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高倉なでしこ、国内初陣はW杯・五輪への足掛かりになる重要な試合に

2017.04.05

左から隅田凛、田中美南、横山久美 [写真]=Getty Images

 なでしこジャパン(日本女子代表)が9日に開催される『キリンチャレンジカップ2017~熊本地震復興支援マッチ がんばるばい熊本~』(熊本県民総合運動公園陸上競技場)で、コスタリカ女子代表と対戦する。

 昨年4月、なでしこジャパン監督に就任した高倉麻子監督にとって、この試合は国内の初陣となるため、大きな注目を集めそうだ。高倉監督は、なでしこジャパンの監督に就任する前から、国内の様々な地域に直接足を運んで選手を選考しながら、国内合宿や海外遠征を重ねてチームを強化してきた。

 その特徴は、競技の垣根を越えた様々なアプローチで競技力を高めてきたことだ。例えば、今年1月のトレーニングキャンプでは、元陸上選手の朝原宣治氏を招いてスプリントトレーニングを受け、選手たちは効率的な足の動かし方の基礎を学んだ。このようなサッカーから少し離れた特別な練習は、これまで複数の選手が個人的に意識してきたことだが、高倉監督によると代表チームとして採用したのは今回が初の試みだったという。

 そんな工夫を凝らした国内合宿と海外遠征で強化をしてきたなでしこジャパンが、ついに国内で初めての試合を迎えるのが、今回のキリンチャレンジカップ2017だ。

 選手の顔ぶれを見ると、3月にポルトガルで行われたFPFアルガルベカップに出場した選手を軸にしながらも、3人の初招集選手を含むフレッシュなメンバー構成となった。しかし初招集選手は、いずれも高倉監督が育成年代の指導をしていた頃から、見守ってきた選手ばかりだ。FW上野真実(愛媛FCレディース)は昨年のFIFA U-20女子W杯で5得点を決めて得点王に輝いており、MF大矢歩(愛媛L)は、U-23日本女子代表から昇格する形となった。

「今回招集されてビックリした」と話すMF隅田凜(日テレ・ベレーザ)も初招集組のひとりで、プレナスなでしこリーグ連覇中の日テレでレギュラーとして活躍している。「なでしこジャパンの試合はいつも見ていたから、もし出場機会があったら、チームのバランスを見ながらアグレッシブにプレーし、チャンスがあればゴールも狙って存在感を示したい」と、静かに闘志を燃やしている。

 こういった新戦力に加え、なでしこリーグで最優秀選手賞を2年連続で受賞したMF阪口夢穂(日テレ)や、得点王となったFW田中美南(日テレ)、AC長野パルセイロ・レディースで好調を維持するFW横山久美が順当に選出され、フランスやアメリカでプレーする海外組も、今回の一戦のために呼び寄せた。現在のなでしこジャパンのフルメンバーが揃ったと言っていいだろう。

 なでしこジャパンの新エースとして期待がかかる背番号9の横山は「代表は短い期間で(連係を)合わせていかないといけない。毎日の練習からしっかり取り組んで試合に臨みたい」と、チームの底上げに意欲を見せる。

 対戦相手のコスタリカはFIFA世界ランキング30位で、同6位のなでしこジャパンとは初の対戦となる。

 昨年は、国際親善試合を含めて11試合を戦い、2勝1分8敗と大きく負け越しているが、リオデジャネイロ・オリンピックの北中米カリブ海地区予選ではメキシコを2-1で破る健闘を見せた。なでしこジャパンと対戦後の6月には、カナダ女子代表との2回の親善試合を組むなど、代表の強化を加速させているチームだ。決して侮ることはできない。

 そして今回のキリンチャレンジカップ2017は、熊本地震復興支援マッチという側面がある。

「失敗を恐れずにどんどんチャレンジをして、アシストやゴールという結果を残す。そういったプレーで勇気を与えられることができたら」と話すのは、初招集のアルガルベ杯で代表初得点を決めるなど成長著しいMF長谷川唯(日テレ)だ。「先の熊本地震では、日常生活に影響があるほどの被害にあった人もいると思う。そういった人たちも楽しめるようなプレーを目指したい」と、熊本でのプレーを楽しみにしている。

 なでしこジャパンは来年、フランス女子W杯(2019年開催)のアジア予選を控えている。その先には、もちろん2020年の東京五輪が待つ。未来に向け、新しく強いなでしこジャパンの船出となる国内初陣のキリンチャレンジカップ2017は、その大きな足がかりとなる重要な一戦であることは間違いない。

文=馬見新拓郎

By 馬見新拓郎

10年以上にわたり女子サッカーを追いかける気鋭のライター

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