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着実に進化する上田綺世…常勝軍団・鹿島でのブレイクは日本代表の希望に

鹿島アントラーズに所属するFW上田綺世 [写真]=KASHIMA ANTLERS

「上田(綺世)君とエヴェラウドの対策は練ってはいたんですけど、予想以上に上田君のオフ・ザ・ボールの動きがうまかったし、カウンターになってしまった。やはり上田君を褒めたいと思います」

 清水エスパルスの平岡宏晃監督が脱帽した通り、鹿島アントラーズは22歳のストライカー・上田綺世の2ゴールで12日の清水戦に勝利し、5位ながら勝ち点を58まで伸ばした。19日の最終節は同59の4位・セレッソ大阪との直接対決。これに勝って、2位・ガンバ大阪、3位・名古屋グランパスが取りこぼせば、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権が転がり込む可能性も見えてきた。

「鹿島は常勝軍団。サポーターのみなさんは優勝を後押しするために来ていると思いますけど、今年は優勝を逃してしまった。それでも1つでも上の順位を目指しているところを後押ししてくれていると思うので、僕らもそれに応えたい。他力ではありますけど、サポーターと一緒にACLにしがみついていきたいです」と背番号36をつける若き点取屋は語気を強めた。

 2019年7月に法政大学サッカー部を退部して、学籍を残しながらプロ入りを決断した上田。直前に行われた2019年6月のコパアメリカで何度も決定機を外し、「活躍できなかった自分がただ情けなかった」と力不足を痛感。前々から考えていたJリーグ入りの時期を早め、プロの世界に飛び込んだのだ。しかしながら、ファーストステップとなった昨季半年間は13試合出場4ゴール。チームも3位と必ずしも順風満帆とはいかなかった。

「鹿島が『勝てばJ1優勝』という状況の中でタイトルを逃したのは、間違いなく得点数と得点力不足が関わっている。仮に毎試合3点取れていたら絶対優勝できていたし、結果的に点が取れなかったから勝てなかったわけで。そういうところで点の取れる選手に成長したいなと僕は強く思っています」

 彼は今年2月のJリーグキックオフカンファレンスでこう話していた。

 この直後にコロナ禍に見舞われ、リーグは4カ月もの中断を強いられた。けれども、ザーゴ新体制の下、ケガで十分な練習ができなかった上田にしてみれば、新たな準備期間が与えられる形となった。実際、リーグ再開後は7月18日の横浜F・マリノス戦で2ゴールを叩き出すなど、東京五輪世代のエースFWは着実にフィットしつつあった。だが、そこから再び負傷に悩まされ、7月末~8月はほぼ実戦から遠ざかってしまう。本人も大いなるストレスを抱えていたはずだが、そんなことでメゲないのが上田綺世の強さ。「今、必要なのは成功体験をつかむこと」と自らに言い聞かせて練習を積み重ね、少しずつゴール前の感覚を取り戻していった。

 それが10月以降のブレイクにつながる。10月21日のヴィッセル神戸戦で今季4点目を挙げると、11月には4ゴールの固め取り。そして今回の清水戦の2発で、ついに得点数を2ケタに乗せたのだ。

 1点目は「CKからのこぼれ球でしたし、運がよかったなというだけのゴールです」と謙遜したが、戦術眼とアイデアが光ったのが2点目。ファン・アラーノのスルーパスに抜け出した瞬間、複数の選択肢を持ちながら、GK大久保拓生を巧みにかわして、無人のゴールに右足でボールを蹴り込んだのだ。

「シュートを右足でファーに巻く、ループ、タイミングをずらしてトゥキックとかいろいろ考えましたけど、GKが出ていたので、逆にテンポを変えてかわしにいくっていう選択肢が自分の中でポンと浮かんだ。僕はシュートを打つ時は選択肢を多く持つことが余裕につながると考えている。数ある選択肢の中で最善な解決策を選ぶことを意識しています」

 この落ち着きと余裕はコパアメリカを戦っていた時には感じられなかったもの。鹿島での1年半で数々の紆余曲折を経て、上田綺世は心身ともに大きく成長したといっていい。

 ザーゴ監督も改めて太鼓判を押した。

「彼の決定力に関しては前々から言っていた。ケガがなければエヴェラウドと同じ得点数(12日現在で17点)を稼げたと思うし、チームもプラスの結果を残すことができたはず。上田はプロフェッショナルとしてどうあるべきかをつねに考え、グラウンド内外の取り組み方を改善している。その結果、練習・試合のパフォーマンスが非常に高くなっている。あとはこれを継続していくこと。今の状態を保てれば、A代表に呼ばれる日も近くなってくるだろう」

 目覚ましい進化を誰よりも喜んでいるのが日本代表の森保一監督ではないか。21~26日に千葉・幕張で行われる東京五輪代表候補合宿で久しぶりに手元に呼ぶのを心待ちにしているに違いない。10・11月のA代表欧州4試合ではFW陣の決定力不足が問題視されただけに、上田のブレイクは大きな希望になり得る。

文=元川悦子

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