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柏を救った細谷真大の進化とは? 2026年北中米W杯の1トップ候補にも

2023.04.10

柏に8カ月ぶりの白星をもたらした細谷 [写真]=J.LEAGUE

 2022年8月6日に行われた明治安田生命J1リーグ第24節の京都サンガF.C.戦以降、勝利がなかった柏レイソル。2023シーズン突入後もJ1、YBCルヴァンカップともに白星が遠かった。

 今季リーグ戦はガンバ大阪、FC東京との開幕2連戦はドローだったものの、そこから4連敗。第6節の浦和レッズ戦では圧倒的な力の差を見せつけられ、0-3で完敗を喫し、浮上のきっかけが全く見えない苦境に陥っていた。


 迎えた第7節、4月9日の鹿島アントラーズ戦でネルシーニョ監督はこれまでの3バックから4バックにシフトし、立田悠悟と古賀太陽がCBコンビを組んだ。その彼らを軸とした守備陣が鹿島攻撃陣をしっかりとブロックし、効果的なチャンスを作らせない。前半からボール支配でもシュート数でも上回られたが、粘り強い守りは光った。

 これに呼応したのが、最前線の細谷真大だ。値千金の大仕事をしたのは32分。植田直通が競ったボールを戸嶋祥郎が奪って右のマテウス・サヴィオに展開した瞬間、背番号19をつける21歳の点取屋は鋭く動き出した。昌子源と植田の間にギャップが生まれていることを見逃さず、絶妙の位置取りでスペースに入り込み、スルーパスを受けて右足を振り抜いた。

 これが決勝弾になり、8カ月ぶり勝利の立役者になれたのだから、細谷としては、してやったりだろう。

「サヴィオが持ったらハッキリ動こうと思っていました。いいボールが来たので、うまく流し込めたかな。シュートは感覚的に打ちました」と口数の少ない若武者は内なる喜びを強くにじませた。

 細谷のポジショニングの鋭さは特筆すべき点だ。先制点のシーンのみならず、鹿島守備陣のラインが乱れた時には必ずと言っていいほど細谷が侵入していた。

「常にスペースを狙っていますし、そういうところを突いていかないとダメかなと。今回は相手が前から来たので、SBの裏とかは狙っていきました。ただ、カウンターのところでもっと脅威を出せればよかった。自分が起点を作ることでいい攻撃ができるんじゃないかと思いました。ゴールだけじゃなく、チャンスメイクでもチームを助けられる存在を目指してやっています」と本人の理想はまだまだ高いようだ。

 前線で起点になる部分も劇的な改善が見られた。84分に植田を背負ってボールを収め、マテウス・サヴィオに展開したシーンが象徴的だったが、屈強なDFにもしっかり体を預け、上半身をうまく使いながらボールをブロックし、確実にタメを作っていた。

 こういった仕事のできる日本人FWはまだまだ少ない。21歳の時の大迫勇也にしても、ここまで堂々としたプレーはできなかっただろう。そういう意味でも大いなる可能性を感じさせた。

「ヨーロッパに行けば植田選手のような大柄なDFはたくさんいる。背負っていても前からガツンとくるので、ビビらずにやるのは今日、意識していたところです。Jリーグとヨーロッパでは違った駆け引きがあるので、(U-22)代表で学んだことを出せているんじゃないかなと。本当はもうちょっと時間を作れる場面が増やせたらよかったですけど、続けてやっていくしかないかなと思います」

 3月のU-22ドイツ代表、U-22ベルギー代表との2連戦の経験も踏まえながら、DFの背負い方や間合いの取り方を工夫している細谷。そういった地道な取り組みが少しずつ成果となって表れていると言える。

 点を取れて、チャンスメイクができて、ボールも収められる“最強FW”への道を邁進しているストライカー。理想通りの軌跡を描ければ、2026年北中米ワールドカップでの1トップというのもあり得る話だ。

 ただ、その前に「柏を勝たせられる絶対的エース」に君臨する必要がある。今季リーグ初勝利を挙げたとはいえ、まだ17位。3得点目で得点ランキング6位タイに浮上した細谷自身も「2ケタゴール」という目標に向かって歩みを止めてはいけないのだ。

「チームとしても個人としても結果がまず絶対条件だったので、最低限の結果は残せたのかなと思います。自分は初心を忘れずにやりたい。試合に出始めて、少しずつ結果を出せるようになってきましたけど、天狗にならずにしっかり責任感を持って戦っていきたい。相手に関わらず、決め切る力をもっと高めていく必要があるので、練習からいい準備をしていきたいです」

 常に謙虚さを忘れず、サッカーに取り組む姿は非常に頼もしい。地道な一歩を積み重ねていくことでいつか大輪の花を咲かせられるはず。今の細谷真大からは際限ないポテンシャルが感じられるだけに、その一挙手一投足は必見だ。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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