2018.10.05

【ライターコラムfrom水戸】登録33人中11人。期限付き加入の選手が多いチームを支える「野心」と「使命感」

今季、水戸は登録選手33人中、期限付きで加入している選手が11人在籍している [写真]=J.LEAGUE
ホーリーホックを追いかけて14年目。横浜から茨城に移住して7年半。有料WEBサイト『デイリーホーリーホック』を運営しながら、地域スポーツ誌『yell sports 茨城』の編集長も務める。

「このチームは特殊なチームですからね」

 第35節大分トリニータ戦後、木村祐志は苦笑いを見せながら、そう口にした。現在選手登録されている33人中、期限付きで加入している選手が11人もおり、その数の多さを木村は「特殊」と評した。

 大分に敗れて、目標である「6位以内」との勝ち点差は12に広がってしまった。目標達成に向けてかなり厳しい状況に追い込まれたのは間違いない。ただ、可能性が消えたわけではない。そのわずかな可能性を信じて、残り7試合をいかにモチベーションを高く保って戦い抜くことができるか。期限付き加入の選手が多いチームの真価が問われることとなる。

 期限付き加入の選手が多いことは継続的なチーム強化が難しいというリスクがある。ただ、水戸で結果を出して高みを目指すという彼らの「野心」がこれまでチーム力向上をうながしてきたことは疑う余地のない事実である。いずれも所属クラブで出場機会を得られず、チャンスを求めて水戸にやってきた。そして、水戸で結果を出して、自らの価値を高めようという意気込みに満ち溢れたプレーを見せ続けている。「将来的には海外でプレーしたい。そのためにも結果にこだわらないといけない」と語る伊藤涼太郎をはじめ、誰もがさらなる高みを目指して日々努力しており、最後まで現状に満足することなく「結果」を求めて戦い抜くことだろう。彼らの「野心」がこれからもチームを奮い立たせるに違いない。

 ただ、「野心」だけでは独りよがりのプレーに走ってしまい、チームの一体感が失われる恐れがある。そこで求められるのが「使命感」だ。

「水戸で結果を出して高みを目指す」期限付き加入選手の「野心」は今季のチームを支える力となった [写真]=J.LEAGUE

 今シーズン、クラブはピッチ内外における選手たちの価値を高めるための取り組み「Make Value Project(MVP)」を開催してきた。毎週木曜日の練習後、クラブ内外の方を招いて講義を行い、選手たちにサッカー以外の知識をつけさせて視野を広げさせようという試みである。栄養管理士やメンタルトレーナーなどの専門家をはじめ、クラブの営業スタッフなども登壇し、選手たちに向けて様々な講義が行われた。

 約3カ月前、不肖私も登壇し、メディアについて語る機会を設けていただいたことがある。そこで強化部から求められたのが、「メディアについて語るだけでなく、佐藤さんがなぜ水戸ホーリーホックを取材しているのかなど、自らの『使命』について語ってもらいたい」ということだった。なので、私はその場でなぜ水戸を取材しているのか、そして、水戸というクラブが他のクラブとどういう違いがあり、その活動にどんな意義があるのかを語らせていただいた。私の思いがどれだけ選手たちに届いたかは分からない。ただ、私だけでなく、クラブスタッフやクラブに携わる方々から毎週のように「使命感」についての話を聞いたことにより、否応なしに選手たちも「使命感」と深く向き合ったはずだ。選手個々の胸の奥に宿る「水戸のために」という思いがチームの一体感を保つ接合剤となることだろう。

 今シーズンの水戸が「特殊な」チームであることは間違いない。それでも一体感を持って戦ってこられたのは、選手たちが「野心」と「使命感」を持ち合わせてきたからこそ。その2つを両輪として、水戸は最後の最後まで全力で走り続ける。そして、このチームはもっともっと強くなる。

文=佐藤拓也

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