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マンC戦の一撃は「ラッキー」なのか…横浜FMの松原健、今季挙げた2ゴールとの“共通項”

マンC戦で横浜FMの2点目を挙げた松原健 [写真]=金田慎平

 2023年7月23日、『国立競技場』のピッチで松原健の右足が火を吹いた。

 横浜F・マリノスとマンチェスター・Cが対戦する『明治安田Jリーグワールドチャレンジ2023』が同日に行われた。松原は15日に行われた明治安田生命J1リーグ第21節川崎フロンターレ戦(●0-1)のハーフタイムに脳震とうの疑いで途中交代しており、19日のセルティック戦は出場を回避した。だが、マンチェスター・C戦では、前日にマスカット監督が「準備が整っています」と話した通り、先発での起用に。本職の右サイドバックで“欧州王者”に立ち向かった。

 この試合、先手を取ったのは横浜FMだった。27分、水沼宏太のスルーパスに抜け出したアンデルソン・ロペスが、自ら放ったシュートのこぼれ球を押し込み、マンチェスター・C相手に風穴を開ける。その10分後、自陣に引いてボールを受けたアンデルソン・ロペスの浮き球パスから、永戸勝也が左サイドのタッチライン際でフリーで前を向く。時間をかけずに中央へグラウンダーのボールを送り込むと、フリーで走り込んでいた松原がダイレクトで右足のシュートを叩き込んだ。

 松原は自らのゴールを「ラッキーです」と振り返ったが、決して“偶然の産物”であるようには見えなかった。元々、松原という選手はシーズンに1度、衝撃的な“ゴラッソ”を叩き込むことで知られている。だが、今シーズンはマンチェスター・C戦の前に行われた明治安田生命J1リーグで既に2つのゴールを決めていた。第5節の鹿島アントラーズ戦、第19節湘南ベルマーレ戦ともに、敵陣に押し込んだ中で生まれたペナルティエリア手前のスペースに絶妙なタイミングで現れ、左からのパスを沈めたものだ。確かに、今回のゴールは最終ライン裏のスペースへ飛び出したという点で、前述の2ゴールとは異なっている。だが、松原が見せたプレーや試合後の言葉を踏まえると、「チーム文脈を理解し、生まれるスペースを事前に把握している」という共通項があったように感じた。

 ゴールシーンの前までの時間帯について、松原は「回しの中で停滞していた感じがありました」と振り返る。前半の横浜FMは2点をリードすることになったものの、押し込まれた中でボールを奪った際、自陣からの脱出という部分ではやや手を焼いた印象だ。左サイドでサポートするエウベル、そして中央で構えるアンデルソン・ロペスの個人能力が際立ってうまく前進できるシーンはあったものの、松原はチーム全体を見て「みんなが同じポジションにいると相手も守りやすい」と考えていた。そして、「相手の目線を変えるために」斜めのスペースに走った。

 今季の横浜FMでは、ビルドアップ時に最前線のアンデルソン・ロペス、および1.5列目のマルコス・ジュニオールまたは西村拓真が引いた位置でボールを受ける動きを見せ、空いたスペースを両ウイングが突く形で目立っている。第17節柏レイソル戦の2点目、第20節名古屋グランパス戦の1点目などは、前線の2枚が降りることによって生まれたスペースをエウベルが活用したという意味で、象徴的なゴールと言えるだろう。松原自身も現在のチームの取り組みについて「トップが下り気味になるシーンがあり、降りたことによって生まれるスペースを両WGが使う形が多いと思います」と語る。今回のゴールシーンはボールホルダーが左サイド高い位置にいたという点ではエウベルが挙げた2ゴールとは異なるものの、松原に話を聞くと、「前線が降りることによって生まれたスペースを活用する」という点で類似しているゴールだと捉えているように感じた。

 松原はフリーでゴール前に走り込むことができた要因について、ゴールシーンの前に“気付き”があったと明かす。「その前に、ロペスが引いたところで俺が裏を狙ったシーンがありました。あのような動きと点を取ったシーンは少し違いますが、ちょっと色を変えてみようかなと思って、あのような飛び出しをしました」。松原でここで指しているシーンとは、13分の横浜FMのビルドアップのシーンだろう。ここではGK一森純がボールを持った際、横浜FMのビルドアップに対してマンチェスター・Cの選手たちが適切な位置を取っており、パスコースが限定されていた。アンデルソン・ロペスが最前線から降りてくる動きを見せると、松原は即座に斜めの動きで前線へ走り込む。最終的に一森は右サイドの水沼へのパスを選択したものの、松原はこの時点で“アクション”を起こしていた。

 このシーンから約25分後、松原が主体的に起こした“アクション”がゴールに繋がることとなる。最終ライン裏のスペースへ走り込む動きは「僕の独断です」と語ったが、「ボールホルダーにプレッシャーがかかっていない」というチーム内での“決まり事”に則り、“工夫”を加えた動きだった。

 前述の通り、今回の得点は最終ライン裏のスペースへ飛び出しているという点で、松原が今季のJリーグで挙げた2ゴールとは異なっている。ただし、松原はチームや試合の文脈を踏まえた上で「どこにスペースが生まれるのか」を把握し、自身の動きを得点に繋げた。この事実に類似性を感じ、“偶然の産物”であるようには見えなかった。

 このような“工夫”の末に生まれたゴールを、松原は次のような言葉で振り返る。「左サイドにボールが入った時、みんなの目線はそっち(左サイド)に向きます。大外から走っていけば何か起こるかなとは感じていました。カツ(永戸勝也)がボールを持った時に『絶対来るな』という確信がありましたし、パスも『シュートを打ってください』というような丁寧なパスでした。ダイレクトで怖がらず、強気に打ちに行ったという感じです」。このような気持ちで放ったシュートはGKシュテファン・オルテガが届かないコースへ向かい、横浜FMは2点をリードすることとなった。「あんなに綺麗にインサイドでゴールを決められるイメージはあまりありませんでした。抑えて、ふかさないようにイメージして、良い形で点を取れて良かったです」と自らのゴールに言及しただけでなく、“欧州王者”相手に決めた一撃であることにも喜びを露わにした。

「本当に嬉しいです。相手がプレシーズンで最初の試合だからということもありますが、そこを差し引きしても、世界王者から点を取れるということは、この一生であるないかといった感じです。そこはしっかりと結果を残せて良かったです」

 しかし、この後横浜FMはマンチェスター・Cの“底力”を見せられることとなり、3-5で逆転負けを喫した。松原も自身が前半に対峙したジャック・グリーリッシュについて「彼のコンディションは全然100%とは程遠いとは思いますが、パス出すタイミング、仕掛けるところだったりで、要所にクオリティの高さや違いを感じました」と話しており、個人としてもチームとしても“差”を痛感する場面はあっただろう。実際に後半頭からの数十分はなかなか自陣から脱出できず、マンチェスター・Cの攻撃を受け続ける時間が続いた。

 ただし、チームの“やり方”を理解した上で空いているスペースを把握し、そこに入って得点に繋げた松原のプレーは、絶対に今後に繋がるはず。松原が「そこはウチらしい形かなと思います」と語った「サイドバックからサイドバック」という得点パターンからも、横浜FMの“らしさ”が感じられた。松原は今後の明治安田生命J1リーグでの優勝争い、そしてJリーグYBCルヴァンカップとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に向け「このような形を増やしていければいいなと思います」と意気込んでいる。チームの”決まりごと”に則りながら個人の“工夫”を加えることで、今季の松原はさらにゴール数を伸ばしていくかもしれない。

取材・文=榊原拓海

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