7月27日に国立競技場で開催される『明治安田Jリーグワールドチャレンジ2024 powered by docomo』ヴィッセル神戸vsトッテナムの開催がいよいよ目前となった。
33年ぶりの来日となるトッテナムは近年、チャンピオンズリーグ決勝進出や、リーグ戦上位争いなど繰り広げ、“BIG6”と呼ばれるイングランドのビッグクラブの一角だ。一方の神戸もタレントをそろえる昨季のJ1王者であり、ぜひともスタジアムで観戦をしたい両クラブの激突となるが、今回では試合での注目のマッチアップのポイントを紹介したい。
■ソン・フンミンvs神戸守備陣
2021-22シーズン、アジア人として史上初のプレミアリーグ得点王に輝き、現在はチームキャプテンも務めるソン。トッテナム加入翌年から昨シーズンまで8年連続で二桁得点を記録し、プレミアリーグでは303試合120得点という数字を残している大エースだ。
神戸の守備陣としてはまず、この韓国代表FWに仕事をさせないことが大事になる。ソンの得点パターンは豊富で、アンジェ・ポステコグルー監督体制のチームではミドルシュートを打つ場面こそ減っているものの、左右両足ともにそん色なく強烈なシュートを放ってくるので、神戸としてはコースを確実に限定しつつ、ペナルティエリア内で前を向かせないようにタイトに守りたい。日本代表GK前川黛也のコーチングも大切になる。
ソンは周囲を生かすチャンスメイクもハイクオリティなため、トッテナムの両ワイド、インサイドハーフの選手の飛び出しも神戸としては要警戒となる。特にカウンターの場面ではソンをはじめ、スピードを持つ選手がそろっているので、神戸DFマテウス・トゥーレルとのスピード勝負は注目ポイントの一つだ。
■トッテナム守備陣vs日本を代表する攻撃手
日本代表、そして海外でプレーした選手として、十分な経験値を持つ神戸のアタッカー2人。神戸としてはここで優位性を作っていきたいが、トッテナム側の守備陣もタレントがそろう。主力CBのミッキー・ファン・デ・フェンとクリスティアン・ロメロ、そして控えCBの一番手であるラドゥ・ドラグシンはユーロ2024、コパ・アメリカ2024明けの休暇で来日は実現しなかったが、加入1年目からチームの顔と言える活躍を見せたイタリア代表GKギジェルモ・ヴィカーリオは来日。ピッチに立てば注目となる。
ヴィカーリオは守備範囲が広く、足元もあり、攻守において大きな存在。背番号も今夏に「13」から「1」と変更し、気持ち新たに新シーズンに臨む。神戸としてはカウンターを丁寧に、かつ守備時に前線からプレッシングをかける場合も、連動してやり切る覚悟が必要となってくる。ポステコグルー監督は出場メンバーが変わろうが、守備ラインの設定はかなり高くなると予想される。大迫がカウンターの起点として競り勝ちつつ、武藤をはじめとした攻撃の選手が前線に飛び出していくハードワークを続けられれば、得点のチャンスも出てくるだろう。
■サイドでの攻防
トッテナムのストロングポイントとして両サイドの崩しがある。ティモ・ヴェルナーやデヤン・クルゼフスキ、ブレナン・ジョンソン、マノル・ソロモンといったスピード、強度を持った選手たちに右サイドバックのペドロ・ポロ、左サイドバックのデスティニー・ウドジェが内側、外側のレーンを取りながら厚みを出して崩す形は大きな脅威だ。どの選手もまずは積極的に自分で仕掛けるキャラクターであることもポイントになる。
神戸のサイドバック勢には大変な仕事が待っている。初瀬亮、本多勇喜、広瀬陸斗、飯野七聖といった選手たちには1対1での粘り強い対応が求められる。
特に初瀬や広瀬が入った場合、相手陣に押し込むことでトッテナムのサイドアタッカーを相手陣に押し下げるだけでなく、両選手の攻撃面でのストロングを出すことにつながるので、神戸としてはボールを保持した際は相手陣でプレーする時間を長くしたい。
また、トッテナムは昨シーズン、セットプレーの守備に弱点があり、失点を重ねたため、特に初瀬のキックには神戸側としては大きな期待がかかる。
■強度の高い中盤でのせめぎ合い
トッテナムの中盤は強度が高い選手が多い。イヴ・ビスマ、パペ・サールという昨シーズンの主力はプレシーズンでもコンディションの良さをうかがわせた。サールは機動力があり、前線にも顔を出す。一方のビスマはバックラインからのボールを引き取りつつ、前進するための舵取りをしながら、プレシーズンのQPR戦では昨シーズンあまり見られなかったペナルティエリアに侵入してからの得点も決めている。そこにゲームメイクを担うジェームズ・マディソンが絡み、攻撃を構築する。
強度の高い相手中盤だが、神戸も山口蛍や井手口陽介といった日本有数の強度を出せるボランチ勢がいる。ビスマやサールは自陣前でボールを引き取りながら、多少無理にでもドリブルで前進したり、縦横のパスを出してつなごうとするので、そこで頑張ってひっかければ、ショートカウンターのチャンスとなる。マディソンは頻繁に3列目などに降りてボールを引き取るので、そこのケアも必要だ。
山口は直近20日の名古屋グランパス戦を欠場しているために不透明だが、両中盤の強度を高めた主導権の奪い合いも見ものの一つになりそうだ。
■若手の躍動にも注目
トッテナムは両ウイングやトップ下を務める16歳のマイキー・ムーア、今夏に加入した昨シーズンのチャンピオンシップ(イングランド2部)最優秀若手選手のアーチー・グレイ、スウェーデン代表にも選出されているルーカス・ベリヴァルの両18歳など、若手にも期待大の選手が多い。
特にプレシーズンは若手選手にとっては自己主張とチャンスを掴む重要な期間。すでにイギリスで2試合を終えているトッテナムだが、グレイは本職ではないセンターバックとして起用されながらも、持ち前の読みと守備領域の広さなどを披露している。昨シーズンにトップチームデビューしたムーアは5月のU-17ユーロでイングランド代表として好プレーを見せると、今夏のプレシーズンでもすでにアシストを記録しているテクニシャンだ。
神戸も今季出場機会を増やしている山内翔や、カマタマーレ讃岐への育成型期限付き移籍から復帰して早々にJリーグでベンチ入りも果たした冨永虹七といった勢いのある若手には、チャンスを掴むべく、好プレーを期待したい。
文=小松春生
試合情報
日付:7月27日(土)
キックオフ時刻:19時
会場:国立競技場
放送予定
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By 小松春生
Web『サッカーキング』編集長