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【ライターコラムfrom川崎】「今年こそ」の決意を胸に、力強く前進し始めた武岡優斗

蔚山現代戦でフル出場を果たした武岡(右)。試合に敗れた後、自身のブログで「悔しい」と綴っていた [写真]=Getty Images

「自分は去年一年間、動けてないのでスタートラインが同じであっても違う。去年に何もやってない自分は同じスタートラインではないですね」

 シーズン開幕前の武岡優斗の言葉である。

 昨年のリーグ戦出場は3試合で、ルヴァンカップや天皇杯の出場はなし。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)ではホームのイースタンSC戦で途中出場。一昨年の11月に行った左ひざの手術から一時は復帰を果たし、シーズン序盤に出場したものの、その後は再びリハビリに時間を費やした。クラブ悲願となるリーグ制覇を達成したが、彼自身は不本意なシーズンだったと言える。「去年は何もやっていない」と自分を評するのは、そういう思いからなのだろう。

 そこで、今季は「ケガをしないこと」を最優先にキャンプから過ごした。概ね順調で、3月にはACLの蔚山現代戦でベンチメンバー入りするなど公式戦復帰のチャンスが近づいているようにも見えたが、本人は冷静だった。

「僕の中では根本的なところで身体がまだ動いていなかった。誰を選ぶ、選ばないは監督が決めることなのでメンバーには入っていましたが、今、試合に出て結果を残せるかというと僕の中で、ノーでした。だから目先の試合に合わせるのではなく、フィジカル的に追い込むことで、3月の一カ月間を有効活用しようと思いました。シノさん(篠田洋介フィジカルコーチ)にも手伝ってもらって、まずは自分の身体を動くように持って行こうと。2日やって1日は何もしないというのを5クールぐらいやって、身体が大分動くようになりました」

 待望の公式戦復帰を果たしたのは、4月4日のACLのアウェイ上海上港戦だった。昨年5月以来となる約1年ぶりのピッチだったが、本人に高揚感はなかったという。

「しんどかったですけど、高ぶるものは特になかったですね。高ぶったところで何も変わらないので」

 対戦相手にはフッキとオスカルというブラジル代表経験者がおり、しかも武岡はそんな彼らとマッチアップした。特に後半は、左サイドにポジションを移してきたフッキにボールが集まり、オスカルと連係しながら何度も強引な仕掛けを繰り返してきた。「フッキとオスカル、うまかったですね。フッキは見ての通りですよ」と笑うが、1年ぶりの復帰戦でフッキとオスカルと対峙するなど考えただけで頭が痛くなりそうである。

 この試合でスタメンで出場した武岡は90分フル出場を果たす。「しんどかった」とは言うが、1試合をやり切れたこと、そして試合に出ることで得たものをあらためて感じたという。

「やっぱりいくら練習試合をしても、本番の試合でできるかどうかはわからないので。練習と試合が別物という言い方が良いかどうかは難しいですけど、試合でしか得られないものも大きいですから。もちろん、練習試合でも試合と同じテンションに持っていかないといけないのだけど、それはなかなか難しいです。同じワンプレーでも練習と試合では違うし、ケガもしたくないですからどうしてもセーブしてしまうところがある。でも試合では、それを全部取っ払ったものを出せる。それを90分間出せたのは大きかったですね」

 その後はリーグ戦でもベンチ入りして途中出場を果たす機会が増え、4月18日のACL・蔚山現代戦でも再びフル出場を果たす。リーグ第9節の鹿島アントラーズ戦でも、試合終盤に出場。リードしている展開で、対人守備に秀でた武岡が最終ラインに入ることはチームにとって「逃げ切りの合図」でもある。華麗なパスワークやゴールの崩しが魅力なチームにおいて、対人の強さでスタジアムを沸かせることができる存在だ。武岡にしかできない役割があるのである。

「今年こそ」という思いは、もしかしたら、チームの誰よりも強いのかもしれない。準備を重ねた我慢の3月、帰還を果たした充実の4月、そして躍進に向けた5月へと、武岡優斗は力強く前進し始めている。

文=いしかわごう

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