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【サッカーに生きる人たち】戦術分析を通して、多くの人のサッカー観に影響を与えたい|とんとん(サッカー戦術ブログ『鳥の眼』執筆者)

インタビュー・文=竹ヶ鼻大輝(フロムワン・スポーツ・アカデミー2期生)
写真=兼子愼一郎

「サッカーを戦術的な視点で捉えれば、これまでと違うものが見えてきます。現役の選手にとってはプレーする上での助けになるし、試合観戦が好きな人にとっては、サッカーの新たな魅力を発見できる機会になる」

 そう語るのは、ブログやツイッターでサッカーの戦術を解説しているとんとんさんだ。本業はサッカーと全く関係ないが、専門性の高い解説は他のブログと一線を画している。とんとんさんのブログのタイトル『鳥の眼』は、“Bird’s-Eye View”(俯瞰)という英語からとったものだが、この「俯瞰」がサッカーを見る上で重要だとブログには記されている。

「サッカーはチームスポーツです。よって1人の選手だけ追うのは(戦術的な観点で)あまりいい見方とは思いません。なぜなら1人の選手だけ見ていても、チーム全体の意図や戦術上のタスクを把握できないからです。タスクをきちんとこなしている選手を貢献できていないと評価し、タスクを放棄してイチかバチかの勝負に出て、運よく成功した選手が称賛される。俯瞰的に試合を見ないと、往々にしてそういったことが起こります」

現役でプレーする方にとっての教科書になれば

「こういった取材は初めてでして、何を話せばいいか……」。緊張した面持ちでそう話す25歳の青年は、一つひとつ言葉を選び、慎重に語っているように見えた。しかし、静かな口調とは裏腹に、言葉の節々からサッカーに対する確固たる考え方が窺えた。

 5歳の時に見たフランス・ワールドカップがきっかけでサッカーを始め、中学時代までは本気でプロを目指して練習していたと言う。
 
「現役時代にコーチによく言われたのが、プロのプレーを手本にしなさいということです。特にボールを持っていない時の動きを見なさいと言われました。ただ、具体的に何を見ればいいか全然分からなかったため、知識もつきませんでした」

 戦術的な知識はプレーする上で必ず役に立つ。現役時代にそのことを意識してこなかった後悔から、現在は戦術的な目線でサッカーを見るよう意識している。自身の経験から、現役の方にこそ『鳥の眼』を読んでほしいと語る。

「ブログではオフ・ザ・ボールの動きのどういうところを見ればいいのかを書くようにしています。本来ならそういったところまで教えてくれる指導者が増えてほしいのですが、そんな指導者に巡り会えなければ、自分の記事を一読いただけたらと思います」

 その思いが実り、プロの指導者でないにもかかわらず、ツイッターのフォロワー数は、1万5000人にまで増えた(2019年7月時点)。サッカーと関係のない本業の合間を縫って、発信を続けられるモチベーションは、現役でプレーする方々から寄せられるコメントだ。

「指導者になるよりもネットに載せたほうが多くの方に見てもらえるので記事を書くようになりました。記事を読んだ人のサッカー観に何かしらの影響を与えたいという思いがあるので、現役の方からブログに対するリアクションをいただけるのは、非常にモチベーションになっています。ブログを始めた目的を果たすことができてうれしいですね」

サッカーというスポーツはスペースの攻略ゲーム

 ブログのネタ作りは、普段の試合観戦でおもしろいと感じたチームを分析することから始まる。分析から記事投稿まで約1週間かかるそのやり方に最初は疑問を感じたが、説明を受けて非常に合理的な方法だと納得させられた。
 
「分析をする時は該当チームの直近の5、6試合の前半だけを見ます。個人的に前半のほうがチームの色が出やすいと思っているからです。後半になると選手は疲れてきてオープンな展開になり、チームとしての色が薄くなってしまうことが多い。一度前半の45分を通して見るのですが、その際に『何分何秒にいいシーンがあった』というようなメモを取ります。その後、メモをした時間帯を見返すんです。そこでチームとしての意図やプレーの再現性があるかを確認します」

 このように理屈と経験に裏打ちされた方法で分析をしているが、ここに至るまでには当然努力を重ねてきた。海外のサッカー戦術ブログを読み漁っていた時期があったと言う。そうした期間は1、2年続いた。

「分析を始めた頃は海外の戦術ブログを読んでいました。その際に、書いている人がどういう目線でサッカーを見ているのかを意識していました。ブログに取り上げられたチームがどういう戦術をとっているかよりも、そのブログの書き手が何を意識してサッカーを見ているかに注目していましたね」

 長期間、海外の戦術ブログに触れることで、とんとんさんのサッカー観は洗練されていった。今では試合を見て、戦術的なポイントを自分で気づけるようになった。

「サッカーというスポーツはスペースの攻略ゲームだと思っています。どこにスペースができて、攻撃側がそのスペースをどう攻略するのかに注目します。逆に守備側はその空いたスペースをどう埋めるのかを見ます。例えば攻撃側のフリーなサイドの選手にボールが渡った場合に、守備側のインサイドハーフが飛び出して対応するとします。すると、そのインサイドハーフがもともといたスペースが空くと思うので、今度はそこを攻撃側がどう突くのかというように、スペースの連鎖を意識して見るようにしています」

自分の考えを持って見れば、その選手、そのチームのことがもっと好きになる

 そもそも戦術的な視点でサッカーを捉えることにどんな意義があるのだろうか。現役の選手やプロのチームにとっては、試合に勝利するという絶対的な目標への一つの手段に過ぎない。では、サッカーファンにとってのそれは、何だろうか。『鳥の眼』は現役の選手を意識して書かれているが、とんとんさんは戦術というジャンルにあまり明るくない人にも読んでもらいたいと語る。

「多くの人が自分の好きな選手やチームについてもっと知りたいと思っているはずです。私はブンデスリーガのボルシアMGというチームが好きなので、ボルシアMGの選手や監督がどういった考えでプレーしているのか知りたいという思いがありました。戦術分析を通して少しでも自分のサッカー観を養うことができれば、これまでと違ったサッカーの楽しみ方に出会えると思います。例えば、それまでテクニックがあるから好きだった選手が、実はオフ・ザ・ボールの動きで味方にスペースを作るなど、今まで気づけなかったところでもチームに貢献していると発見した時に、その選手のことをもっと好きになると思うんです」

 インタビューが終わり、雑談をしている時にとんとんさんがこんなことを言った。

「試合の結果にあまり興味がないんです。今年のチャンピオンズリーグは土壇場で負けているチームが大逆転する展開が何試合もありましたが、実はほとんど結果を先に見てから試合を見ました。別にそれでもいいんです。お互いのチームがどんなサッカーをしたのかということのほうが気になるので」

 ドラマチックな展開を楽しむことはサッカーの楽しみの一つだ。しかし、“鳥の眼”で試合を観察するとんとんさんのサッカー観を象徴した言葉に、「戦術分析」もサッカーの新たな楽しみ方になり得ることを感じた。

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