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大分時代から現在まで…森重真人と清武弘嗣の思い「当たり前のことじゃない」

 今年2月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大により、Jリーグは第1節をもって中断した。一向に再開の目処が立たないなか、FC東京森重真人セレッソ大阪清武弘嗣は、様々な思いを巡らせていたという。

 サッカーをしている理由やSNSが持つ力、そして社会貢献活動について、現在は敵同士でも、“先輩と後輩”としてお互いを認め合う二人が、その思いを語る。

取材・文=近藤七華
写真=FC東京セレッソ大阪

スタジアムのロッカーの匂いが懐かしい

[写真]=©F.C.TOKYO


――お二人は大分トリニータで2008年から2009年の間ともにプレーしています。当時のお互いの印象について教えてください。
森重 キヨはとにかくうまかった。ボールの扱い方やアイデア、センスといったところは群を抜いていました。
清武 もりくんは、もともとトリニータにはボランチで入ったのですよね?
森重 そう。でも当時のボランチはブラジルの2選手(エジミウソン、トゥーリオ)で、ノーチャンスだったから。
清武 それでセンターバックにコンバートされて。もりくんは当時からボールを扱う技術が高かったですね。今でもいやらしいところにボールを出してきます。あとは体も強かったし……ずっと言っていますが、もりくんは日本で一番うまいDFだと思っています。まあ、顔は微妙ですけれどね(笑)。
森重 お互いさまだよ(笑)。

――プライベートではどんな関係でしたか?
森重 プライベートではそんなにつながりがなかったかも。
清武 大分を出てからのほうが多いですよね。当時、もりくんは一人暮らしで、僕は寮だったので。それに、2個上の先輩はちょっと怖いイメージがありました。

――では、大分時代にお二人の間で印象に残っている試合は?
清武 やっぱりルヴァンカップ(2008Jリーグヤマザキナビスコカップ)決勝かな。
森重 僕も覚えているのはその試合ですね。クラブにとっても、個人的にも初タイトルでしたし。
清武 あの年のもりくんは何点かゴールも決めていましたよね。僕は2年しかトリニータにいなかったし次の年がボロボロだったので、試合というよりも1年目のあの強さと堅さは印象的です。

――大分はお二人にとってプロデビューしたクラブでもありますし、清武選手は地元でもあるので大事な場所だと思います。
清武 今でもトリニータと試合をするときはすごくうれしいです。もりくんと大分にいた時代の選手でまだ在籍しているのはコテ(小手川宏基)くらいですけど、トリニータには特別な思いがある。自分を育ててもらったクラブとJ1の舞台で戦えるのは幸せです。
森重 アウェイで大分に行くと、スタジアムのロッカーの匂いが懐かしいです。ユニフォームのエンブレムを見ても昔を思い出します。

――森重選手の地元は広島ですが、サンフレッチェ広島と戦うときと大分と戦うときはどこか似たような感情を抱きますか?
森重 そうですね。広島で試合をするときは地元の友達や両親が見に来てくれますし、高校生のときにエディオンスタジアム広島で何度かプレーしたこともあったので思い出の場所です。だから僕には故郷が2つあるような感覚ですね。

――4 年前になりますが、「大分会」と称して金崎夢生選手、梅崎司選手、西川周作選手、家長昭博選手と集まった写真をSNSに投稿していましたね。誰から声をかけたんですか?
森重 あれはキヨだよね。
清武 ケガをしてJISS(国立スポーツ科学センター)に行っていたときで、当時、大分時代のメンバーが関東のクラブに多くいたので連絡しました。ご飯を食べて、男だけでカフェに行って。めちゃくちゃいい時間でしたね。ただ、「大分会」はあれ一回きりです(笑)。しゅうちゃん(西川)は試合で会ったときに「またやろうよ!」って言いますが、連絡しても全然返してくれませんよ(笑)。
森重 またやりたいよね。

[写真]=©CEREZO OSAKA

――大分から離れるとお二人は相手同士になるわけですが、当時と比べてお互いのプレーに変化はありましたか?
森重 キヨは海外でプレーしていたので、日本代表で一緒に練習をしたり、リーグで戦うときに久々に間近で見て、やはり別格だなと。イメージが変わったというよりは、答え合わせができた感じでしたね。
清武 もりくんはある意味変わってないですね。僕は今でもいいときと悪いときに波がありますが、もりくんは昔から淡々と自分の役割をこなすんです。

――最近だと、Jリーグで9月23日に戦ったばかりですね。
清武 あの試合も、前半に一対一で仕掛けて「うわ、もりくんや」って思いましたよ。「中に切り込むか股を抜こうか。いや、でもバレてるから縦しかない」と考えていたら、まんまとそこに誘われてて(笑)。
森重 自分の軸足に引っかかってコケたよね(笑)。あれはワンタッチ目がスーパーだったからノーチャンスだと思ったけれど、キヨのことだからシュートと見せかけて何かしてくるだろうなと。昔から体の向きとか目線で相手を惑わして、裏をつくプレーが得意でした。大分時代はいつも、練習中にキヨの頭の中を探りながら駆け引きするのがすごく楽しかったです。
清武 もりくんは相手の癖をすごく読んでくるから、難しい相手です。
森重 でもキヨは、昔と比べて性格が図太くなりました。昔はもっとなよなよしていましたから(笑)。みんなそうだと思いますが、いろんな経験を積んで自信をつけれれば、その自信がプレーにも表れるようになります。
清武 確かに、自分でもそう感じることがあります。というのも、最近まで試合で負けたときはSNSの更新をしていなかったのですよ。でも、もりくんって勝っても負けても絶対にSNSを投稿しています。すぐに気持ちを切り替えられるというか、一喜一憂しないところはもりくんを見習っています。もちろん負けたら悔しいですけれど、それでも応援してくれる方はたくさんいるので。

――数ある経験の中でも「自信」に影響してくる部分はどんなところですか?
清武 今はキャプテンであることがすごく大きいです。試合に負けて落ち込んでいても、チームを一番に引っ張らないといけない立場なので。それと、ケガは少なからず自信に影響してきます。僕はここ3年ケガに悩まされていて、チームを引っ張るどころか離脱してしまっていたので、そういう意味でも一喜一憂していられないです。
森重 結局はピッチに立って、プレーする姿を見せることで説得力が出てくる。選手にとっては、やはりプレーすることが一番大事です。キャプテンならなおさらだと思います。

――若い頃はどのような心持ちでプレーしていましたか?
森重 若いときは「根拠のない自信」というか、怖いもの知らずという感じでした。僕は闘莉王さん(田中マルクス闘莉王)にもケンカを売りにいっていたくらいですからね(笑)。そういうことも含め、経験を積むことによって今は自信に裏付けが取れてきたと思います。
清武 「根拠のない自信」は海外でも感じました。しかも、彼らはそれを裏付けようともしない。ある意味スポーツ選手には大事なことだと思います。

セレッソの一員として大事なことだと思った

[写真]=©CEREZO OSAKA


――先ほども少し話に触れましたが、新型コロナウイルスの影響で、SNSでメッセージを発信する人は急激に増えたと思います。お二人はどう捉えていますか?
森重 やはり新型コロナウイルスは一つのきっかけだったかな。僕はもともとそんなにSNSを使ってこなかったから、サッカーがなくなって、自分を表現する場所がなくなったときにSNSの必要性をすごく感じました。

――清武選手が森重選手を見習っていたように、森重選手が刺激を受けた人はいますか?
森重 自粛期間中は家でトレーニングをしなければいけなかったので、アスリート以外の方も含めて、いろんな方のSNSやYouTubeで動画を見ながら筋トレをやっていました。なかやまきんに君にはかなり助けられました(笑)。
清武 それ分かる!(笑)。リーグの再開時期が決まっていなかった頃は、どうやってモチベーションを上げればいいか分からなくなってしまって。
森重 一人だとなかなか続かないので、誰かと一緒に頑張ることでモチベーションにつながるし、勇気をもらえましたね。そういう体験をしたからこそ、「自分の投稿で誰かに勇気や元気を与えられるかもしれない」と考えるようになりました。サッカー選手なら、ほかの人たちよりも多くの人に伝えられる可能性もあるわけですからね。

――9月に行われた大分戦のあとには、同じ広島出身で現在は大分でプレーする渡大生選手と、「#実家が隣」というハッシュタグを付けてツーショット写真を投稿していましたね。そういった試合の結果以外のことを投稿することでも、純粋に喜んでくれるファンの方たちはたくさんいると思います。
森重 そうですね。知らなかった方にも、「あの二人ってそういう関係だったのか」と知ってもらえるきっかけになって、次の試合からは見方を変えてくれたりするとうれしいです。

――SNSでメッセージを発信すること以外にも、清武選手は4月に「大阪府新型コロナウイルス助け合い基金」に多額の寄付をしたり、7月には九州豪雨支援プロジェクト「アスリートと共に九州を救おう!令和2年7月豪雨 緊急支援」の中心となってクラウドファンディングを始めたりしています。森重選手はこれまでにも災害復興活動を行ったり、広島の福祉施設にマスクを寄付してきました。そういった活動を通して感じたことは?
森重 キヨは大阪の吉村洋文知事とも会っていたし、あの活動はすごいなって思いました。僕たちサッカー選手は、それぞれの地域に迎え入れてもらっている存在でもあるので、プレー以外にも何かしらの形で恩返しをしたり、盛り上げる必要がある。そういう意味では、キヨの行動はサッカー選手だけじゃなく、プロスポーツ選手が見習うべき姿だと思います。

――清武選手は、もともとこういった活動をためらっていたそうですね。
清武 はい。「偽善者」として見られてしまうのが嫌でした。やるなら現地に行くべきだと思っていたのも理由の一つです。寄付とかそういうのじゃなくて、どんな状況なのかをちゃんと目で見て、本当に必要なことをするべきだって。でも、もりくんが言ったように自分は大阪に置いてもらっている立場ですし、セレッソの一員として大事なことだと思ったのでやらせてもらいました。もともと公表するつもりはなかっですけれど、今回、大阪府への寄付に対して吉村知事がコメントしてくれたことで多くの方から「勇気をもらいました」という言葉をいただいて、やって良かったと思いました。

――それこそSNSでの発信が増えたことで、自分の行動が人に伝わると同時にリアクションを感じやすくなった部分はあると思います。
清武 そうですね。九州豪雨に関しては、巻(誠一郎)さんがインスタグラムに投稿している写真で九州の現状を見たり、熊本へ支援に行った父親から話を聞いたりすると、もっとできることがあるというのは感じました。今は試合が再開したこともあってこういう形でしか協力できないけど、本当は現地に行って助けたいという思いはサッカー選手みんなが持っていると思うので、そこは少しでも多くの方に知ってもらいたいです。

何よりも継続が大事

[写真]=©F.C.TOKYO


――リーグは再開しましたが、無観客試合から始まり、現在も観客数が制限されています。この状況から、ファンの存在をどう感じていますか?
森重 自分たちがモチベーションを高く維持したり、サッカーをする楽しさを感じられるのは、ファン・サポーターの方に直に見てもらったときに初めて得られるものだと感じました。無観客で試合をしているときはもちろん、誰もいない練習場で練習しているときにも、「何のためにサッカーをしているのだろう」という気持ちになるんです。
清武 無観客のときは非公開の練習試合みたいな感覚でした。だから少しずつ観客が増えていることはすごくうれしいです。そういえば、この前の東京戦で、僕らセレッソの選手たちがピッチに入ったときに東京のファン・サポーターが拍手してくれたのですよ。「え、俺らに対してじゃないよな?」って話していましたけど、まだFC東京の選手は出てきていなくて。もしかしたら、新型コロナウイルスを通じてサポーターたちの考え方も変わったのかもしれません。そのときは僕らも拍手で感謝を示しました。サポーターがスタジアムに見に来てくれるのは当たり前のことじゃないですよね。

――新型コロナウイルスによる中断期間や無観客試合などを経て、「サッカー選手が果たすべき役割」をどのように感じましたか?
森重 そうですね……ファン・サポーターの存在あっての自分たちだと実感した選手は多いと思います。僕も正直、こうなって初めて気づきました。でも、この期間にいろんな思いが募り、改めて感じたのは、ピッチの上でいいプレーを見せるのが一番だということです。そのうえで、社会貢献活動やファン・サポーターのためにプレー以外の行動ができればもっといいかなと思います。

――森重選手はスポーツギフティングサービス『Unlim』にも参加していますよね。
森重 これまでにも子どもたちや被災地に対して個人的に社会貢献活動を行ってきたなかで『Unlim』の存在を知りました。「自分はこういう考えのもとで活動をしています」というのを明確に示すことができて、それに共感してもらえる。今までにありそうでなかったサービスだと思います。同じ思いを持ったアスリートはたくさんいると思いますし、これからはもっと多くの方にこのサービスを知ってもらいたいですね。
清武 僕も何か動ければいいんですけどね。きっかけは待つだけじゃダメですけど、本当に何からすればいいのかイメージがつかないというか。
森重 でも、今回いろいろと行動したことで、今までネガティブなイメージだった社会貢献活動が、意外と共感を得られることなんだなって気づけたと思うから。
清武 そうですね。それはいい発見でした。ダイレクトメッセージでも「すごく力になりました」とか、そういう言葉をもらえることも今まで以上に増えたので。だから、これからも継続していけたらいいなと思います。

――森重選手から清武選手にアドバイスをするとしたら?
森重 本当になんでもいいと思うんですよね。考えすぎちゃうと行動に移せなくなるし。僕は毎年、オフになったら九州でチャリティサッカースクールを開催しているんですけれど、それも別にいろいろ考えたうえで始めたわけじゃなくて、まずはやってみようと。やりながら軌道修正していくのは全然いいことだと思います。何よりも継続が大事なんです。キヨは特に知名度も高いし、キヨが行動することで喜んでくれる人は絶対に多い。それはサッカー選手の特権でもあるし、「あの人はあんなにやってるのに、自分はこれだけしかできない」なんていうのは気にする必要はないよ。正解なんてないからね。
清武 はい。かしこまりました!(笑)。


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