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東京ヴェルディ・小池純輝が社会貢献活動に熱心に取り組む理由

2022.11.11

長年にわたって社会貢献活動に取り組んでいる東京Vの小池選手 [写真]=東京ヴェルディ

 10月6日、東京ヴェルディ小池純輝選手がクラブのSNSでこんな動画メッセージを発信した。

「10月6日は『世界脳性まひの日』ということで“Warm Green Day”と名付けられています。みんなでグリーンの服を着て盛り上げて、脳性まひについて知るきっかけにしましょう!」


SNS動画で世界脳性まひの日をPRする小池選手 [写真]=東京ヴェルディ

 毎年、世界脳性まひの日には、世界各国で脳性まひについての理解を促進するさまざまな取り組みが行われている。国内でも東京都庁や神奈川県庁などがシンボルカラーである緑色にライトアップされ、関連の催しなどが開かれていた。

 日本ではまだあまり知られていないこの取り組みについて、なぜプロサッカー選手である小池選手が自ら発信したのか。日頃から社会貢献活動に熱心な小池選手は、昨年6月に一般社団法人日本CPサッカー協会の理事に就任している。「CPサッカー」とは脳性まひ者7人制サッカーの通称で、「自分も何か力になれないか」との思いから誘いを引き受けたという。

 小池選手はCPサッカー協会理事のほかにも、2015年に現チームメイトの梶川諒太選手とともに立ち上げた一般社団法人『F-connect』(エフコネクト)の代表理事を務め、「フットボールで繋げる、フットボールが繋げる」をコンセプトに児童養護施設の子どもたちを支援する活動を続けている。現役のプロサッカー選手でありながら、なぜこうした活動を続けるのか。本人に話を聞いた。

――小池選手が取り組む社会貢献活動について聞かせください。10月6日にSNSで『世界脳性まひの日』について発信していましたが、こうした活動に関わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
小池 昨年、日本CPサッカー協会の理事に就任させてもらったのですが、もともと協会の理事の方に知り合いがいて、現役選手でありながら『F-connect』のような活動を続けている自分をいつも気にかけてくれていました。それで、ちょうど協会が新しい体制になるタイミングということで、新しい理事にと声を掛けていただいたのが就任の経緯です。

――CPサッカー協会の理事というのは具体的にどんなお仕事なのでしょう?
小池 コロナの影響で顔を出せないこともあって、まだ何もできていないというのが現状です。ただ、『F-connect』の活動の中でいろいろな社会課題への気づきがあったように、実際にやっていくことで分かること、できることがあります。だから今回も理事をやりながら「自分に何ができるか」ということを探していきたいと思っています。

――世間的には、まだ脳性まひやCPサッカーのこと詳しく知らない人が多いと思います。現状でどんな部分に課題を感じますか?
小池 障がい者サッカーで言うと、東京パラリンピックで注目されたブラインドサッカーが今は先頭を走っているというか、引っ張ってくれていると思います。ただ、パラリンピックが終わってから、その運営は資金面も含めて大変なところがあると思いますし、競技としていかに注目を集められるか、知ってもらえるかが重要になってきます。CPサッカーについても、脳性まひの方の中にもまだCPサッカーを知らない方や、知ってはいても「自分にはできないんじゃないか」と思っている方もいらっしゃるんじゃないかと思います。そういう方たちに少しでもサッカーに触れてもらって「自分にもできるんだ」と思ってほしいですし、それが結果的にその方にとっての生き甲斐の一つになるかもしれません。そのためには、まず知ってもらうこと。認知の部分と、運営規模を大きくしていくことがこれからの課題なのかなと感じています。

――確かに認知という意味では、現役のアスリートが発信することには大きな影響力がありそうです。
小池 『F-connect』を立ち上げる際、最初は「子どもたちに対して何かしたい」という気持ちだけが先行していたのですが、活動を通して、子どもたちの反応を通して、スポーツの価値、アスリートの価値というものに気づかされる経験が数多くありました。やっぱり現役選手だと子どもたちの反応もいいですし、アスリートの価値は現役のときこそ最大になるということが分かって、「現役のうちに何ができるか」を考えるようになりました。もちろん、引退後も伝えられることはたくさんありますが、今は現役のうちにできることはどんどんやっていきたいという気持ちが強いです。

小池選手は2015年から『F-connect』の活動を続けている [写真]=東京ヴェルディ

――プロサッカー選手である以上、サッカーに集中したいと考える選手も多いと思いますが、その中で小池選手を突き動かしているものは何なのでしょうか?
小池 この世界は意外と狭くて、会うメンバーも一緒ですし、実は小さなコミュニティの中で生活しています。クラブも選手がプレーに専念できる環境を作ってくれるので、自分からその輪を飛び出さないと、新しい気づきや学びがありません。僕はたまたま施設に行く機会があって、活動を通してスポーツやアスリートの価値に気づくことができました。それに、例えば活動の中で知り合った子どもたちを試合に招待するとなったら、やっぱりその試合に出たいじゃないですか。それがモチベーションになったりもするので、サッカーをやっていくうえでマイナスになるなんてことは一つもないですし、むしろそれまでとは違う視点を持てたのは大きかったです。選手のうちはサッカーに専念する。それはそれで素晴らしいことですが、個人的には現役であろうと物事の見方や視野を広げることは常にやっていくべきだと思っています。

――そういう考えに至るまでにはさまざまな経験をしてきたと思います。心を動かされた具体的なエピソードがあれば教えてください。
小池 初めて神奈川県の施設に行ったときのことです。「外でボールを蹴ろうよ」と子どもたちを誘ったのですが、最初はサッカーが好きで積極的な子が2、3人参加するだけで、他の子どもたちは気にはなるけど傍観しているというか、見ているだけでした。でも、やっているうちにだんだん人数が増えていって、暗くなる頃にはほとんどの子が一緒にボールを蹴ってくれました。それ自体もとてもうれしかったのですが、帰りがけに職員の方に挨拶に行って話を聞いたら、普段は絶対に参加しないような子も一緒にボールを追いかけていたそうで、それについて職員の方が「驚いた」という表現をされていて…。もしかしたらその子は僕らが来たことでチャレンジしてくれたのかもしれない。まさにスポーツの価値、アスリートの価値を感じられた瞬間でした。正直、『F-connect』の活動を始めた当初は、子どもたちに対して何ができるのかが分からなかったのですが、彼らが行動を起こすきっかけを作れたという意味で、自分にも影響を与えられる可能性があるんだと思えるようになりました。「何ができるのか分からない」から「何かできるかも」に変わったんです。

子どもたちとサッカーを楽しむ小池選手、梶川選手 [写真]=東京ヴェルディ

――障がいを持った方や施設の子どもたちと触れ合うことで、彼らに対する見方に変化はありましたか?
小池 まだ実際にCPの方々と何かしたということはないのですが、彼らには何かしらの障がいがあって、体を思うように動かせないということがあると思います。ただ、僕自身もサッカーをやっていて苦手なことや失敗することはたくさんありました。それと一緒とは言えないかもしれませんが、障がいのある、なしは関係ない部分もあるのかなと想像します。そういうときに、僕の場合はどちらかというと自分の強みや特長に目を向けてきました。できないことをできるようにすることも大切ですが、できることを伸ばしていくほうポジティブな気持ちになりますし、みんなが「できることを伸ばしていく」という考え方になってもらえたらなと。
 施設の子どもたちについても、もちろん僕らはたまに会うだけなので、彼らが抱えるすべての問題を知っているわけではありません。施設の方とお話する中で、どうしても埋めきれない心の穴があるということも聞いています。子どもたちが「18歳で施設を出なければならない」ということもそうですし、世間で一般と言われる子どもたちが当たり前に受けている親からの支援や、大学進学や就職時に金銭面を含むサポートが少ない現状があるなど、社会課題はたくさんあると聞いています。でも、僕らと接しているときの彼らはいわゆる一般の子どもたちと何も変わらないですし、そこに大きな違いなんてない。そんな彼らに対して少しでもポジティブな影響を与えられればと思って活動を続けています。
 まだCPの方には具体的に取り組めていないのですが、今後しっかりと形にしたいと考えています。

――今後どういう活動をしていきたいか、将来のビジョンはありますか?
小池 スポーツにはいろいろな力があると強く思っています。僕自身、スポーツに育ててもらった部分があるので、そのスポーツをきっかけに地域の人々の心が豊かになったり、つながりが深くなっていったり、そういうものの一端になれるような活動を続けていきたいです。

By サッカーキング編集部

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