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「緊張していた(笑)でも、等々力に神様がいた」中村憲剛、復帰戦で見せた“バンディエラの所以”

[写真]=金田慎平

「やはり、“持ってる”選手ですね」――明治安田生命J1リーグ第13節で清水エスパルスに勝利した川崎フロンターレの鬼木達監督は、試合後の会見でしみじみと語った。この日、ケガからの復帰を果たしたMF中村憲剛に向けた言葉だ。

「ファーストプレーでシュートを打って、しっかりと10カ月間準備していた物をすぐに出せるのはさすがです。そして何より、チームが“憲剛を出せる状況”を作り上げたのが素晴らしい。やっぱり“持ってる”選手ですね」

●復帰戦で見せた“変わらぬプレー”…緊張を振り払い、冷静に得点

[写真]=金田慎平


 観客動員数の上限がいまだに5000人に設定されているなか、一瞬等々力陸上競技場が満員になったかのような錯覚に陥る瞬間があった。中村憲剛の登場だ。77分、新星・旗手怜央との交代で約10カ月ぶりにピッチへ足を踏み入れると、2分後のファーストプレーでペナルティエリア手前から強烈なシュートを放つ。ここは惜しくも味方の小林悠に当たってしまったが、改めて背番号14の偉大さを思い出させるには十分の一撃だった。

 試合後の会見に対応した中村はそのシーンについて問われると、「もしかしたら、緊張していたのかもしれないです(笑)」と、復帰戦で感じた心境を語った。

「試合前のボール回しから、なぜかすごく疲れて。『あれ、俺もしかしたら緊張してる?』と(笑)。でも、入ってすぐに思い切りシュートを打って吹っ切れました。『シュートを打とう』と思ってピッチに入ったわけじゃないですが、良い落としが来たんでね。小林に当たらなければ入ってましたよ!(笑)」

 そして85分、役者らしく鮮やかなループシュートで復帰を自ら祝うゴールを奪取。その得点の裏には、前半から何度もチャンスを作ったこの日のスターティングメンバーたちの存在があったという。

「(齋藤)学とか、今日スタメンで出た選手たちが渾身のシュートを相手のDFやGKに当てていたんでね(笑)。ボールが僕のところに来た瞬間、『相手に当たらないようにするにはループだな』と判断しました」

 齋藤学宮代大聖らが素晴らしいプレーを見せながらもあと一歩得点に届かなかったなか、中村はさすがの観察眼と落ち着きを披露した。今後、彼がピッチ上で見せるプレーが模範となり、川崎Fにさらなる好循環が生まれそうだ。

●前向きに取り組み続けた10カ月間…そのなかで訪れた苦しみとは?

ケガをした左ヒザに語りかける中村憲剛 [写真]=金田慎平


 試合直後のフラッシュインタビューでは「リハビリ期間中は自分より周りが落ち込んでいた」と語った中村。そんななかでも、大きな苦しみを感じた時期があった。

「3月ごろにヒザに負荷がかかりすぎてしまって、痛みが出てしまったんです。できるメニューがどんどん限られていくなか、ちょうど緊急事態宣言の発令も重なってしまって。自分のヒザも、社会全体も先行きが見えなくて、とても辛かったですね。とにかく、家族やクラブに助けられながら、1日1日積み重ねるしかなかった。それを経て今日ピッチに帰ってきて、10カ月間の感謝が走馬灯のように駆け巡った1試合になりました」

 試合終了のホイッスルがなった直後、中村は自身の左ヒザに手をやり、何事か語りかけた。偉大な選手が、またひとつ大きな試練を乗り越えたことを感じさせる瞬間だった。

●再び大勝、バンディエラの復帰…今後の川崎Fに中村がもたらすものとは

[写真]=金田慎平


 勝ち星に見放された2試合を経て、再び強さを見せつけた川崎F。中村は今後の展望を以下のように語る。

「復帰はできましたが、まだ自分がレギュラー争いのテーブルに乗ることができるかはわからない。今日はたまたま、ずっと試合に出てきた人たちの疲労があって復帰させてもらうことができたと思っています。今日は、『復帰を待っていてくれた人たちに僕がサッカーをしている姿を見せたい』という想いだけでプレーしましたが、これをスタートにして、また積み重ねていきます」

「リハビリをして、ケガを直すことをゴールに設定していたら、今日復帰することはできていなかったと思う。僕は復帰してからを見据えていますから。ここからスタートです」

●「等々力には神様がいました」中村がサポーターに語った感謝

[写真]=金田慎平


 復帰戦を振り返る中村からは、本拠地・等々力陸上競技場と、そこに集まったサポーターに対して、ここには書き切れないほどの感謝の言葉も述べられた。

「この日のために、全てを捧げてやってきました。まだ観客数の上限があったり、声援が出せなかったりという状況がありますが、等々力の温かさは十分に感じましたし、このお客さんたちの前で復帰することを僕自身が一番望んでいました」

 報道陣から「鬼木監督が『持ってる男だ』と言っていましたが?」という声が飛ぶと、はにかみながら「いやあ……等々力には神様がいましたね(笑)。復帰戦が等々力じゃなかったら、こうはなっていなかったと思います」と、ホームの偉大さをしみじみと語った。

 会見の終わりには、「あと2時間くらいは話したいですが、また今度!」と笑顔を見せた中村。本格的な復帰を果たしたのちには、リハビリ中の積もる話を聞かせてくれる機会が訪れるかもしれない。


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