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ダービーへ“最重要ポイント”は「気持ちの切り替え」 下位に沈むG大阪、宇佐美貴史に託されるもの

2023.05.01

鹿島戦でフル出場した宇佐美 [写真]=J.LEAGUE

 大型連休に突入し、過密日程となる明治安田生命J1リーグ。5月3日にはガンバ大阪対セレッソ大阪のダービーマッチが行われる。

 G大阪の主将である宇佐美貴史にしてみれば、12年半ぶりに国内復帰を果たした香川真司とJリーグの舞台で対峙するのは初めて。ドイツ時代は直接対決の経験はあるものの、かつて日本代表で共闘した先輩と同じピッチに立つとなれば、やはり特別な感情が湧いてくるだろう。


 しかも彼らは現在、揃ってインサイドハーフを主戦場としてプレーしている。宇佐美は「今の自分はゲームやチャンスを作っていくのがメイン。そういう中で点も狙うというのが仕事で、まずはゴールを取るという9番的な役割とは違います」とコメントしていたが、それは香川にしても同じこと。中盤を支えながらリズムを作り、前線のアタッカー陣を生かしつつ、自らも生きるというスタイルを突き詰めようとしているのだ。

 まさに“攻撃の要”として軸を担う2人のどちらが主役になるのか。そこが今回の“大阪ダービー”最注目ポイントと言っても過言ではないだろう。

 ただ、チーム状況を比較すると、G大阪の方が厳しいのは確か。4月29日の鹿島アントラーズ戦を0-4と大敗し、17位に沈んでしまったからだ。

 今季のG大阪はダニエル・ポヤトス監督率いる新体制でスタートし、ボールを保持しながら主導権を握り、分厚い攻めを仕掛けるスタイルを志向している。

 だが、鹿島戦でもそうだったが、押し込んでいても先手を取れずに失点すると、一気に崩れてしまうのが気になるところだ。

 特に後半は典型例で、リスタートから1点を献上すると、チーム全体に焦りが見られ、前がかりになって守備組織が機能しなくなっていく。土居聖真に2分間で2ゴールを奪われた終盤は中盤がスカスカに空き、鹿島が攻めに転じると最終ラインはズルズル下がるだけ。自信のなさが如実に表れた印象だった。

「後半の頭に失点したことで、少し迷ったり、ナーバスになりすぎた部分がありました。ボール保持のところでもう少しリスク管理をしなければいけなかった。鹿島がやりたいサッカーを見事にやられてしまいました。ただ、ズルズルと負けを引っ張っても仕方ないので、いい意味で開き直るしかない。一番大事なのは気持ちの切り替え。次、頑張るだけやと思います」と、宇佐美は重苦しい表情を浮かべながらも、重要な次戦をいち早く見据えていた。

 ここで再び敗れるようだと、ポヤトス監督の去就問題にも発展しかねない状況だけに、何としても結果がほしいところ。4月9日の川崎フロンターレ戦以来の白星を手にするためにも、インサイドハーフの宇佐美がリズムを作りながら、決定的な仕事にも関与しなければならないはずだ。

 鹿島戦でも31分に左サイドで粘ったイッサム・ジェバリがドリブルでえぐって折り返し、植田直通に当たったこぼれ球を宇佐美が拾ってフィニッシュに持ち込んだシーンがあった。やはりゴール前に侵入した時は敵に脅威を与えられる。テクニックに秀でた選手だからこそ、下がってボールを受けたくなるのも分かるが、今は得点がチームにとって何よりも必要な時期。宇佐美自身もそれを頭に叩き込んだうえで、プレーするべきだろう。

「得点の前段階の仕事が自分の中で一番ですけど、フィニッシュの部分は同じくらい意識しています。今はポジション的に相手CBのラインで待つような感じではないので、そのあたりはもっとうまく立ち回っていく必要があります。(キャリアを)長くやっていける選手は何かしら自分を変化させていけると思いますし、プレースタイルを変えるのは、遅かれ早かれ、どこかのタイミングで必ずやって来る。今の僕はそうしないといけないと思っています」と以前、本人は語っていた。であるならば、少し下がり目に位置しながらも宇佐美らしいゴール前の怖さを出すべく、工夫と変化をつけていってほしい。多くの人々がそう願っているはずだ。

 C大阪とのダービーでも、宇佐美の得点力がより発揮できるように、周囲と意思疎通を図り、お互いの良さを引き出し合うように仕向けて行くべき。今のG大阪は勝利から長く遠ざかっている分、なかなか自信を持って戦えないのだろうが、勇敢さとアグレッシブさを前面に押し出すことが必要不可欠と言っていい。

 本拠地のパナソニックスタジアム吹田で宿敵のC大阪相手に不甲斐ない戦いをすることだけは絶対に許されない。青黒軍団で中学生の頃から育ってきた背番号7に託されるものは少なくない。“下位脱出請負人”としてチームを勝たせる目覚ましい働きを見せてほしいものである。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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