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41歳の中村俊輔が求める理想像…「ボランチばっかユーチューブで見てる」

2019.11.27

[写真]=大木雄介

「勝てばJ1昇格が決まるプレッシャー? それはあるけど、毎試合かな。1回でもミスったら松井(大輔)や田代(真一)とかボランチがいっぱいいるから。そっちのプレッシャーの方が大きくて、J1に上がることを上回るプレッシャーだったから、ホントに一発勝負。(ベンチ外からスタメンに抜擢された10月27日の東京)ヴェルディ戦なんかまさにそう。あれでコケたらまた戻っちゃうし。あの試合で点取れて勝てたから、今回も出れた。努力して突き進んできて、こういう経験ができたことに感謝したいですね」

 11月24日、愛媛FCとのJ2リーグ最終節。横浜FCは2-0で勝利し、自力で13年ぶりのJ1切符を手繰り寄せた。シーズン途中から指揮を執る下平隆宏監督が終了間際に三浦知良を送り出すドラマを演出する中、ボランチで先発した中村俊輔はベンチから歓喜の瞬間を見守り、安堵感を体いっぱいに表現した。

 ジュビロ磐田に在籍していた2月23日、松本山雅との開幕戦で先発しながら後半開始早々に交代を強いられてからというもの、今季の中村は苦悩と焦燥感を繰り返し味わってきた。結局、磐田では足首の軟骨の痛みもあってコンディションが万全となることはなく、ピッチに立つ時間はほとんど得られなかった。そんな状況を変えるため、7月に人生初となるJ2でのプレーを決断。地元・横浜に凱旋した。

 だが、これまでの主戦場とは異なるボランチでの起用に悪戦苦闘。思うように出場機会をつかめず、ベンチ外になることも少なくなかった。中村自身も「J3か引退しかないっていう、そこまでの危機感っていうか、恐怖だよね」と神妙な面持ちで言うほどギリギリのところまで追い込まれていた。

 それでも、10月の京都サンガF.C.戦を0-3で落としたことが大きな転機になった。下平監督はそこまで主力だったイバやレアンドロ・ドミンゲス、松井らを外し、中村俊輔や佐藤謙介、皆川佑介といった面々をスタメンに抜擢。彼らが結果を出したことで、最後までそのユニットを使い続けたのだ。

 とりわけ、ボランチは中村と佐藤の息の合った連携が光った。かつて柏レイソルで明神智和(現・AC長野パルセイロ)とコンビを組み、職人肌ボランチとして活躍した指揮官は、2人の関係性に大きな手応えを感じたのだろう。彼らは愛媛との大一番でも“生かし生かされる関係”を体現し、チームを力強く支え、攻守のバランサーとして舵を取った。

横浜FCに来た当初、自分には『中盤で作って』っていうボランチ像があったけど、たぶんそれが違ってたんだろうし、そこにも気づいていた。でも、体に染みついたプレーがあるから、ちょっと難しかったんだよね。その後、シモさんが求めるものと、もともと自分がトップ下でやっていた感覚を織り交ぜたら、ベンチ外の練習でだんだんフィットしてきた。『できるわ』って感覚があったからヴェルディ戦でもはまったし、今までうまく来た。こういう経験は今後また他の選手にも言えるし、指導者とかになった時も生きると思いますね」

理想の選手像になるために、YouTubeでチェックしているのは…

[写真]=大木雄介


 悟りの境地に達したのは、新天地に赴いてから3カ月が経過した頃だった。中村ほどの高度な経験値を持つ選手でも、やはり環境やリーグが変われば、適応するまでに時間を要する。その時間的ロスを最小限にとどめたことで、彼は半年間という短い契約期間の中で「J1昇格請負人」の責務を果たした。環境の変化やポジション変更とさまざまな難問に折り合いをつけ、手にしたものはやはり大きかったのだ。

「正直、納得はしてないけどね。もっと自分のプレーってものがあるし、本当に俺の理想ではないけど、能力がないんだったらこうやって(ポジションを変えて)試合に出るしかない。自分を認めてやるところはやるけど、やっぱり諦めたくないわけ。ずっとリケルメみたいに『ザ・10番』でやっててもよかったのかなっていう気持ちもあるし。

 ただ、ここに残ってボランチとしてやるならもっと前に絡んでいかないといけないと思う。J1に上がったら本当にそう。だから今はボランチばっかユーチューブで見てるよ。大島(僚太)くんが一番いいね。アジリティがあって技術もあってっていう、ああいうサッカーがすごくいいと思うから」

 こう発言し、目を輝かせる中村俊輔は、41歳になった今も自身の理想像を追い求めつつ、プレーヤーとしての幅を広げている。ボランチという新たなポジションに挑むことも全てが前向きな経験。長年やってきたトップ下の要素も加味しながら、もっとパス出しや攻撃の起点になれるはずだと信じ続けている。その野心と向上心がこの男の凄さである。

 先輩・カズに「確かな技術と経験を持った選手。そして本番の試合に強い。しかもサッカーが好きな気持ちと情熱があって、まだまだうまくなれるんじゃないかって思って取り組んでる。それを見て自分も頑張りたいなと思いました」と最大級の賛辞を贈られた技巧派レフティは、どこまでも成長し続けるはず。中村俊輔という永遠のサッカー少年に年齢は関係ないのだ。

「俺はやっぱりもしかしたら『サッカーやる人なのかな』と。指導者向いてないのかなって思うこともある」と苦笑いした41歳は、足首が完全に壊れるまで、ひたむきかつ貪欲にピッチに立ち続けるはず。2020年のJ1での躍動が今から大いに楽しみだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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