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タイの国民的スターが集った一戦に、日本随一のサッカーどころ・静岡が熱狂した

2020.08.10

両ゴール裏に設置されたLED看板には、タイ語による選手紹介が映し出された [写真]=Jリーグ

 今シーズン、タイ代表FWティーラシン・デーンダーを獲得した清水エスパルスは、8日に行われた明治安田生命J1リーグ第9節・北海道コンサドーレ札幌戦を“タイ・ダービー”と銘打ち、タイに向けた様々なプロモーションを実施した。

タイ料理店にはサポーターが長蛇の列を成した [写真]=Jリーグ


“タイの英雄”ティーラシンを擁する清水に対し、札幌には“タイのリオネル・メッシ”ことチャナティップと、タイ代表の守護神カウィンが在籍している。試合前から彼らへの注目度は高く、この日の会場、IAIスタジアム日本平に出店したタイ料理店にはサポーターが長蛇の列を成し、ガパオライスなどの本格的なタイ料理を堪能してキックオフの時を待ち望んでいた。

“タイのメッシ”ことチャナティップは先発に名を連ねた [写真]=Jリーグ

 ホームの清水は、背面の選手名をタイ語表記にした特別ユニフォームを全選手が着用。両ゴール裏に設置されたLED看板には、タイ語による選手紹介が映し出された。それらの模様は試合映像とともにタイ国内でもネット配信および地上波TVにて生中継され、いつもとは少し異なる緊張感が漂うなかで試合は始まった。

 タイ代表3人のうち、先発メンバーに名を連ねたのは札幌のチャナティップ。直近2試合のリーグ戦では2トップの一角での出場が続いていたが、日本代表FW鈴木武蔵がケガから復帰したことに伴い、従来の主戦場である2シャドーの1枚として起用された。一方、3日前のYBCルヴァンカップに先発出場していたティーラシン(清水)とカウィン(札幌)はそれぞれサブメンバーに入り、出番を待った。

タイ代表の守護神カウィンは札幌に所属する [写真]=Jリーグ

 スタイルは異なるものの、ポゼッション率を高く保った攻撃的サッカーを志向するチーム同士の対戦とあって、試合開始から両チームともに積極的な姿勢を見せた。チャナティップが持ち味を発揮したのは17分、小柄な身体でも相手DFに当たり負けせずにボールを奪い取ると、すぐさまドリブルで前進し、左前方の鈴木へパス。しかし、鈴木のシュートはGKに防がれ、惜しくも得点とはならなかった。34分には、札幌のスローインからセンターバックの進藤亮佑が右サイドで相手選手を引きつけながら持ち運び、中央にぽっかりと空いたスペースに位置取ったチャナティップへ。迷わず左足を振り抜いたが、力んでしまったのかシュートは枠の上へ外れた。

 前半のボール支配率は清水が52%、札幌が48%と拮抗しており、札幌にとっては押し込まれる時間帯もあった。最も警戒すべきは、Jリーグベストイレブン受賞歴を持つ清水の右サイドバック・エウシーニョの攻め上がりだったが、チャナティップが対峙した場面では懸命に食らいつき、ゴール前への侵入を防いだ。

 前半終了間際に清水が金子翔太のPK弾で先制したものの、52分に札幌の鈴木が強烈な直接FK弾を突き刺して1-1。互いに一歩も引かず、球際での攻防や攻守の切り替えの早さで執念を見せるなか、63分に札幌の田中駿汰が退場となったことで、ゲームはよりオープンな展開となって進んでいった。

“タイの英雄”ティーラシンは83分に投入された  [写真]=Jリーグ

 すると83分、清水がいよいよ“切り札”としてティーラシンを投入。この瞬間、勝ち越しを願う清水サポーターからは一段と大きな拍手が送られた。ティーラシンの“高さ”という武器を前線に加えた清水は直後の85分、ヘナト・アウグストの弾丸ミドルが決まって2-1とついに勝ち越しに成功。さらに、残り時間が少ないなかでも攻め手を緩めず、ティーラシンのポストプレーからチャンスをつくりだす。90+3分、中村慶太からの縦パスをティーラシンが足元で収め、右サイドへ展開。エウシーニョを経由し、最後はカルリーニョス・ジュニオがペナルティエリア内で落ち着いてネットを揺らしてダメ押しの3点目を奪った。試合はこのままタイムアップ。白熱の“タイ・ダービー”は、ティーラシン投入で流れを引き寄せ、短い時間で勝負をモノにした清水に軍配が上がった。

 清水のピーター・クラモフスキー監督は、試合前日の会見で今節でのティーラシンの起用について問われた際、「タブンネ(多分ね)」と日本語を使い、意味あり気に言及していた。いざ蓋を開けてみると、指揮官が交代カードを切ったのは試合終盤の勝負どころ。清水に加入してからの約半年間で、ティーラシンは少しずつ信頼を積み上げている。また、試合後にはチームメイトとともに喜びの輪のなかで笑顔を見せ、コミュニケーションも順調に取れているようだ。

背面の選手名はタイ語表記されていた  [写真]=Jリーグ

 一方、試合終了直後は唇を噛み締めて悔しさをあらわにしていた札幌のチャナティップだが、ある行動が印象的だった。彼にとって清水は、タイ・プレミアリーグのBECテロ・サーサナ(現ポリス・テロFC)所属時代に練習参加した縁のあるクラブ。今でも当時の恩を忘れておらず、試合後には清水のスタッフのもとへ駆け寄って律儀に挨拶を交わし、人柄の良さを窺わせた。

 なお、今回の試合では、新型コロナウイルス感染予防策のためにリーグ中断明けから導入されているリモート応援システム『リモートチアラー』を活用し、タイ国内からの声援もスタジアムに設置されたスピーカーを通して送り届けられた。清水は今月19日にタイ代表DFティーラトンが所属する横浜F・マリノスと対戦予定で、同試合に向けても同様のプロモーションを企画している。


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