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鄭大世が現役引退…”不屈のストライカー”が38歳でピッチに別れ「悠然と胸を張ってスパイクを脱ぎます」

2022.10.28

[写真]=金田慎平

 FC町田ゼルビアは28日、同クラブ所属の元北朝鮮代表FW鄭大世(チョン・テセ)が2022シーズンをもって現役を引退することを発表した。

 鄭大世は1984年3月2日生まれの現在38歳。朝鮮大学校を経て2006年に川崎フロンターレに加入し、プロキャリアをスタートさせた。加入初年度は途中出場が多かったものの、翌2007シーズンから徐々に出場機会を増やしFWの主軸に定着。屈強なフィジカルと強力なシュートを武器に得点を量産し、川崎Fに在籍した約4年半で公式戦通算64ゴールを挙げた。


 2010年夏に当時ブンデスリーガ2部だったボーフムに完全移籍で加入。ホーム開幕戦でいきなり2ゴールをマークするなど、加入直後から存在感を放った。このシーズン、チームはプレーオフの末に1部昇格を逃したものの、鄭大世自身は10ゴールを記録する活躍を見せた。2012年1月にはブンデスリーガのケルンに移籍。しかし、ここでは力を発揮することができず、約1年間の在籍で11試合出場ノーゴールという成績に終わった。2013年1月には韓国の水原三星ブルーウィングスに移籍。約2年半の在籍で85試合に出場して28ゴールを記録した。

 2015年夏に清水エスパルスに完全移籍で加入。約5年ぶりとなるJリーグ復帰を果たした。13試合で4ゴールを挙げる活躍を見せたが、チームはこの年J2降格の憂き目に遭った。2016シーズンは抜群の得点力でチームを牽引。26得点で明治安田生命J2リーグの得点王に輝き、1年でのJ1復帰に大きく貢献した。J1復帰初年度となった2017シーズンはチームの主将に就任。明治安田生命J1リーグで10得点を挙げ、チームのJ1残留に貢献した。

 2018シーズン以降は徐々に出番を減らし、2020シーズン途中にはアルビレックス新潟にレンタル移籍で加入した。契約満了に伴い2020シーズン限りで清水を退団。2021シーズンからは町田でプレーしていた。昨シーズンは公式戦33試合出場5ゴール、今シーズンは34試合出場6ゴールという成績を残した。

 また、2007年6月にデビューを飾った北朝鮮代表としては33試合に出場し15ゴールを記録。FIFAワールドカップ南アフリカ2010への出場も果たした。

 現役引退に際し、鄭大世FC町田ゼルビアのクラブ公式サイトを通じてコメントを発表している。

「裏山の鶯の鳴き声で目を覚ます。そんな清々しい朝を迎えてた町田での2年間。最後の最後まで。本当に最後の試合まで苦しかった。これを遅くに書き上げた後に夢で、外されてるのに怒鳴られる夢でうなされ、朝思わず加筆した。現実もそんな日常だった」

「全て伏線だと言い聞かせ、この”痛みや苦しみ”は自分だけの花を咲かせるためだと愚痴りながらも、食らいついた。自分と、周りが思う今の質の差にも薄々気がついてたが年甲斐もなく、まだできる!とギラついてたけど、変わることはなかった。苦しさは変わらずで、こんな歳でも、悔しくて何度も泣いた。でも喜びは、喉が裂けるほど咆哮したあの頃とは、もう違う」

「同世代に勇気づけられ、ひと回り下に慰められた。歳の半分以下の選手たちと鎬を削った。幼き頃、買ってもらったユニの袖のJリーグのエンブレム。太くなった腕の袖のそれを見るたびに、胸が熱くなった。何年も前から、今日が最後かもと毎試合トイレに篭り嗚咽を漏らして泣いてた。酸いも甘いも味わい、綺麗事だと思ってたあの言葉も、今なら素直な気持ちで言える。 『みんなのおかげ』」

「こんな性格じゃなかったらもっといい景色が見えたかも? こんなエゴイストだからここまでこれた? 違う。みんなの支えで今がある。後悔や、人としての失敗は数え切れないけどはっきりと言える。これが『ベスト』」

「砂埃舞う大学都リーグ3部からのし上がった、最高に痛快なサッカー人生。多くをサッカーからもらい、今は心が満たされてる。あの頃想像もできなかった舞台で夢中で走った17年間に、終了の笛を吹き、終止符を打つ。悠然と胸を張ってスパイクを脱ぎます。エゴイストなくせに馬鹿みたいに繊細で感情的な、こんな僕に関心を持ってくれてありがとうございました」

By サッカーキング編集部

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