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【WEリーグインタビュー】ちふれASエルフェン埼玉~女子チームとして立ち上げた歴史とともに~

©ちふれASエルフェン埼玉

 日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』(Women Empowerment League)が2021年9月に開幕を迎える。

 初年度参加11クラブのうち、埼玉県からは3クラブが参加。1985年に狭山市の少女サッカーチームとしてスタートした、ちふれASエルフェン埼玉は昨年なでしこリーグ2部に在籍したが、WEリーグ参戦を果たすことになった。

 WEリーグでどのような立ち位置を作り上げていくのか。アルビレックス新潟の社長やなでしこリーグの理事などを歴任し、2020年からエルフェンにやってきた田村貢代表取締役社長に話を聞いた。

インタビュー=小松春生

©ちふれASエルフェン埼玉

―――改めてWEリーグ参入決断までの経緯からお聞かせください。

田村貢(以下、田村) 大きな理由として、エルフェンは1985年に狭山市の地域の少女のサッカークラブから始まった歴史あるクラブであるということ。そして、2018年からちふれホールディングスのグループ会社となり、女性社員が8割ほど在籍している企業として、女性を応援するということがあります。選手たちをクラブ、企業としてサポートしていきたい、その上でプロ化を目指すと、WEリーグの話が出た時からの希望としてありました。

―――プロ化にはいろいろなリスクも考えられたと思います。

田村 そうですね。私たちはJリーグの男子チームを持つクラブではないということや、1部経験はありますが、なでしこリーグでは2部を戦うことが多かったチームであったこともあると思います。でも、2部からでも頑張っていく、クラブとして覚悟を持ってWEリーグ、女子サッカーの発展に寄与していきたいと考えています。

―――15名以上の選手とプロ契約が必要になるなど、財政面での難しさもあります。

田村 予算を取りながら選手の強化を図っていかないといけない部分がある一方、以前からアカデミーを運営しており、今年もアカデミー出身の選手がトップチームに昇格しました。育成面をしっかり定着させ、チーム作りをしていきたいですね。日テレ・東京ヴェルディベレーザさんや三菱重工浦和レッズレディースさんなど、先陣をきって育成に力を入れているクラブもあります。私たちは細々とやっていきながら、肉をつけていくような育成の体制作りをしていきたいです。そのため、徳島ヴォルティスで育成を担当され、S級ライセンスをお持ちの安達宏道さんをコーチ兼アカデミーダイレクターとして迎え入れました。男子と同じことをやるということではありませんが、Jリーグのノウハウも取り入れながら、取り組んでいきます。

―――育成に重点を置いて、今後もチームを作っていくと?

田村 私はアルビレックス新潟の社長を務めていたこともありますが、男子チームは現在10番の本間至恩選手、GKの藤田和輝選手など、育成から昇格した選手が在籍しています。そこまでに20年かかっていると考えれば、簡単なことではありません。育成のビジョンをしっかりと持った上で、チーム作りをしないといけないと改めて思っています。

 もちろんそれだけでは上を目指すことはできませんし、グローバルなサッカーを考える意味でも、外国籍選手のスカウトもしっかりやっていきます。私のJリーグの経験も踏まえ、外国籍選手は外すことはできないと思っています。

荒川恵理子 ©ちふれASエルフェン埼玉

―――選手一人ひとりもプロ選手となります。意識してもらいたいことなどはありますか?

田村 アマチュアからすぐプロになる選手が多いので、ピンと来ていない選手もいると思います。選手としてプレーする責任もそうですし、人間としてプレー以外でのオン・ザ・ピッチ、オフ・ザ・ピッチの責任が重くなります。急に変えることは難しいですし、少しずつ学んでいくことになると思います。サポートをクラブがしっかりとやっていかなければいけません。

―――やはり、意識を急に変えてもらうことは難しいですか?

田村 走り出してしまえば、だんだん変わっていくものだと思います。一番大事なのは自分がサッカー選手として成長すること。そして、子どもたちや地域の方たちに夢や感動を与えることが仕事となります。誰かにやらされるのではなく、自ら感じながらサッカー選手として成長してほしいですね。

―――下部組織を整える中で、それを子どもたちにも教えていきたいと。

田村 そこが大事です。大人になったから急に変われるものでもありません。リスペクト、フェアプレーをしっかりと考えられる選手にならないといけないと思っています。それは教えられてやるものではなくて、自然と身についているものと私は思っています。

―――埼玉県にはWEリーグが3クラブ在籍します。浦和、大宮アルディージャVENTUSというJリーグクラブを持つチームの参加が決まった中、どのように地域へとアプローチしてきますか?

田村 ホームタウンである狭山市、飯能市、日高市を中心に、これまでもいろいろな地域貢献をしてきましたが、働きながら参加する選手も多かったので、活動に時間的な制約もありました。これからはプロとして活動しますから、一緒にさらなる地域貢献活動を取り組んでいきたいと思っています。また、スタジアムが熊谷市になります。そこは浦和さん、大宮さんと一緒になり、それぞれホームタウンはありますが、男子とは違い、一緒になって盛り上げに取り組むスタイルが望ましいと思っています。Jリーグと違い、WEリーグはまだ全国で11クラブだけなので、まずは女子のサッカーを普及させる、定着させることが大事です。リーグだけではなく、各クラブも一緒になる必要があります。

©ちふれASエルフェン埼玉

―――集客面で言えば、田村さんはエルフェンに来る前、なでしこリーグにいらっしゃいました。そこで感じた難しさや、逆にプロリーグになることで可能性が出る部分もあると思います。

田村 なでしこリーグは、プロモーション予算も少なく、いつ、どこで試合があるのかがわからないような状況でした。Jリーグほどのお金はかけられませんが、クラブもリーグも力を入れて、いろいろな手を使って伝えていかないといけません。もう一つは、あのベレーザさんでさえ、ホームスタジアムがなく、会場を転々としていました。例えば2週間に1回、同じスタジアムで試合が行われていれば、お客さんは定着していきます。

―――限られた予算で、プロモーションも選択と集中の必要が出てきます。ご自身の経験踏まえ、いかがでしょう。

田村 アルビレックス新潟の時はターニングポイントがたくさんあったので、同じことが起こるとは限りませんが、2001年にデンカビッグスワンスタジアムが完成したことが一番大きかったです。4万人規模のスタジアムを見たい、1度入ってみたいという市民、県民の気持ちがあり、そこからJ1昇格につながり、市民のハートに火がつきました。熊谷はもともとあるスタジアムですし、どうやってそこに足を運ばせるのかがポイントです。

 これまで試合を見に来ていただいた方に足を運んでもらいつつ、新しい層、若い女性の層を増やす必要があります。これは、Jリーグが今までやっていることとも違うと思います。私たちが改めて考えないといけない。例えば、若い女性対して発信力のある人を巻き込みながら、応援をしていただく。そこから、「ちょっと行ってみようか」と思っていただけるようにする。ただ、私たちだけでは限界があるので、リーグとしても、サッカーの魅力を伝えていただける人と協力して取り組むことが大事かなと思っています。

―――チーム作りはいかがでしょう。まだまだ数が少ない、女性のS級ライセンス所持者である半田悦子さんを監督に迎え入れました。トップチーム、アカデミーともにS級ライセンス所持者であるところに狙いも感じました。

田村 まず、S級ライセンスを取得している女性指導者が少ないことが、これからの課題であることは間違いありません。そのためには、今S級を取得している指導者が活躍することが大切です。目指す人が増えていかないと意味がない。半田監督はこれまで学生の指導をされ、トップチームの指導経験はありませんが、Lリーグや日本代表としての経験を持った方がWEリーグの新しいスタートで指揮をすることは意義のあることです。責任や重圧もあると思いますが、経験を積んでもらい、今まで以上に活躍できる素晴らしい指導者になってもらいたい私たちの思いもあります。

©ちふれASエルフェン埼玉

―――クラブスタッフへのアプローチはいかがでしょう。半数以上を女性にする義務がありますが、ちふれさんは女性が多い企業ですので、土壌はあると思います。

田村 私たちもチャレンジしたい思いがあります。女性活躍社会を牽引するリーグ、そこに所属するクラブですし、より一層、舵を切ったトライをしないといけません。半田監督や山郷のぞみGKコーチなどのコーチングスタッフ、フロントスタッフにも元選手が数名いるなど、やれることはやっていきます。その可能性を求め、半田監督にお声がけをしたことにもつながっています。クラブとしてチャレンジする年になりますし、成長の年になります。

―――チームとしてどのような形で9月の開幕を迎えたいと考えていますか?

田村 Jリーグと同じことをしてはいけないと思っています。もちろん、共有しながら共存、発展できることはやっていくべきですし、コストカットや相乗効果を生む部分もあります。一方で、女性ならではのものを作っていかなくてはいけません。あとは、地道ですがクラブとして地域密着にどう取り組んでいくか。昨年で現役引退した薊理絵さんにクラブアンバサダーに就任してもらいました。彼女は14年間クラブ一筋でプレーし、地域に認知、応援していただいた経験があります。こういった人材を中心に地域密着活動をどんどんしていく。勝った、負けたではなく、クラブがあるから応援をする、という方たちを増やしていかないといけません。そのためには地域密着活動が大事です。

 チーム強化で言えば、外国籍選手。アルビレックス新潟の時もそうでしたが、私はまだあまり有名ではないものの、スーパーな選手を探すことがポリシーで。ラファエル・シルバやレオ・シルバ、エジミウソン、マルシオ・リシャルデス…、そういった選手の発掘を女子でもやりたいですね。それはお互いの成長にもつながりますし、リーグの活性化にもつながると思います。

―――5年、10年と先を見据えたビジョンとしてのチーム作り、方向性はいかがでしょうか。

田村 これまでは、実業団や働きながらサッカーをすることが主流でした。これからはプロの選手を育てていく。プロ選手はサッカーに集中できますし、練習以外の空いた時間でいろいろな活動もできます。それを経験して、成長していく。それが定着していけば、自ずとプロを目指す子どもたちが多く出てきて、ボトルネックだった13歳から15歳の競技人口も増えていくと思います。女子サッカーをする子どもたちが増えていくことが、プロ化の使命であり、意義であると思っています。バスケットボールやバレーボールのように、男女比差が少ないスポーツになっていくことで、もっと可能性を秘めた選手が出てくると思います。そして、もう一度なでしこジャパンが世界のトップに立つことがWEリーグの目標の一つですので、貢献できるように私たちもクラブも努力したいと思っています。

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