーをしてくるのかもWEリーグ初年度の楽しみだと思います。ベレーザとしては、見ている人がおもしろいと思ってくれるサッカーをしたい。例えば、浦和との皇后杯決勝のようにお互いが必死になっている姿やドラマチックな得点の奪い合いは、見ている人が楽しめると思います。そういう試合をWEリーグで見せたい。我々は「得点を取るんだ」という強い意志を持ったサッカーを目指していきます。

―――開幕はスタートです。WEリーグが10年、20年…と継続していくために必要なことは何だと考えますか?

竹本 サッカーはグローバルな試みができるスポーツです。長谷川唯がミランに移籍したように、世界が近い。ベレーザもアジア、それから世界に目を向けていきたいと考えています。FIFA、AFC、JFAの動きを活性化させて、数年後には男子のように女子もクラブワールドカップができて、そこにベレーザが出場するような、なでしこジャパンの動きとは別に、クラブチームを世界に広めていくことが必要だと思っています。FIFAには移籍のルールを明確にしてもらって、男子と同様に、選手を育てたクラブにきちんとお金が入るようなシステムを作ってもらいたい。その上で、例えばバルセロナやレアル・マドリードと提携して、ウチで育った選手が移籍したり、スペインの選手がウチに来たりする。そういう明るい未来が、女子サッカー界に待っているはずです。

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