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横内新体制・磐田の“生みの苦しみ” 遠藤保仁は2度目の昇格請負人になれるか

2023.03.13

磐田MF遠藤保仁 [写真]=兼子愼一郎

 開幕4節を終え、昨季王者の横浜F・マリノスが6位、2020、21年王者の川崎フロンターレが14位と想定外の様相を見せている明治安田生命J1リーグ。ただ、意外な序盤となっているのはJ2も同様で、4節終了時点でFC町田ゼルビアが首位、ブラウブリッツ秋田が同勝ち点で3位につけている。

 2022年は最高峰リーグで戦ったものの、わずか1年で降格。今季からFIFAワールドカップカタール2022を日本代表コーチとして戦った横内昭展新監督を迎え、再出発したジュビロ磐田は、ここまで1勝1分2敗の勝ち点4で15位。“生みの苦しみ”とも言うべき苦しいスタートを余儀なくされている。


 3月4日のモンテディオ山形戦で今季初勝利を飾り、シーズン初の連勝を狙って挑んだ11日の大宮アルディージャ戦も、開始早々から一方的に支配。開始12分の杉本健勇のビッグチャンス、15分の左CKからドゥドゥのヘッドなど得点の匂いを感じさせたが、どうしてもゴールが遠い。

 点が入らないまま刻一刻と時間が進み、迎えた終盤。CB中川創が決定的機会の阻止で一発退場を食らい、磐田は数的不利を強いられた。そこで守り切れるはずだったが、一瞬のスキを突かれて大宮のアンジェロッティの決勝弾を許し、万事休す。0-1で苦杯を喫した。

 これにはフル出場した43歳の遠藤保仁も納得いかない様子を見せた。

「今日に限っては『決めていれば』というところだった。全体的にもゲームは支配できていましたから。でも失点場面で(守備の)枚数が足りていなかった。退場して1人少ない中でボールが大きく切れるまではしっかりマークにつくとか、基本的なところをもう1回、みんなで確認しあってやっていければいいかなと思います」と大ベテランは前を向いた。

 2020年10月に磐田に加入し、2021年にはJ1昇格請負人としてチームをけん引した遠藤はプロ26年目。ボールを大事にし、常に前方向のサッカーを目指す横内監督にしてみれば、彼が重要なピースであることには変わりない。

 ボランチにギラヴァンツ北九州から復帰した24歳の針谷岳晃と遠藤というボール扱いに秀でる2人を並べていることからも、指揮官の「攻めに行く」という姿勢が色濃く伺える。

「監督からは『たくさんボールを触ってゲームを支配したい』と毎試合言われています。もっと数字を高めながら、僕らが起点になってビッグチャンスを増やしていけるようにしていきたいですね。タケちゃん(針谷)とは長い時間、一緒にやっているわけではないですけど、お互いボールを持てるタイプなので、安心して預けることができますし、縦関係になることもよくありますけど、問題なくやれている。いい関係を築けていると思います」と遠藤自身も手ごたえをつかんでいるという。

 針谷も「ヤットさんはいるだけで安心感があるし、メッセージ性のあるパスをくれるので、前へ行く回数も多くなっている。隣でやらせてもらって他の誰からも得られないものを吸収できていると思います」とやりがいを感じている様子だ。新ボランチコンビが新生磐田の大きなエッセンスになっているのは間違いない。

 それが勝利という結果に結びつけば理想的。そうなるように、百戦錬磨の遠藤が仕向けていくことが肝要だ。

 補強禁止という重いペナルティを課されている今季の磐田は新たなアタッカー陣の補強ができず、5月11日までファビアン・ゴンザレスが復帰できないという事情もあるだけに、何とか現有戦力で乗り切っていくしかない。

 こうした中、今季開幕のファジアーノ岡山戦で2ゴールを叩き出した17歳の長身FW後藤啓介という超有望株がいる。遠藤にしてみれば、息子とサッカーをしているような状況だが、「ピッチに立てば年齢は関係ない」とキッパリ。若い選手とポジティブな競争を繰り広げながら、彼らの成長を促していく構えだ。

「フィールド上では全員がライバル。タケちゃんも若いですし、同じポジションだったら(山本)康裕とか(上原)力也とかたくさんいるので、彼らとは練習中からいい仲間として上を目指してやっています。今はすごくいい感じでやれてると思いますよ」

 横内監督も絶大な存在感を示す遠藤に「ピッチ上の指揮官」としての役割を託しているのだろう。もちろんキャプテンの山田大記、ここ数試合腕章を巻く鈴木雄斗らと協力しながら、遠藤は1年でのJ1復帰を果たすべく、持てる経験値の全てを注ぎ込むつもりだ。

 2021年も鈴木政一監督体制で異彩を放ち、昇格請負人としての重責を遂行したが、それを再現することが43歳の男に課される命題と言っていい。

「結果はまだ出ていないですけど、内容的には開幕戦(岡山戦)より(レノファ)山口戦の方がいいですし、山口戦より山形戦の方がいいですし、山形戦より今回の方が間違いなくいい。あまり下を向かずにやるべきことをやりながら、次、(静岡)ダービーなので、しっかり勝っていきたいと思います」

 18日の清水エスパルス戦に勝てれば、大きな弾みがつくのは確か。遠藤には年齢を重ねて凄みを増した戦術眼と老獪さをいかんなく発揮してほしいものである。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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