2018.06.29

【土屋雅史氏のJ3展望】福島は長野戦で6試合連続のドローと予想…群馬vs富山の師弟対決は“師匠”の群馬優勢

明神智和は長野の選手の中で唯一、W杯への出場経験を持つ [写真]=J.LEAGUE
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■日韓W杯で青のユニフォームを纏った男は、指揮官交代の長野で真価を見せられるか

 浅野哲也監督の退任を受け、阪倉裕二ヘッドコーチの監督昇格初戦となった前節のY横浜戦で1-0の勝利を収め、リーグ戦の連敗を3でストップした14位の長野。現在5試合連続ドロー中ながら、5位につけている好調・福島をホームに迎える一戦からは、連日開催中のW杯に長野の選手の中で唯一出場経験を持つ、40歳の大ベテランをフィーチャーしたいと思います。

 1998年フランス大会のグループステージ3連敗を受け、地元開催でのW杯で初勝利を期待されて挑んだ2002年日韓大会。2-2で引き分けた初戦のベルギー戦を経て、第2戦のロシア戦でスタメンフル出場を果たし、待望の白星獲得に大きく貢献したのが、当時はまだ24歳だった明神智和です。

 以前、当時の話を伺った際に知ったのは、意外にも出場機会のなかったベルギー戦の方が緊張していたとのこと。「実はベルギー戦が一番緊張して、ベンチにいたり、アップとかしていても足が震えるくらいで、もちろん出られなくて悔しかったですけど、逆にあの試合に出ていたら、『何もできなかっただろうな』って思いますね」と明かしながら、「ロシア戦はそんなにガチガチの緊張というのもなかったですし、ベルギー戦以降は良い意味で集中して楽しめました」とも。やはりW杯の初戦というのは、それだけプレッシャーの掛かるものなのだと、そのお話を聞いて痛感しました。

 よく聞くエピソードとして、フィリップ・トルシエ監督が「8人の明神と3人のクレイジーがいれば勝てる」と発言したというものがありますが、それについても本人に尋ねてみると、「直接言われたことはないんです。伝え聞いただけですけど、その当時は嬉しかったですよ。良い意味で僕をちゃんと理解してくれてるとは思いました」と明かしてくれた明神。これはトルシエジャパンでの彼の重要度がよく現れているエピソードですよね。

当時のフィリップ・トルシエ監督に重宝されていた明神。「8人の明神と3人のクレイジーがいれば勝てる」という評価は有名だ [写真]=Getty Images

 また、明神と言えば柏時代にも、G大阪時代にも、今回のW杯に臨む日本代表を率いている西野朗監督の指導を仰いでおり、そのスタイルや采配は熟知している印象も。こちらも数年前に西野監督の印象について質問した際には、「ある程度選手とは一線を引いていると思いますけど、その分凄く見られているのは感じているので、選手自身が常にしっかりやっていないと、メンバーには入っていけないという部分があります」と話しつつ、「喋ることは好きだと思うし、こっちが気にせずガンガン話を聞いていけば、どんどん答えてくれるんじゃないかと思いますけどね。僕らも気を遣っていろいろ言わなかったり、ツッコまなかったりする部分もあると思うんですけど、そういうのも嫌いじゃないと思います」という意外な一面も披露。そういうエピソードも含めて、J3のシーズン中ということで断念したものの、実は今回のW杯関連の番組にも是非来て欲しい人材だったことは間違いありません。

 2年続けてチームキャプテンを託された今シーズンは、ここまでリーグ戦9試合にスタメン出場。ボランチの位置で効果的なポジショニングをとり、相手のチャンスの芽を摘みつつ、時にはサイドを駆け上がったりと、エネルギッシュなプレーは相変わらず。思うような結果がついてこない状況下で、明神の経験やキャプテンシーがチームにもたらす効果は計り知れないものがあるはずです。

 今回の対戦相手にあたる福島は、前述したように5試合連続ドローという現状ではあるものの、就任2年目を迎える田坂和昭監督のロジックとパッションがチームへ着実に浸透し、明確な形となって魅力的な実をつけつつある過程。長野にとっても簡単な試合にはならないでしょう。

 前節の明神はベンチメンバーからも外れており、新監督就任というタイミングでのメンバー外は少し気になりますが、彼の力は浮上の兆しを逃したくない長野にとっても、必要不可欠であることは言うまでもありません。ただ、今回はここまでの流れを見ても、好調の福島が食い下がると予想。ここは明神の出場と活躍に期待しつつ、福島にとっては6試合連続ドローを意味する「0」で勝負します!

■“イチフナ”躍進を支えた師弟が、J3の舞台で指揮官として再会

 前々節の沼津戦で連続無敗が7で止まり、前節のG大阪U-23戦は延期となった10位の群馬が、指揮官交替のあった第11節以降は2勝1分1敗と復調傾向にある15位の富山をホームで迎え撃つ第16節。このゲームの注目ポイントは、まさに“師弟対決”となる両指揮官の関係性です。

 今では“イチフナ”という呼称とともに高校サッカー界の名門として知られる市立船橋高校。この強豪を一代で築き上げたのが、今シーズンから群馬の指揮官の座に就いた布啓一郎監督。1983年に同校へ赴任した布監督は、就任3年目で選手権予選を勝ち抜き、初めて千葉県の頂点に立つと、そこから4年連続で全国切符を獲得します。その中の2大会にキャプテンとして出場したのが、第11節から富山を率いている安達亮監督だったのです。

群馬の布啓一郎監督(左)と、シーズン途中で就任した富山の安達亮監督(左)は、“イチフナ”“時代からの師弟関係にある [写真]=J.LEAGUE

 3年生のレギュラーもいたなかで、既に2年生でキャプテンを任されていた安達監督。当時の雑誌を見てみると「キャプテン安達は気が強くて荒っぽい性格で、サッカー以外はすべてダメ」というとんでもないコメントが(笑)。ただ、続けて「でも信頼度は100%。キャプテンがいないと、練習にも気合いが入らないほどだ」というフォローも。この年の選手権は初戦で国見に0-5と大敗を喫したものの、引き続き安達監督がキャプテンを務めた3年時は、インターハイの全国大会で初出場・初優勝の偉業を達成。1学年下には野口幸司や小川誠一といったのちのJリーガーを擁する布陣で、優勝候補の一角として選手権に挑みます。

 この大会で安達監督を一躍有名にしたのは、セットプレー時のブロックサインで、例えば胸、腰、頭、耳に触れ、右手を上げてから蹴るといったパターンも。時々の判断は司令塔でもあった安達監督に委ねられており、それが結実したのは準々決勝の旭高校戦。終盤のコーナーキック時に送ったブロックサインは、ショートコーナーからのファーサイド。これを小川が沈め、1-0で勝利を収めて夢の国立競技場へ。その憧れの舞台でも、安達監督はコーナーキックからアシストを決めるなど、まさにイチフナ躍進の原動力としてチームを牽引。布監督からも全幅の信頼を置かれていたであろうことは想像に難くありません。

 ちなみにこれも当時の雑誌に出ていた文面で、「布監督と安達主将は性格も行動も顔もソックリ。“兄弟のようだ”という声も挙がっている」というものも(笑)。そんな2人がJリーグというステージで、しかも同じ監督という立場で激突する一戦。当然お互いがお互いを意識しないはずもなく、ある意味でリーグ史に残るゲームになると言ってもいいのではないでしょうか。

 リーグ戦を振り返ってみると、直近のゲームはどちらも黒星を突きつけられているだけに、この因縁の対決を制して、勝ち点と良い流れを引き寄せたい所。それでも、この90分間は“師匠”が意地を見せてくれる気が。すなわちホームチームの群馬が勝利する「1」にマークします!

文=土屋雅史

J3は当せんの行方を左右する重要な要素。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ3攻略のカギを語る! サッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/top/)』にて、『今週のJ3(http://www.totoone.jp/j3/)』が好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J3リーグ第16節
2018年7月1日(日)17時キックオフ
AC長野パルセイロvs福島ユナイテッドFC(長野Uスタジアム)

■明治安田生命J3リーグ第16節
2018年7月1日(日)19時キックオフ
ザスパクサツ群馬vsカターレ富山(正田醤油スタジアム群馬)

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