2018シーズン限りで現役を引退した元日本代表GK川口能活 [写真]=兼子愼一郎
日本サッカー史に偉大な足跡を残した名ゴールキーパー、川口能活が25年間の現役生活にピリオドを打った。日本代表では4大会連続でワールドカップのメンバーに名を連ね、キャップ数はGKでは最多の116。セガゲームスより配信中の『プロサッカークラブをつくろう! ロード・トゥ・ワールド』メディア発表会のスペシャルゲストとして登壇したレジェンドにともにプレーした歴代の日本代表選手について語ってもらった。
インタビュー=岩本義弘
写真=兼子愼一郎、アフロ、ゲッティ、Jリーグ
――12月2日の現役ラストゲームでは素晴らしいセーブを披露して完封勝利を飾りました。あの試合を振り返っていただけますか。
川口能活(以下、川口) 僕が引退を表明してから選手たちは「能活さんのために」という気持ちで練習からやってくれて、そういうみんなの思いがあの試合で発揮できたと思います。多くのお客さんが来場して良い雰囲気を作ってくれたので、ほんとに嬉しかったですね。最後の試合を勝利で終われてよかったです。
――引退後は指導者の道を歩みたいとおっしゃっていましたが、サッカーを見る時はやはりGKを見ますか?
川口 もちろん見ていますが、GKというよりゴール前のシーンをよく見ます。ただ、今のサッカーはショートカウンターだったりディフェンスからの縦パス1本で一気にチャンスになったりするシーンが多いので、ゴール前だけでなくピッチ全体を見ないといいプレーを自分の中で編集したりピックアップするのは難しくなってきていると思います。
――本日は『サカつく』のイベントに登壇しましたが、サッカーゲームをやったことはありますか?
川口 サッカーゲームは正直な話、ファミコンのサッカーで終わっちゃってるんですよ(笑)。(それ以降は)ゲームコントローラーのボタンが増えたじゃないですか。いろいろ複雑になりすぎて分からなくなっちゃったんですよね。そこからサッカーゲームからは遠ざかってしまいました。
――『サカつく』は選手が実名で出てくるので国内外の選手に詳しくなりますよ。
川口 それは情報収集という意味でも助かりますね。チームのプレーとか有名選手しか知らないので、これから情報収集する上ではありがたいですね。
――日本のGK事情についてお聞きしたいのですが、今季J1は7クラブが正GKに外国人選手を起用していました。来季、Jリーグは外国人枠が増えるので、外国人選手のGKがさらに増える可能性があります。このことについてご自身としてはどう思いますか?
川口 自分はもう選手の立場ではないので客観的な立場からの意見ですが、ある程度の制限は必要だと思います。ただ、急に(外国人GKの採用を)撤廃することはあまり得策ではありません。プレミアリーグは外国人GKの制限をしていなかったので、デビッド・シーマンの後継者となる自国GKがなかなか出てこなかった。でも、時間は掛かりましたが、ジョー・ハートが出てきて今は若いジョーダン・ピックフォードが育っている。Kリーグや中国リーグのように外国人GKを制限すべきという声もありますが、イングランドで新たなGKが育ってきたという歴史もあるので、一概に(自国選手の)出場機会が減ってしまうからという理由で制限するのではなく時間を掛けて様子を見てからどうするか判断すべきだと思います。
もし、制限をするのであれば今はJ2、J3など、下部リーグで採用することは一つの考えだと思います。下のカテゴリーで若い日本人GKが経験を積んでJ1では実力でポジションを競うというような形です。ただ、一方でヨーロッパで外国人GKを制限しているリーグはないので、そのことを考えると競争するべきなのかなとも思いますね。
――ハリルホジッチ前代表監督は「GKは190センチ以上ないと良いGKとは言えない」と発言していました。こういった論調についてどう思いますか?
川口 それだけはやめてくれって思いました(笑)。実際に190センチに達してなくてもワールドクラスのGKは長い歴史の中でたくさんいますからね……。もちろん今は大型化になっていますが、僕の好きだったピーター・シルトン(元イングランド代表)やディノ・ゾフ(元イタリア代表)は180センチ台ですし、現在でもヤン・オブラク(アトレティコ・マドリード)は190センチありません。チャンピオンズリーグ3連覇に貢献したケイラー・ナバスだって(レアル・マドリード)184センチです。イケル・カシージャス(元レアル・マドリード)も185センチですから。彼らはそのサイズで伝説的なプレーを見せて実績を残しているわけですよ。そういった選手たちをも否定することになるのでサイズだけでは判断してほしくないですね。僕自身も180センチで戦ってきましたから。サイズがなければ(良いGKではない)、ということは僕はないと思っています。
――ここからは本題の『川口能活が語る歴代の日本代表選手』です。まず最初に一番のライバルでもあった楢崎正剛選手についてお聞きします。
■楢崎 正剛
川口 正剛は永遠のライバルです。彼なくして自分はここまで選手として成長できなかったですし、代表でもプレーできなかったと思います。彼は僕にとって特別な存在でした。
――ワールドカップでゴールマウスを守ったことがある日本人はこれまで3人しかいません。代表では楢崎選手とW杯ごとに正GKの座を奪い合うという非常にめずらしいライバル関係でした。
川口 そうですね。同年代で同じ実力を持つ者同士が同じチームで競うというのは大変なことです。ある程度、年齢が離れていればもう少し客観的になれるんですが同年代でポジションを争うというのは非常に酷な環境でしたね。ミスや怪我、大敗をすると、すぐレギュラーポジションを失うという緊張感の中でやっていたのでずっと気が抜けなかったですね。
――GKは1つしかポジションがない中で、練習ではライバルと常に一緒ですからね。
川口 若い頃は僕も正剛も試合に出たい気持ちが強かったので緊張感がありましたが、年齢を重ねていくごとにお互いの気持ちやプレーをリスペクトして認め合う関係になっていきました。その過程には小島(伸幸)さんや土肥(洋一)さん、ソガ(曽ヶ端準)という存在があったからいい関係性を作れたんだと思います。
――ポジションを争っている中で、楢崎選手のプレーのすごさはどこだと感じていましたか?
川口 正剛はどんな相手に対しても平然としている精神的な落ち着きがありました。もちろん僕にもそれがあると信じてプレーしていたんですが、彼は全く動じないんですよ。そういった部分は自分にとって勉強になったし、吸収したいと感じていましたね。
■三浦 知良
川口 カズさんは僕の永遠のアイドルです。最初にお会いしたのがカズさんがサントスにいた頃で、静岡のデパートでサイン会をやったんですよ。その時にカズさんが来るからといってサインをもらいにいきました。それがカズさんとの出会いでした。僕は中学3年生だったかな、その時にサインをもらって握手してもらったのですが、その時から僕のアイドルです(笑)。その後、まさか代表で一緒にプレーできるなんて夢にも思いませんでした。最初に代表に選ばれた時はカズさんに話しかけることすらできなかったくらいです。でも、代表ではいつも全体練習が終わった後にシュート練習に付き合ってくれて、自分のレベルを引き上げてくれた恩人ですね。
――川口選手のほうが先に現役を引退するとは思わなかったですね。
川口 実は今年の9月に横浜FCと練習試合をやったんですよ。その時もカズさんが「ここからだぞ」って言ってくださって。でも僕は引退することを決めたんですけど……。カズさんはまだまだ頑張ってほしいですね。
■中田 英寿
川口 後ろから見ていて彼ほど頼りになるというか存在感を放っていた選手はヒデ以外見たことがありません。僕はジョホールバルの戦いで、ヒデが別の次元に行ってしまった瞬間を同じピッチで目撃しました。彼はあのプレッシャーが掛かったゲームの中で一人だけ異次元のプレーをしていました。あの試合は最終予選の9試合目でみんな疲労がピークだったにもかかわらず、ヒデは圧倒的なパフォーマンスを見せました。それは僕にとってワールドカップ出場を決めたことよりも衝撃でした。
――中田英寿のそいうったメンタリティは川口さんにも共通していると思います。
そう言ってもらえるだけで光栄ですよ。中田英寿と同じような種類の人間だと思われたことは僕にとって光栄です。代表の試合では僕がキャッチして最初に動き出してくれるのはいつもヒデで、僕と彼のラインができ上がっていました。そういう関係性を作れたことも僕のキャリアにおいて重要だったし最高の時間でもありましたね。
■中澤 佑二
川口 佑二はほんとにストイックで(プロになってから)あれだけ成長した選手は今まで見たことがありません。最初ヴェルディでデビューした時はヘアスタイルだけが取り柄かと思っていたんですよ(笑)。でも、会うたびに上手くなっていきました。マリノスでずっと高いレベルを維持していますし、昨シーズンも(39歳で)ベストイレブンの候補に挙がりましたからね。佑二は多くの若いDFに影響を与えた選手だと思います。違うかもしれないですけど代表で吉田麻也が22番をつけているのは佑二へのリスペクトなんじゃないかなと思います。
■中村 俊輔
川口 俊輔はほんとに可愛い後輩ですね。彼もヒデと同じで雲の上の存在です。そんな偉大な選手を若い時から同じチームで成長を見守ることができてうれしかったですね。俊輔は決して表現力があるタイプではありませんが、すごく後輩思いなんです。若手に対する指導がすごくうまいし、多くの選手やチームから愛されている選手です。これからもサッカーが好きだという純粋な気持ちとひたむきさを持ち続けて、そういう存在であり続けてほしいですね。
■本田 圭佑
川口 実はJリーグ時代に僕は圭佑に結構やられてるんですよ。彼の凄さは当時から分かっていましたし、プレーはもちろんですが、あれだけメンタルの強い選手はなかなかいないですね。強烈なパーソナリティを持っていながら、順応性もある。圭佑はメディアの前では強い自分を見せていますけど、チームの中に入ると冗談を言ったり面白いことを結構言うんですよ。
圭佑との会話で印象に残っているのは、代表の時に彼が「能活さん、いつまでプレー続けますか?」と聞かれたので「俺はできるまでやりたいな」と答えたんですよ。そうしたら圭佑は「僕は32歳で引退します」と言い出して、僕は「引退後は何をするの?」と聞いたら「村を作りたい」って言ったんです(笑)。彼は当時まだ22、23歳くらいですよ。その年齢でサッカーとは違う夢を持っているなんてすごいやつだなと驚きました。その会話を圭佑が覚えているか分かりませんが、彼のいろいろなことに挑戦するチャレンジ精神は今につながっているんだなと思いました。
■長友 佑都
川口 佑都は日本のプレーヤーに夢と希望を与えてくれた選手です。エリートではなかった彼が代表に入り、欧州に渡ってビッグクラブへステップアップしてチャンピオンズリーグでプレーするという、サッカー選手なら誰でも夢見ることを成し遂げたわけですから。僕は佑都と(香川)真司が代表チームに入ってきた頃(2008年)に二人そろって「能活さん、海外ってどうですか?」と聞きに来たことを今でもよく覚えています。佑都が残した偉大なキャリアは(日本サッカー界で)重宝されるべきだし、彼が伝えてくれるものは(これからの選手にとって)計り知れないものです。
■川島 永嗣
川口 永嗣はヨーロッパで成功した最初の日本人GKです。僕が成し遂げられなかったことを彼が達成してくれました。日本人GKが欧州でプレーするのはとても難しいことです。彼のあくなき挑戦は称賛されるべきことだと思います。
■松田 直樹
川口 マツの話をするだけで涙が出てきしまうくらい彼に対する思い入れがありますね。もし、マツが生きていたら……まず彼に(現役引退の)相談をしたかったですね。「俺引退考えてるけどどうしたらいいかな」って。彼はもしかしたら「もうやめちゃうの?」と言うかもしれない。そういう相談を一番したかった存在ですね。
マツとはマリノスや日本代表で常にお互い切磋琢磨してきました。最初は僕から見てマツは生意気だったし、マツからすれば能活は「うるせーな」って思っていたと思うんですよね。でもそういう中で時間をかけて信頼関係を築いてお互いの良さを認め合うようになった。僕は(違うチームになっても)常にマツを気にかけていたので、彼がああいうことになって悔しかったです。でも、マリノスと松本山雅でマツが残した足跡は偉大ですし、松本山雅には松田直樹の魂が宿っています。そういうものを(クラブに)残せることは普通の選手にはできないことです。天国のマツにはちゃんと(現役引退を)報告しないといけないなと思います。
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By サッカーキング編集部
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