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故郷に戻って再出発 小川航基、完全復活を果たすべく2ケタゴールを

2022.01.11

横浜FC新加入の小川航基 [写真]=元川悦子

「ジュビロ(磐田)でやり残したこともたくさんありますし、期待通りの活躍ができなかった。完全移籍は自分自身、簡単な決断ではなかったですけど、思い切った決断をすることも人生の中では大事なこと。新たなチームで頑張りたいと思っています」

 9日に横浜市役所で行われた横浜FCの2022年新体制発表会。今季から地元・横浜に戻って再出発することを決めた小川航基は完全復活への強い意気込みを口にした。


 桐光学園から2016年に磐田入りした当初は「中山雅史や高原直泰、前田遼一ら偉大なFWの系譜を継ぐべき選手」と大きな期待を寄せられた小川。2017年U-20ワールドカップにもエースとして参戦し、直後に本格始動した東京オリンピックに向けた代表にも着実に名を連ねた。

 この時点では森保一監督の評価も非常に高く、2018年、2019年のトゥーロン国際トーナメントや2019年のブラジル遠征などにも参戦。2019年12月にはEAFF E-1選手権でA代表に抜擢され、香港戦でいきなりハットトリックというド派手なデビューを飾った。

小川航基

E-1時の小川航基 [写真]=Getty Images

 それだけに、2020年に磐田で9番を背負った時は「自分がチームを引っ張らないといけない」という自覚をより一層、強めたはず。実際、フェルナンド・フベロ監督体制では7ゴールを挙げる活躍を見せ、主力の座をつかんだと思われた。

 しかしながら、同年10月にスペイン人指揮官が成績不振で交代。鈴木政一監督がチームを引き継いで1カ月も経たないうちに新型コロナウイルス感染が発覚する。同時に規律違反による謹慎を強いられ、シーズン2ケタゴールの目標達成が叶わなかった。

 こうしたボタンの掛け違いが2021年にも影響したのか、シーズン序盤から思うように出番を得られない。ルキアンやファビアン・ゴンザレスとの競争にも敗れ、最終的には24試合出場1得点という不本意な結果にとどまった。大目標だった東京五輪代表からも外れ、U-24日本代表FWには無印だった林大地が君臨。前田大然や三笘薫ら後発組にも追い越される形になり、本人も心底、悔しい思いをしたに違いない。

「東京世代で一緒にやっていた選手がどんどん活躍して、成長して、移籍していく中で、僕自身、もどかしい気持ちがありました。『何をやっているんだ』と思うこともあった。でも、他人は他人だし、人との比較は意味がない。自分がジュビロで全然、結果を出せなくてすごい壁にぶつかったのは事実ですし、『またここから這い上がってやる』って思いは強まった。必ずここで活躍するんだと今は考えています」と小川は目をぎらつかせた。

小川航基

磐田では9番を背負った小川 [写真]=Getty Images

 横浜FCには桐光学園の先輩、中村俊輔や同期のイサカ・ゼインもいるため、適応は早そうだ。しかも、今季から指揮を執る四方田修平監督は北海道コンサドーレ札幌で長年、若手育成に携わってきた名指導者。小川のように伸び悩む選手を何人も見てきた分、刺激を与え、スランプから脱出させる術に長けている。地元の横浜であるという部分も含め、今回の完全移籍は最良の選択ではないだろうか。

「今季の僕はまず横浜FCの選手の特徴を知るところからスタートしなければいけないと思います。6年間いたジュビロみたいに『この選手はどういうパスができる』『どういうタイミングでボールが出てくる』というのが今はまだ分からない部分もある。味方を知ることが肝心だと思います。そういう中で自分が点を取ることがチームを助ける一番の近道。2ケタはもちろん目指しますし、勝利を第一に考えてやっていきたいです」

 今年25歳になる生粋の点取屋の鼻息は荒い。ただ、横浜FCには昨季から在籍するクレーベやサウロ・ミネイロ、フェリペ・ヴィゼウという3人のブラジル人FWに加え、渡邉千真、松本山雅FCからレンタルバックした伊藤翔といった実績あるベテラン勢もいる。小川の定位置が保証されているわけではない。

「ブラジル人3人を含めて正直、どんなプレーをするのはまだ分かりませんけど、それだけFWがいる中でも僕に声をかけてくれたというのは、自分が必要とされているということ。タイプは間違いなく全員違うので、どれだけ自分の色を出せるかが勝負だと思います。僕が負けないのはやっぱりゴールを取ること。それと守備のハードワークです。死に物狂いでやって、活躍できれば未来は明るいと信じています」

 その言葉通り、小川が2ケタ得点というキャリアハイの数字を残せれば、四方田監督が掲げる「1年でのJ1復帰」は見えてくる。それと同時に彼自身の最高峰リーグ返り咲き、代表復帰の道も開けてくるだろう。ここまでの停滞感を打ち破るためにも、貪欲に泥臭く結果を追い求めることが肝要だ。

 2021年大みそかには結婚も発表。心身ともに充実した状態でプロ7シーズン目に挑むことになる。「未完の大器」は今こそ持てる全ての力をピッチで出し切り、本来いるべき高い領域に上り詰めるしかない。

取材・文=元川悦子

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