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浦和レッズによる子ども食堂を通じたSDGsへの取り組み

10月8日、「子ども食堂ネットワーク」を通じて募集された子どもたちと保護者120人が埼スタに招待された [写真]=浦和レッズ

 10月8日から10日までの3日間、浦和レッズが「埼スタAutumn Festival」と題したイベントを埼玉スタジアムで開催した。浦和レッズが3日連続のイベントを埼スタで行うのは初めて。2020年に埼スタの指定管理者となってからは、地域貢献のためのイベント開催を柔軟に行うことができるようになっていたものの、2020年にコロナ禍が訪れてしまい、さまざまなことが足踏み状態になっていた。ここにきてようやく大規模イベントが実現したという流れだ。

「埼スタAutumn Festival」では3日間にさまざまなイベントが行われた。その一つである「パンのフェス」に関連してひときわ目を引いたのが、「一般社団法人埼玉県子ども食堂ネットワーク」を通じて募集された子どもたちや保護者が8日の浦和レッズ対サガン鳥栖戦を観戦していた姿。そこには“Jクラブの未来形”を映し出す光景があった。

 埼スタに招待された120人は「一般社団法人埼玉県子ども食堂ネットワーク」の利用者の皆さん。家庭の事情で食事をとることが困難な「貧食」の子どもたちや、一人で留守番をしていて温かいご飯を食べられない「孤食」の子どもたち(子ども食堂HPより抜粋)、そして保護者の方々だ。

 子ども食堂ネットワーク代表理事を務める東海林尚文氏によると、同ネットワークは埼玉県内を15のエリアに分けて活動し、全部で約180団体が属している。今回はその中で埼スタに近いエリアの利用者を対象に参加希望者を募ったところ、3日間で120人の枠が埋まる人気だった。10月8日の試合当日はピッチを見下ろすビューレストランでパンの贈呈式が行われ、その後、スタンドに移動しての試合観戦となった。

 試合が始まると、最初はサッカー観戦をしたことのある人と、観戦が初めての人のリアクションに違いがあったそうだが、時間が進むにつれて参加者全体に試合を楽しむ雰囲気が浸透。最後は浦和レッズが2-1で勝利し、笑顔が広がった。

 浦和レッズと「子ども食堂ネットワーク」とのつながりは、新型コロナウイルス問題がきっかけだった。時は2020年2月。5万人の来場者を見込んで準備を進めていたホーム開幕戦の直前に、試合の延期が決まった。飲食売店は既に大量の食材を用意し終わっていたタイミング。食材の賞味期限が迫る中、終わりの見えないトンネルの中に潜り込み、大量の食材をどうしようかと途方に暮れながら浮かんだのが、「子ども食堂」への寄付だった。クラブは埼玉県を通じて子ども食堂ネットワークとコンタクトを取った。これが始まりだった。

 新型コロナウイルスはその後も猛威を振るい続け、再開日程の発表と再延期が何度も繰り返された。当然ながらそのたびにフードロスの問題も起こり続けることになった。度重なる苦しい状況の中で、浦和レッズと子ども食堂の関係は深まっていった。

 それから2年半。この間も継続して子ども食堂と関わりを持ってきた中で、今回実現したのが、「パンのフェス」に絡めての試合観戦への招待だ。実は今回の「埼スタAutumn Festival」には、浦和レッズが2019年に準優勝したAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の賞金の一部が費用として充当されている。AFCは賞金の5パーセントを社会貢献のために使うように定めているが、2020年2月から世界中がコロナ禍へ突入。そのため2020年、2021年はACLの賞金を社会貢献活動に活用するタイミングがなく、今回のタイミングで使うことになったのだ。

 こうしてクラブは10月8日の試合に120人を招待。浦和レッズの公式マスコットレディアのイラストがついた「レディアんぱん」などの詰め合わせをプレゼントし、ウェルカムシートの一角に席を用意した。

 子ども食堂ネットワークの東海林氏は「子ども食堂の利用者には、スポーツ観戦や動物園、美術館などに行くことが難しい家庭が多い。食材による支援に限らず、今回のような体験型の支援が加わることはとてもありがたい。参加者からも大好評だったのでまたこのような機会があればうれしい」と言う。

 一方で今回の取り組みがもたらすプラス効果は浦和レッズにもある。浦和レッズは2021年1月から「埼玉県SDGs(持続可能な開発目標)パートナー」に登録しているが、その立場としての新たな気づきを得ることにもなっているからだ。浦和レッズコーポレート本部スタジアム運営担当の早川拓海氏はこのように語る。

「SDGsが掲げる17の項目の中で最初に掲げられているのが『貧困をなくす』という課題です。今回のことで浦和レッズが問題の解決に貢献できたというのはおこがましいですが、一緒に関わりながら、助け合いながら進んでいくという観点を持つことができるようになったのは確かなことだと感じています」

 2020年に埼スタの指定管理者となって以降、浦和レッズではホームタウンへの還元という考えがクラブ内に醸成されてきたが、それに拍車をかけたのが2020年からのコロナ禍でもあった。「問題の解決自体は僕ら1人では絶対にできません。けれども、浦和レッズの取り組みを通じて、1人でも多くの方に関心を持ってもらうことができれば僕らとしては非常に喜ばしい。それが問題解決の第一歩になると思うからです」と早川氏は力を込める。

 Jリーグが誕生して30年。Jクラブはもはや地域の公共財であり、社会のために存在しているという考えをベースに持つことが必要不可欠になっている。そういった考えの下、地域の課題の解決を目指す活動を広げている浦和レッズ。Jリーグが標榜する「100年構想」の30年が過ぎた今、10月8日に埼スタに集った子どもたちが、問題解決の進んだ世の中に暮らし、70年後の「Jリーグ100周年」にまた浦和レッズの試合を見てくれることを願いたい。

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