今夏、セレッソ大阪に復帰した乾貴士 [写真]=Getty Images
「とにかく『セレッソのために』ということしか今は頭にない。ただ、正直なところを言うと、ちょっとチームに元気がなくなっている。10年前はもっとうるさい選手がいっぱいいた。今は元気な選手がなかなか見当たらないので、自分がその役割を担っていきたいと思っています」
9月2日のJリーグ復帰会見で古巣・セレッソ大阪の起爆剤になることを誓った乾貴士。
それから3日が経過した5日のYBCルヴァンカップ準決勝・ガンバ大阪戦の第2レグで10年ぶりのピッチに立ち、4-0の勝利に貢献。さらに初スタメンを飾った8日のJ1リーグ・北海道コンサドーレ札幌戦で、大久保嘉人のJ1通算191ゴール目をアシストするなど、背番号23をつける男は非常に幸先のいい船出を見せたと思われた。
ところが、続く11日のJ1・札幌戦を0-2で敗れたのを機に、C大阪はゴール欠乏症に陥ってしまう。15日には極めて重要だったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)・浦項スティーラーズ戦をホームで落とし、さらに18日のJ1・浦和レッズ戦も0-2で完敗。3試合連続で無得点という停滞感に包まれたのだ。
13連戦の終盤にさしかかり、チーム全体が疲労困憊で、ギアが上がらないという苦しい状態ではあるが、このままではいけないというのは誰もが感じているところだろう。
浦和戦で先発2トップの一角を占めた19歳の若武者・西川潤は目下、直面する攻撃面の課題をこう説明していた。
「守備での圧力のかけ方と言うか、もっと行く時にパワーを持って前で奪えればチャンスも増える。奪うラインが低いと、その分、エネルギーも必要になるので。まず守備から改善しないといけないし、僕らFW陣のクロスへの入り方やシュートへの意識も足りないと思います」
こうした現状を踏まえ、ベテランボランチの奥埜博亮は、「チームとして後ろからビルドアップして相手のゴール前まで運んでいく練習をやっていますが、運べたとしても、最後の部分は選手個々の力が肝心。特にゴールを取るところはそうなので、しっかり決めることが大事になると思います」とフィニッシュの精度アップの重要性を改めて強調した。
となれば、決めきる力を持った選手が今一度、底力を見せつけなければいけない。J1通算最多スコアラーの大久保やオーストラリア代表FWアダム・タガート、若き西川、加藤陸次樹らの決定力向上はもちろんだが、2列目アタッカー陣がもっと強引にゴールに迫ってもいい。
2018年ロシアワールドカップ(W杯)でセネガル、ベルギー相手に1ゴールずつをマークし、ベスト16進出の立役者になった乾は、もっともっと強引にフィニッシュを狙うべきだ。浦和戦ではどこか遠慮が見られただけに、強気の姿勢で貪欲にゴールに突き進んでほしいのだ。
さらに言うと、乾のドリブル突破もやや物足りなさが拭えない。浦和戦はチーム全体が簡単にボールを失い、守勢に回る時間帯が長かったことも響いたのか、グイグイとアタッキングゾーンに持ち込むシーンはほとんどなかった。たまに左サイドで仕掛けのチャンスが巡ってきても、自らは中央に絞って丸橋祐介の上がりを引き出すなど、周りを生かす意識が強すぎるように映った。
それが33歳になった大人のフットボーラーの「思慮深さ」なのだろうが、乾貴士は永遠のサッカー小僧。小気味いいリズムのドリブルで敵をキリキリ舞いしていくプレーが真骨頂だ。しかも、対面にいたのが酒井宏樹だったのだから、ロシアW杯の盟友の鼻を明かすような迫力が見たかった。多くのサポーターもそう感じたのではないだろうか。
「小学校の頃からやりたいと思っていたスペイン1部で6シーズンもできたのは大きな財産。一番の魅力はサッカーIQが高くて、サッカーを知ってる選手がいっぱいたこと。その中でいろんな技術があったり、点を取れたりするので、すごく楽しかったですね」
乾は一定の成功を収めたスペイン時代をこう語っていたが、だからこそ、その楽しいサッカーをC大阪でも実践してほしい。遠慮せずに個の力を前面に押し出して、一目散にゴールへ向かってほしいのだ。清武弘嗣というキャプテンをケガで欠いている今こそ、そういう彼の気迫と闘争心が必要なのである。
「Jリーグを見ると、ゲームスピードはちょっと遅い部分があるし、球際も緩かったりする。そのへんは日本人選手もわかっていることだし、改善していかないといけけない部分。自分はそれを伝えていきたいし、練習でも激しく、100%でやっていきたいです」
本人もこんなコメントを残した通り、世界基準のプレーやメンタリティも苦境の最中にいるC大阪に注入すべき部分。それを乾が率先してやることによって、彼らは必ずゴール欠乏症から抜け出せる。躍動感溢れるサッカーを再び見せられるようになるはずだ。
J1では現時点で12位という苦しい位置にいるが、彼らにはまだ、ルヴァン杯も天皇杯も残されている。とりわけ、ルヴァン杯の方は、リーグ戦で悔しい負け方をした浦和との再戦だ。10月6日、10日の2戦は是が非でも勝ち抜かなければいけない。清武が間に合うという噂も流れてはいるが、それが叶うにせよ叶わないにせよ、今回の完敗を糧にゴールをこじ開ける術を考えることが肝要だ。その中心にいるのが乾だと言っていい。
とにかく、彼には個の仕掛けと自らシュートに持ち込む貪欲さをもっと強く押し出してほしい。それが乾貴士の最大の魅力。背番号23がピッチで異彩を放ち、見る者を釘付けにするところを我々は心から待ち望んでいる。
文=元川悦子
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By 元川悦子


