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【インタビュー】“仕掛人”が語る…『eJ.LEAGUE』が秘める可能性

2018.04.30

[写真]=渡辺真行(Agence SHOT)

 3月9日、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)はサッカーゲーム『FIFA』シリーズを競技タイトルとしたeスポーツ大会『明治安田生命eJ.LEAGUE』(以下、『eJ.LEAGUE』)の開催を発表した。

 予選ラウンドはオンライン上で3月30日に開始され、5月4日には「J1推薦枠」の5選手と、予選ラウンド・敗者復活ラウンド通過者10名を合わせた15名による決勝ラウンドが開催される。

 プロスポーツ団体が開催する注目のeスポーツ大会、『eJ.LEAGUE』。その開催に至る経緯や将来の展望について、株式会社Jリーグマーケティング代表取締役社長の窪田慎二氏に話を聞いた。

インタビュー・文=鴫原盛之(フリーライター)
写真=渡辺真行(Agence SHOT)

■記者会見時の反応で確信を得た

[写真]=渡辺真行(Agence SHOT)

──まずは『eJ.LEAGUE』開催に至る経緯を教えていただけますか。
Jリーグマーケティングという会社は昨年の4月にできたのですが、いくつかある事業の中にゲーム事業がありまして、eスポーツが盛り上がりを見せる昨今、Jリーグとしてどう取り組んでいくべきなのかを勉強をするところから始めました。その後、FIFAが2004年から開催していた『FIFA Interactive World Cup』を『FIFA eWorld Cup』という名称に改め、より大きな規模で実施するという情報が入ってきたんです。我々のトップパートナーであるEAさんの『FIFA 18』を使用した大会ということで、EAさんのほうからも「参加しませんか?」と声をかけていただき、すぐに「やろう」という話になったんです。

──開催に向けて実際に準備を始めたのはいつ頃からですか?
去年の秋頃ですね。いろいろと話を伺ったところ、アジアの中でお声がけがあったのはJリーグだけで、『FIFA eWorld Cup』にはJクラブの代表として選手が出場できるとのことだったので、大会の価値を考えても断る理由がないなと感じました。

──半年間くらいの期間で開催にまでこぎつけたんですね。
まずは村井(満)チェアマンと社内に内容を説明し、その後、各Jリーグクラブの代表者が集まる実行委員会、そして理事会で承認を得るという段取りで進めました。クラブの社長さんの中には、そもそもeスポーツのことがわからないという方もいらっしゃったので、まずは「eスポーツとは何なのか」という根本的なところからお話をしました。

──eスポーツを知らない方に理解していただくのは大変でしょうね。
実は、事前に妻を相手にeスポーツを説明するシミュレーションをしたんですよ。妻には「何それ?」っていう顔をされてしまいましたけどね(笑)。ただ、ありがたいことに、お話をするうちにクラブの社長のみなさんからは「面白そうだね」と言っていただけるようになったんです。会議の後に、実際に『FIFA 18』を遊んでもらったのですが、ゴールを決めた実行委員が叫びながら大喜びしている姿を見て、「これはいけそうだな」と感じました。

──開催を発表した記者会見以降、どんな反響がありましたか?
厳しいご意見をいただくこともあるんじゃないかと思っていましたが、全くありませんでした。ポジティブに捉えていただけたようでありがたいですね。

──会見にはサッカーやゲームのメディアだけではなく、エンタメ系の雑誌や経済紙といったさまざまなジャンルのマスコミが取材に訪れていました。
そうですね。会見には決勝ラウンドに参加するマイキー選手にもお越しいただいたんですが、会見後に村井チェアマンとゲームで対戦していただきました。その時の、普段あまりゲームに触れないメディアの方の反応や盛り上がりがすごかったので、これはうまくいきそうだなという確信のようなものが得られました。

──そのマイキー選手を含む5選手は、「J1推薦枠」という形で決勝ラウンドを戦います。この「J1推薦枠」に対しては、各クラブからどんな反応がありましたか?
クラブのほうから選手に声を掛けたケースもあれば、その逆もあったようです。サガン鳥栖は提携しているオランダのアヤックスから選手を期限付きで獲得して参加いただきましたが、そうした多様な取り組みがあったことは非常に良かったと思っています。

──今後は鳥栖以外のクラブでも、実際のサッカーと同じように海外から選手が加入することもあるのでしょうか?
今から25年前、Jリーグが始まった頃には海外の有名な選手が来日して盛り上げてくれましたよね? そんな状況を作るのも一つのやり方じゃないかとは考えています。

■2018年5月4日は“歴史が始まる日”

[写真]=渡辺真行(Agence SHOT)

──一方で、海外と比較すると日本のeスポーツの盛り上がりはまだまだという印象は拭えません。今後、『eJ.LEAGUE』をどのように盛り上げていきたいと考えていますか?
海外では4万人もの観客が集まるeスポーツ大会が開かれることもありますが、日本でも不可能ではないと思っています。今の若い世代の方々は、生まれた時からスマホが身近にあって、学校でもタブレットを使って勉強をするようになっていますから、我々よりもそうしたものに対するリテラシーが非常に高いと思うんです。若い方々がゲームをきっかけに、リアルのサッカーにも興味を持っていただけたらありがたいですね。

──今はスマホさえあれば、誰でもeスポーツが見られる時代ですからね。
私たちの世代は漫画やアニメ、例えば『キャプテン翼』を見て、クロスバーにボールを当ててオーバーヘッドを決める、ということが本当にできると思って遊ぶわけじゃないですか。実際は絶対にできないんですが(笑)。漫画がきっかけでサッカーをやってみようかなと感じる子もいれば、すでにサッカーをしている子どもたちも、「僕もこんなプレーをしてみたいなあ」と思ったりすることがありますよね。もちろん今でも漫画はありますが、ゲームがサッカーに興味を持つきっかけになってもいいのではないかと思っています。

──一方、日本では法律などの問題によって高額の賞金を出せる大会を開催するのが難しいという状況にあります。『eJ.LEAGUE』では、今後賞金を用意する予定はありますか?
景品表示法などの問題があることは認識しています。一方で、その解釈の仕方がたくさんあることも認識していまして、あるところに行けば「問題ない」とも言われますし、またあるところでは「こんなリスクがある」という話を受けたりします。それが日本の現状ですよね。ですが、今後は整備が進むと思っていまして、そうすれば日本におけるeスポーツの可能性がさらに広がっていくと思っています。今回の『eJ.LEAGUE』は、『FIFA eWorld Cup』の予選という位置付けですので、賞金を出すことは考えていません。あくまで「出場権を争う」という目的で実施しています。ただ、今後はJリーグが独自で大会を主催する可能性もあると思っています。具体的なことは今大会の反省を踏まえて進めていきたいと思います。

──Jリーグと同様に『eJ.LEAGUE』が定着し、出場した選手が結果に応じた賞金がもらえるようになれば、夢が膨らみますね。
他の国では通年のリーグ戦をしたうえで代表者を決めているところもあるようです。私たちもそういった方向性を含めて、いろいろな可能性があるんじゃないかと思っています。eスポーツは老若男女、誰もがプレーできますし、身体に障がいをお持ちの方でもプレーできます。そのため、プレーヤー層という意味でも、『eJ.LEAGUE』の可能性は広がっていくと思っています。

──では最後に、5月4日の決勝ラウンドに向けて窪田さんご自身が期待することをお聞かせください。
初めての試みですので、まずは無事に開催できるようにしたいというのが本音です(笑)。先ほど25年前の話をさせていただきましたが、決勝大会が行われる5月4日というのは、Jリーグが開幕した1993年の5月15日と同じように“新たな歴史の第一歩”になる可能性があると思っています。Jリーグは25年という時間をかけて成長してきたわけですが、今回出場する選手の皆さんには、『eJ.LEAGUE』も同じようにしていくんだという気持ちで参加していただけたらうれしいですね。

『明治安田生命eJ.LEAGUE』公式HP

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