浦和戦で先制点を記録した豊川雄太 [写真]=J.LEAGUE
8~9月のJ1リーグで6連勝を達成し、川崎フロンターレ追走の一番手と目されていたセレッソ大阪。しかし、9月19日の鹿島アントラーズ戦から1勝4敗と停滞。10月3日の直接対決にも敗れ、首位の背中が遠のいた。
それでも10月14日の湘南ベルマーレ戦、17日の横浜F・マリノス戦に連勝。首の皮一枚つながった状態で24日の浦和レッズとの大一番を迎えた。浦和とは今季、YBCルヴァンカップとリーグ戦で2度対戦して連勝。今回も自信を持って敵地・埼玉スタジアムに乗り込んだ。
そんな中、満を持してスタメン起用された背番号32・豊川雄太が幸先のいい先制点を挙げる。前半28分、相手守護神・西川周作のフィードを木本恭生が競ったボールに鋭く反応。眼前にいた岩波拓也をぶっちぎり、さらに槙野智章も置き去りにして右足を振り抜き、待望のゴールを手に入れたのだ。
「うまくセカンドボールを狙っていたんですけど、前に2センターバックがいるのは分かっていた。1人抜けた後にもう1人いる。冷静にどっちを狙うか考えて、かわしてシュートを決めました」と本人もしてやったりの表情を浮かべた。
実は豊川は8月5日のルヴァン・浦和戦でも決勝点を叩き出しており、“得意意識”が少なからずあったのかもしれない。だが、その試合でヒザを痛めて長期離脱。復帰まで1カ月半以上を費やすことになった。
「サッカー人生でこんなに休んだことはなかったし、ここまで長引くとも思わなかった。初めての箇所だったんで慎重に治しました」と彼は苦しい時間を乗り越えてピッチに戻ってきた。そして復帰後は「相手の脅威になりたい」という意欲を前面に押し出し、10月だけで3得点。決定力に課題を抱えるC大阪の重要なピースになりつつある。
鹿島アントラーズ、ファジアーノ岡山時代からスピードと打開力のあるアタッカーとして名を馳せた豊川だが、得点力が大きく向上したのは2018年1月から足掛け3シーズン過ごしたベルギー時代だ。KASオイペンでは最初のシーズンのリーグ最終戦、ロイヤル・ムスクロン戦でハットトリックを達成。2部降格危機に瀕していたチームを1部残留へ導くなど、勝負強さに磨きをかけた。
「海外に行って一番変わったことは、ゴールに対する意識ですね。ベルギーにいた時の監督からゴールにこだわるように強く言われてましたから。鹿島時代もそうですけど、日本ではサイドハーフをやることが多くて、ストライカーのポジションはやっていなかったけど、向こうへ行って1トップで使われ始めてから考えが変わった。『何でもいいからとにかくゴール』『試合で調子が悪くてもとにかく点を取る』という気持ちが強まったんです」
その意欲は今回の浦和戦でも確かに見て取れた。彼の鋭い動き出しや背後への飛び出し、虎視眈々とシュートを打ちに行く姿勢は大いに光った。しかしながら、C大阪は豊川の一撃によるリードを守れなかった。先制弾からわずか6分後に興梠慎三にPKを決められ、前半終了間際には山中亮輔の放ったミドルシュートが瀬古歩夢に当たって入るという不運な形から逆転を許した。後半にも交代のスキを突かれてマルティノスに3点目を献上。手痛い黒星で3位に陥落し、優勝争いから大きく後退する形になってしまった。
こうなると、C大阪の現実的目標は天皇杯とアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を両取りできる2位ということになる。最悪でも3位はキープしてACL出場権は死守したいところだ。そのためにも、ズルズル行くわけにはいかない。残り9試合での復調は必要不可欠だ。自慢の堅守を立て直すのと同時に、前々からの課題である得点力の部分を今一度、テコ入れしていく必要があるだろう。
とはいえ、今季攻撃陣のキーマンである坂元達裕が徹底マークに遭うことが増え、右を打開して最前線のブルーノ・メンデスや奥埜博亮、左の清武弘嗣が仕留めるという形が出にくくなってきた。そこは頭の痛い点だ。
「あれだけタツが活躍すれば、相手が消そうとするのも当たり前。タツを生かせるような形をチームとしてもっと作れればいいけど、そこはこれからの課題だと思います」と木本恭生も神妙な面持ちで語っていた。
豊川はその解決策を導き出せる存在だ。前半23分にレアンドロ・デサバトのタテパスを引き出し、GK西川と1対1になったシーンに象徴される通り、彼は一瞬のスピードでゴールに直結する動きができる。だからこそ、ロティーナ監督も先発起用に踏み切ったのだろう。そうやって前線が活性化されれば、坂元も右サイドを打開しやすくなるし、清武も持ち前のパスセンスを発揮する機会が増えるはず。この男がラスト9戦のキーマンになる可能性は非常に大きいのではないか。
「自分のゴールが勝利につながらなければ意味がない。2点、3点と自分がもっと点を取ってチームを勝たせられ存在になりたいと強く感じました。そのためにもシュートを決め切ることが大前提。シュート数を増やすこと、出し手に要求してコンビネーションを高めることも必要です。自分はまだ下手くそなんで、もっとレベルアップしていきたい」と背番号32は語気を強めた。
熊本時代から共闘してきた同期・植田直通(サークル・ブルージュ)が10月13日のコートジボワール戦で値千金の決勝弾を奪ったこともいい刺激にして、26歳のアタッカーはC大阪の救世主となるべく邁進していく。
文=元川悦子
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By 元川悦子



