2019.10.23

【サッカーに生きる人たち】スタジアムを日常からかけ離れた世界に|YO!YO!YOSUKE(名古屋グランパス・スタジアムDJ)

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写真=黒川真衣

「ゴォォォォォォォォォォォォール!」

 スタンドから爆発的な歓声が沸き上がるなか、マイクを通した声が空気を貫く。スタジアムに最も一体感が生まれる瞬間、スタジアムDJは現場の臨場感を助長する大きな役割を担っている。

 2007年から名古屋グランパスのスタジアムDJを務めるYO!YO!YOSUKEさん。グランパスサポーターの間ではお馴染みの存在だが、他クラブのサポーターでも、名前は知らずとも「声」で彼のことを認識している人は多くいるだろう。やや高めの音程で息の長いゴールコールは、いまや名古屋のホームゲームにおける名物の一つとなっている。

周囲から評価を得た「声」を仕事に

 Jリーグが開幕した1993年、YO!YO!YOSUKEさんは中学2年生だった。日本のスポーツ界をきらびやかに彩るサッカーというスポーツに、YO!YO!YOSUKEさんはミーハー心をくすぐられた。

「当時のJリーグはメチャメチャ派手で、すぐにハマりましたね。それで僕もサッカー部に入部して。でもその頃、すごく太っていたんですよ(苦笑)。走れなかったから、GKになった。GKは当時、夏も冬も長袖・長ズボンで、一生懸命やっていたおかげか、スリムになりました(笑)」

 高校生になってもGKとしてサッカーを続けた。選手としてトップを目指すのは早々に断念したが、サッカーを通して周囲からの評価を得たのが「声」だった。

「GKをやっていて唯一、褒められたのが、『お前は声がよく通るな』と」。「声」が自身の長所であると認識したYO!YO!YOSUKEさんは、幼い頃からのアニメ好きも乗じて、声優の専門学校に進学。さらに、活動の場を広げるためにイングランドのマンチェスターへ留学し、語学力を身につけた。行き先にマンチェスターを選んだのは、「(ディヴィッド)ベッカムが大好きだから」だ。

 帰国すると、外国人客の多いハードロックカフェやゲレンデDJなどでマイクを持つ経験を積み、2004年に第11回ZIP-FMミュージック・ナビゲーター・コンテストで準グランプリを受賞。翌年4月からはZIP-FMミュージック・ナビゲーターとなり、名古屋を中心にレポーターやMCとしてマルチに活躍するタレントになった。

サポーターをリスペクトすることで変化した距離感

 YO!YO!YOSUKEさんがスタジアムDJを担当するようになった2007シーズン以降の名古屋グランパスは、まさに山あり谷あり、波乱万丈の歴史を辿っている。2010シーズンのJ1初優勝はアウェーの湘南ベルマーレ戦で決定したため、テレビ観戦で見届けた。翌シーズンもリーグ戦2位と健闘したが、その後成績は下降していき、2016シーズン、クラブ初のJ2降格。Jリーグ創設時から加盟する“オリジナル10”としての屈辱と失望感を、クラブとともに味わった。だが、YO!YO!YOSUKEさんはJ2で戦った2017シーズンこそ、グランパスとクラブに携わる人々が一枚岩になるきっかけになったと感じている。

「2016年にJ2降格が決まった時は、悔しいけど、しょうがないというか、もう這い上がるしかなかったから。それで翌年、J2を戦っていくなかで、だんだんファン・サポーターとクラブとの一体感がより強くなっていったように感じました」

 YO!YO!YOSUKEさん自身の身も心も、年々グランパスに染まっていった。1年目の2007年はスーツを着用し、あくまで“仕事”としてDJをこなしていた。「僕のほうがサポーターの皆さんよりも“後輩”の立場で、グランパスの知識も少ない。だから、プレッシャーを感じる部分もありました」。しかし、2年目からはグランパスのユニフォームを着用するようになり、サポーターとの交流も深めていった。

「時々、サポーターやクラブの方と交流する機会があるんですが、そこで前シーズンの反省をして、次のシーズンはどうしようか、という話をする。クラブにはクラブの考え方があるけど、サポーターもサポーターで『海外クラブのこういう応援を取り入れたい』といった考えがあって、高い意識を持ってやっている。お互いの立場をリスペクトしながら、きちんとディスカッションができるようになり、だんだん距離感が近くなってきたかなと」

 クラブもサポーターもYO!YO!YOSUKEさんも、望みは同じ―「グランパスを良くしていきたい」―そのなかでYO!YO!YOSUKEさんが大事にしているのは、現場ならではの“熱量”だ。

「僕は試合を運営する人たちの代表として“声”で伝えているので、間違いがあったらみんなが積み上げてきたものを台なしにしてしまう。そこには細心の注意を払っています。ただ、あまりかしこまりすぎると、スタジアムの熱量も上がってこない。だから、サポーターと同じ気持ちになって、『どうしたらチームを後押しできるか』を考えながらやっています。理想としては、例えば東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのような、日常からかけ離れた世界を作り出すこと。スタジアムで感動だったり、ワクワクした気持ちを体感してもらい、『また来たい』と思ってもらいたい」

 2017年12月3日。自動昇格圏内に入れず、3位で昇格プレーオフに回ったグランパスは、決勝戦でアビスパ福岡と対戦した。「引き分けでも昇格」という有利な条件は、リーグ戦42試合で85得点をたたき出した自慢の攻撃陣の足かせになってしまい、スコアレスのまま時計の針が進んでいく。そしてタイムアップの笛が鳴り、緊張が解かれると、YO!YO!YOSUKEさんは人生で初めての“ある体験”をした。

「スタジアムDJをやっていて、初めて泣いた試合が昇格プレーオフの決勝。それ以前は、例えば高校サッカーとかで試合終了の瞬間に泣き崩れる選手たちを見ても、『試合が終わった瞬間にそんなに泣けるの?』と思っていたんです。だけど、昇格プレーオフは最後の最後までどうなるか分からない展開で、笛が鳴った瞬間、本当にブワァーって込み上げてくるものがあって。自分自身の変化を感じたという意味でも、思い出に残っている試合です」

生まれ故郷である名古屋の発展に貢献したい

 YO!YO!YOSUKEさんが思い描く夢の一つは、「グランパスがワールドクラスのクラブになり、それをスタジアムDJという立場で支えること」。一方で、新たに取り組んでいることがある。生まれ故郷である名古屋の発展に貢献することだ。

「20代の頃は漠然と東京に憧れがあったけど、自分自身を育ててくれたのは名古屋だし、これだけの仕事をくれたのも名古屋。自分の半生をかけて、恩を返していくと決めたんです」

 そして声優・タレントのマネージメント事務所「TYK Promotion」を立ち上げ、現在では「TYK STUDIO」という声優・タレントのプロ養成スタジオを運営している。

「僕のことをあまり知らない人でも、『グランパスのスタジアムDJです』と言うと伝わるんです。グランパスは全国のどこへ行っても通じる肩書きで、そういう名古屋を代表するエンターテインメントをアニメの世界でも作っていきたい。名古屋は『魅力がない街』だなんて言われてしまうこともあるけど、今は『ボイメン(BOYS AND MEN)』や『SKE48』といったアイドルが頑張って盛り上げています。僕はエンタメの世界に身を置く一人として、名古屋からオリジナルのものを作って、新しい文化を築いていきたいんです」

 YO!YO!YOSUKEさんを突き動かすものは、Jリーグと出会い、サッカーに魅了された26年前と変わっていない。「ワクワクするもの」への興味と、「新しいもの」へのチャレンジ精神だ。

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