[写真]=清原茂樹
長谷部茂利監督体制2年目の2026年、川崎フロンターレは明治安田J1百年構想リーグ優勝、AFCチャンピオンズリーグエリート出場権獲得を目指している。クラブ創設30周年という節目で、大きな飛躍が期待されていた。しかしながら、開幕2連勝の後は勝ったり負けたりの落ち着かない状況が続いている。特に気がかりなのは、3月の1勝3敗という成績だ。第8節の横浜F・マリノス戦は0−5と大敗し、直近28日のFC町田ゼルビア戦はPK負け。まずは連敗街道から抜け出すことが必須テーマと位置付けられた。
そこで迎えたのが、今節の浦和レッズ戦。1カ月ぶりのホームゲームということで、選手たちも高い気迫を持ってこの一戦に向かったはずだった。が、開始早々の3分にいきなりリスタートから失点。6分後には三浦颯太のクロスからオウンゴールで1−1に追いついたものの、試合の入りは芳しいとは言えなかった。
前半は内容的に上回った状態で1−1で終了。後半に勝負をかけたが、逆に浦和の金子拓郎に2点目を奪われてしまった。そこで指揮官が講じたのは、ラザル・ロマニッチと宮城天の投入だ。特にロマニッチの存在価値は大きかった。「ロマが入るとポストプレーが上手で、より前向きに人を使えるようになる。それが僕らにいい方向に転んだ」とキャプテンの脇坂泰斗も強調。後半33分にロマニッチのゴールで2−2に追いつくことに成功した。
その後、ピッチへ送り出されたのが、河原創だった。後半44分という難しい状況下で山本悠樹と代わった背番号19は「オープンな展開になると思うから、要所要所で摘んでくれと言われました」と主に守備タスクを課せられたことを明かす。守備強度の高さや積極性は間違いなく河原の売りだが、強みはそれだけではない。それが如実に表れたのが、後半アディショナルタイムの決勝弾だった。浦和のスローインから安部裕葵が流したボールを三浦颯太がカットし、宮城、河原、脇坂、山原怜音とつながり、ロマニッチに差し込まれた瞬間、河原は鋭くスペースに侵入。思い切り左足を振り抜き、西川周作が守るゴール右隅にシュートを突き刺し、チームを逆転勝利へと導いたのである。
「こぼれてきて、パスも頭の中にありましたけど、時間もそうですし、『打っちゃえ』という感じでシュートしました。狙ったとかじゃなくて、相手に当たらないように、フカさないようにってことだけしか考えていなかった。本当にたまたまっちゃ、たまたまですけど」と本人は謙遜気味に言う。それでも、パンチ力あるシュートが決まったのは確か。わずか5分程度の出場で大仕事をやってのけたのは、紛れもない事実である。
「個人頼みにならないというか、個の能力を生かしながら掛け算でやっていくのがうちの良さ。ロマのゴールもそうですし、創もいいシュートを持っているので、生かしてくれたのかなというのがあります」と脇坂は組織として連動して奪ったゴールだと強調。その中に河原のストロングもうまく融合し、結果となって表れた。川崎Fにとって大いに意味のある一勝だったと言っていいだろう。
実際、今季の河原はいかにして自分の力をチームに還元すべきかを模索し続けている様子。2024年8月にサガン鳥栖から川崎Fに赴いてから3シーズン目を迎えるが、百年構想リーグはコンスタントにスタメン出場できていないからだ。特に3月以降は出場時間が減少。橘田健人が復調し、山本とボランチコンビを組むことが多くなり、ベンチから戦況を見守る時間が長くなっていた。「自分が抱えている課題? それは具体的には言えないですけど、自分の中では今年に入ってからすごくいろいろ考えていますし、もっと良くしていきたいので、そのためにやっていこうと思っています」。
本人は言葉を濁したが、大島僚太、山本、大関友翔ら技術の高いボランチが揃う中、彼自身のダイナミックさや運動量、ハードワークといった異なるストロングをどう生かすべきかを今一度、再考しているのだろう。
「このゴールで全てを変えられればいいのかもしれないですけど、それだけじゃ自分自身の根本的な課題は改善できないと思います。このゴールは一旦忘れてじゃないですけど、自分がより突き詰めていかないといけない部分があるので、それをやっていきたいです」
河原は今季初ゴールに浮かれることなく、冷静に先を見据えていた。そういうストイックな姿勢は高い領域を見据えていることの表れ。その真摯な姿勢があれば、必ず状況を好転させられるはず。川崎は百年構想リーグ後半戦で巻き返しを図っていくことになるが、背番号19がキーマンになる可能性は大いにありそうだ。
さしあたって重要なのは次戦の鹿島アントラーズ戦。首位を走る相手から勝ち点3をもぎ取れれば、状況はガラリと変わる。その大一番で河原の闘争心溢れるプレーをぜひとも見せてほしいものである。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子


