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【サッカー×バスケ】若手がチームに勢いをもたらす。FC東京・紺野×A東京・小酒部対談

2020.07.17

東京を本拠地とするチームの期待の若手同士の対談が実現[写真]=FC東京、アルバルク東京

 サッカーとバスケットボール。東京には、両方の競技におけるトップレベルの強豪クラブがある。JリーグのFC東京、Bリーグのアルバルク東京だ。

 この両クラブに協力を仰ぎ、『サッカーキング』と『バスケトッボールキング』が共同インタビューを企画。FC東京紺野和也、アルバルク東京の小酒部泰暉にオンラインで語り合ってもらった。ともにプロ1年目の“期待の若手”同士の、前向きでフレッシュな言葉をお届けする。

インタビュー・文=坂本 聡(サッカーキング編集部)、峯嵜俊太郎(バスケットボールキング編集部)

■今までは機会がなかったので、一度試合を観てみたい

──オンラインの取材は慣れましたか?
紺野 取材はあまりないですけれど、オンラインで話すことは慣れました。外出自粛期間はチームミーティングもオンラインでしたから。

小酒部 取材はだんだん慣れてきたんですけど、もともとしゃべるのが得意じゃないので……(笑)。

──今回はサッカーのFC東京とバスケットボールのアルバルク東京、競技は違いますが同じ首都のクラブから期待の若手選手を一人選んで対談してもらう、という企画です。お互い初対面なんですよね? 名前は知っていました?
紺野 僕はバスケのことはあまりわからなくて、知らなかったです。

小酒部 自分もわからなかったです。

──読者のなかにも、まだ二人をよく知らない人がいるかもしれません。まずお互いに自己紹介してもらいましょうか。
小酒部 バスケは5人でやるスポーツで、ガードとフォワードとセンターというポジションがあって……。

──いや、バスケの説明は大丈夫です(笑)。どんな特長があるプレーヤーですか?

小酒部 自分はいわゆる「2番」(シューティングガード)の選手で、ボールを運ぶガードの選手を助けたり、シュートを打ったりという役割です。得意なプレーは3ポイント、ジャンプシュート、あとはドリブルでゴール下に入っていく、ドライブも得意ですね。中も外もできるプレーヤーだと思います。

紺野 ドリブルが得意という点では僕もそうですね。完全にドリブラーです。ポジションは中盤のサイドで、ボールをもらったらサイドからゴールに向かって、ドリブルでどんどん切り込んでいくタイプです。競技は違いますが、プレースタイルは近いのかもしれません。小酒部選手はサッカーを観ますか?

小酒部 日本代表の試合はテレビで観ます。サッカーはバスケのように点が入るスポーツではないですけど、ゴールシーンやゴールにつながるアシストは観ていておもしろいですね。海外のサッカーも観ます。知っている選手はネイマールくらいですけど。

紺野 バスケは点がたくさん入るし、みんな体が大きいから迫力がすごいですよね。ただ、僕も生で試合を観たことはなくて……。

──ではこの対談をきっかけに、ぜひお互いの試合を観に行ってください。新型コロナウイルスが収まってからでも。

紺野 そうですね。今までは機会がなかったので、一度試合を観てみたいと思います。
小酒部 ぜひよろしくお願いします!

■自分がどれだけできるかを試してみたかった

2019-20シーズンは特別指定選手として8試合に出場した小酒部[写真]アルバルク東京

──二人ともプロ1年目ですが、小酒部選手はまだ神奈川大の4年生なんですよね。
小酒部 そうです。いま卒論を書いているところです。

──アルバルク東京でプレーしてみて、アマチュア時代と何が一番違いますか?
小酒部 まず環境ですね。トレーニングの環境や雰囲気が大学バスケとは全く違いました。一つのミスが命取りになる、という意識で練習していて、これがBリーグを連覇しているチームなんだと感じました(2017-18、2018-19シーズン)。最初はとまどいもあったんですが、練習を重ねていくうちに自分の得意なドライブやシュートが出せるようになってきたので、もっとレベルアップしていきたいと思います。

──プロの壁というのは感じましたか? それとも、ある程度イメージができていた?
小酒部 今年1月の千葉ジェッツ戦で初めてBリーグの舞台に立ったんですが、そのときは全く思いどおりにいかなかったですね。でも試合を重ねていくごとに手ごたえを感じてきました。まだ足りない部分はありますが、自信を持ってやればできると思っています。

──紺野選手は今年2月、AFCチャンピオンズリーグのパース・グローリー戦でデビューを果たしています。その時の心境はどうでしたか?
紺野 試合の途中からピッチに立ったのですが、実際にプレーしてみると、自分のドリブルはプロでも通用すると感じました。パース・グローリーはオーストラリアのチームで、すごく身長の大きい選手がそろっていて。そのなかでも自分の特長を出せたので自信になりました。

──二人とも、あまりプロの壁にぶつかっていないんですね。難しさは感じませんでした?
紺野 まだあまり細かいところまで分からないだけかもしれません(笑)。ただ、難しさよりは“楽しさ”を感じています。

小酒部 自分も楽しいです。プロのチームにはホームアリーナがあって、ブースターの数も本当に多くて。応援してくれる人たちの前でプレーするのは充実感があります。

紺野 ファン・サポーターの方の前でプレーすると、一つひとつのプレーに責任を感じます。レベルは高いですけれど、そういう環境でプレーできるのは楽しいです。

──FC東京は、コロナ禍がなければ平均して3万人以上のファン・サポーターが入るクラブです。
紺野 そこは大学サッカーとは比較にならないです。こんなにお客さんが入るのかって、最初は驚きました。90分間ずっと応援し続けてくれて、いいプレーには拍手してくれるので本当にありがたいです。

──FC東京とアルバルク東京はどちらもリーグ屈指の強豪クラブですよね。プロ入りを決意するとき、やはり強いチームに行きたいという気持ちがあったんですか?
小酒部 そうですね。選択肢はいくつかあったんですけど、自分を成長させる場所に行きたかった。アルバルク東京は王者なので、そこで自分がどれだけできるかを試してみたかったという気持ちはありました。

紺野 アルバルク東京はレベルが高い選手が多いですか?

小酒部 はい、すごい選手ばかりです(笑)。同じポジションにも田中大貴選手、引退された正中岳城選手といったすごい選手がいます。そういう選手にどうやったら追いつけるかは練習でも考えていますね。結構負けず嫌いなので。

紺野 FC東京も日本代表クラスの選手ばかりです。とくに守備に実績のある選手が何人もいるので、それがクラブを選ぶ決め手になりました。毎日の練習でレベルの高い選手とマッチアップしていれば、絶対に自分の成長につながると思ったので。

小酒部 実際はどうでしたか?

紺野 最初は手こずりましたが、最近は慣れてきて自分のプレーが通用するようになってきましたね。昨年からJFA・Jリーグ特別指定選手として練習していましたが、当時と比べたら確実に成長しているかなと思います。

■小柄なほうがむしろ有利だと思っている

得意のドリブルにおいて、小柄な体格が「むしろ有利」に働くと紺野は語る[写真]=FC東京

──東京は日本の首都で、中心地ですよね。「東京」と名前がつくチームの一員として意識することはありますか?
紺野 首都のチームが弱いというのはカッコ悪いと思います。日本を代表するチームでなければいけないと思うので、試合のときはプライドを持って臨むように意識しています。

小酒部 自分は「東京」というより、アルバルク東京というBリーグ王者の一員だという意識があります。バスケ界では誰でも知っているチームなので。

──今は寮生活ですか?
紺野 僕はチームの寮です。大学時代も寮に入っていましたが、大学の寮は狭かったし、場所も多摩の山奥だったので、虫がすごく出たのが思い出です(笑)。それに比べると今はかなり快適です!

小酒部 自分は一人暮らしです。大学のときは実家暮らしだったんですけど、プロ契約してから東京に引っ越して。最初は寂しかったし自炊も大変でしたけど、半年たってやっと慣れてきました。

紺野 自炊してるんですか?

小酒部 チーム練習のときはクラブでご飯を食べられるんですが、今は自粛中なので自炊しているんです。カルボナーラが好きなのでよく作ってます(笑)。

紺野 小酒部選手は、やはり量をたくさん食べるんですか?

小酒部 はい。ご飯はかなり食べます。

紺野 バスケット選手ってみんな身長が大きいじゃないですか。それはご飯をたくさん食べるからなんですか? それとも、たくさんジャンプをするから?

小酒部 どうなんですかね(笑)。

──小酒部選手はいつから背が高かったんですか?
小酒部 中学校3年生くらいで15センチ伸びて、そのときは175センチくらいでした。高校に入ってまた10センチくらい伸びて、卒業するときは185センチでした。

紺野 背を伸ばそうとして意識的に何かしてたのですか?

小酒部 中学生のときは小さいパックの牛乳を1日7本くらい飲んでました。あと、夜10時くらいに寝てました。今でも1日8時間は寝ます。

紺野 僕は寝るのが遅くて……。

──紺野選手はサッカー選手のなかでも小柄なほうですよね。体格的なハンデについてはどう思っていますか?
紺野 あまり気にしていないです。サッカーだと小柄なことはそこまで不利にならないので。さすがにヘディングで勝つのは厳しいですが、ドリブルで相手をかわすには、小柄なほうがむしろ有利だと思っています。

小酒部 もし身長が大きかったら、全く違うプレースタイルの選手になっていたかもしれないですね。

紺野 きっとこんなドリブラーになっていないと思う。自分は背が高くなかったからこのプレースタイルになったし、それは良かったと思います。

小酒部 自分で意識してドリブルを武器にしようと考えてたんですか?

紺野 小さい頃からドリブルが好きで……そのままずっとドリブルばかりしていて、気づいたらドリブラーになってました(笑)。

小酒部 いつ頃からプロを意識しましたか? 自分は昨年の大学リーグくらいから意識し始めたので、ずっと「プロになる」というイメージがなかったんです。

紺野 僕はずっとプロになりたいと思っていましたが、はっきり目標として意識したのは大学2年のときですので、そんなに変わらないです。大学2年の夏の全国大会で優勝して、少し注目してもらったので。

──小酒部選手は神奈川大の幸嶋謙二HCにスカウトされるまでは、大学でバスケを続けるつもりはなかったと聞きました。
小酒部 自分が選手になるとは思っていなかったです。大学からオファーがあって練習に参加してみて、ここでプレーしてみたいと思ったんです。それまでは本当に、中学も高校も全然強いチームではなかったし、自分にはプロは無理だと思っていました。大学に入って、アンダーの日本代表に選ばれて、自分のプレースタイルも広がってきて。そこで初めて意識が変わりました。

紺野 そこは僕も似ているかもしれません。高校時代は埼玉県では強い学校(武南高校)でしたけれど、インターハイも選手権も1回も出られなかった。大学時代に全国大会でプレーしたとき、スカウトの方が見てくださっていて。そこで自信がついたことが大きかったと思います。

■ボールに触れるのがやっぱり楽しい

小酒部と同時期に特別指定選手として加入した笹倉怜寿(写真右から2人目)らは「切磋琢磨していく仲間」[写真]=アルバルク東京

──大学4年生は最上級生ですが、プロ1年目は新人です。チームの人間関係に気を使うことはありますか?
紺野 多少はありますが、FC東京は先輩がみんな優しいので困ったことはないです。むしろ先輩たちが気にかけてくれて、よく声をかけてくれますね。自分たちが気を使うというより、逆なのかもしれません(笑)。そのおかげで、プレーするときに萎縮することは全くないです。

小酒部 アルバルクも先輩が本当に優しくて。みんな大人というか、気を使っていろいろな面で教えてくれます。

──とくに仲が良いチームメートは誰ですか?
紺野 同期の中村(帆高)選手。あと、最近は田川(亨介)選手と話す機会が多いですね。年齢も近いし、トレーニングでも同じチームでプレーする機会が多いので。

小酒部 自分も、同年代の平岩(玄)選手、笹倉(怜寿)選手と話すことが多かったです。一緒に切磋琢磨していく仲間というか。精神的な支えになったと思います。

──チームのなかでも、若手選手には特別な期待感がありますよね。若い力でチームを勢いづけてほしいという期待を感じることは?
紺野 勢いをもたらすのはもちろんですが、大卒は即戦力という扱いなので、もっと試合に絡んでいきたいです。若手が試合に出て活躍することがチームに勢いをもたらすと思いますし、長谷川(健太)監督からも求められていると思います。

小酒部 コーチからの期待は感じます。自分ももっと試合に絡んでいきたいと思っています。

──Jリーグは中断、Bリーグは2019-20シーズンが打ち切りという形になってしまって、二人ともプロ1年目は不思議なシーズンになりました。とくに東京都は外出自粛期間が長く続きましたが、どんなことを考えていましたか?
紺野 コンディションが落ちるのは仕方ないですが、できるだけ落ちないように家の中で動いていました。外に出られない分、映像を見て自分のプレーを見返す時間も増えました。あとは、新しいことにも挑戦してみたかったので英会話を始めました。将来的には海外でサッカーをしたいので、以前から英語の勉強をしたいとは思っていたのですが、外出自粛期間をきっかけに始めることができたので、そこはプラスかなと思います。

──ポジティブに過ごしていたんですね。
紺野 最初のころはさすがに落ち込みました。リーグ中断前はコンディションもすごく良かったので、そのまま試合がしたかったです。でも仕方ないことなので……すぐに切り替えて次の行動を始めようと。

小酒部 自分もリーグが打ち切りになる前、少しずつ試合に出られるようになって、いい流れが来ていたので残念でした。外出自粛期間は自宅でトレーニングをしたり、システムを忘れないようにアルバルクの動画を観ていました。今はやっと個人でのワークアウトが始まって、来シーズンの開幕に向けた準備がスタートしたところですね。ボールに触れるのがやっぱり楽しいです(笑)。

紺野 僕も今はサッカーができる喜びをかみ締めてトレーニングできています。モチベーションも上がってきて、すごくいい状態になってきたと思います。

■お互いに日本代表に入れるように

──今後について聞かせてください。まずJリーグが再開します(取材はリーグ再開前に実施)。Bリーグは2020-21シーズンが10月からスタートします。
紺野 中断期間が長かった分、ファン・サポーターの方もすごく楽しみにしてくださっていると思います。まず自分たちが戦うところを見せて、勝利をプレゼントできるように全力を尽くしたいと思います。試合に出たら積極的にドリブルで仕掛けていくので、そこを楽しんでもらえたらうれしいですね。

小酒部 10月の開幕戦から観客を入れてになるかどうかまだ分からないですが、どんな形であれ応援していただきたいですし、全力でそれに応えたいと思います。

──自分の将来像を思い描いていますか?
紺野 まずはFC東京を代表する選手になることが目標です。そこから日本を代表する選手になって、いつか海外で活躍したいと思っています。そのためにも毎日を大事に過ごしていきたいと思います。

小酒部 自分は海外という夢はあまりないんですけど、目先の目標はアルバルク東京で試合に出ること。チームに定着して、レベルアップして日本代表にも絡めるようになりたいと思っています。

──アルバルク東京からGリーグで活躍してNBAを目指している馬場雄大選手の例もあるので、海外リーグの距離感は近くなっていますよね。
小酒部 そうですね。ただ、今は目先のことを一つひとつやっていきたいと考えています。もっとレベルアップして、海外のことを意識できるような選手になっていきたいなと。今はそういう感覚です。

──では最後に、お互いにエールをお願いします。
紺野 プロ1年目で大変なこともあると思いますが、お互いに日本代表に入れるように全力で戦ってもらいたいですね。バスケの開幕はまだ先ですが、頑張ってください。

小酒部 ありがとうございます。Jリーグが再開したら自分も応援するので、ケガに気をつけて頑張ってください!

紺野和也(こんの・かずや)
1997年7月11日生まれ(23歳)。武南高校から法政大学に進み、3年次の全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)で優勝。切れ味鋭いドリブルから“法政のメッシ”と評価された。2019年は特別指定選手としてFC東京に加わり、今年J1リーグへのデビューを果たした。161cm/58kg

小酒部泰暉(おさかべ・たいき)
1998年7月15日生まれ(22歳)。神奈川県立山北高校から神奈川大学に進学。高校時代は無名の存在だったが、関東大学リーグで頭角を現し、2019年には日本代表チーム第2次強化合宿メンバーにも参加した。2019年12月、大学のバスケ部を退部してアルバルク東京へ特別指定選手として加入。187cm/84kg

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