2018.03.30

【土屋雅史氏のJ2展望】岐阜の指揮官は古巣の甲府と激突…水戸vs町田は3位と2位の上位決戦

昨季から岐阜の監督を務めている大木武監督。独自のスタイルをクラブに持ち込んだ [写真]=J.LEAGUE
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■甲府の礎となった、現・岐阜指揮官

 リーグ前節、敵地で今季2勝目を手にした13位の岐阜が、なかなか勝ち点を積み重ねきれずに、やや苦しいシーズンスタートとなった18位の甲府を本拠地に迎える一戦。このゲームからは、甲府に初めて「J1で戦う」という楽しさをもたらした、岐阜の指揮官にスポットを当てたいと思います。

 昨季から岐阜を率いることになるや否や、その独特なスタイルでJ2に新風を吹き込んだ大木武監督。Jリーグが発足した1993年から下部組織も含め、地元の清水で9年に渡って指導を続けていた彼が、初めてトップの監督という立場になったチームが、2002年シーズンの甲府でした。

 その前年に経営危機が表面化し、何とかクラブの存続が決まったタイミングで、甲府へとやってきた大木監督。3年連続最下位という、非常に不名誉な記録を残していたチームに、持ち前の情熱と明確な理論を携えた指導を行うと、若い選手たちがのびのびと躍動。特に藤田健、石原克哉、倉貫一毅といった20代前半の選手たちが主力として成長し、7位でシーズンフィニッシュ。大木監督は清水の監督就任要請を受けて、1年で甲府を去ることになりますが、クラブはサッカー面で確かなベースを築くことに成功します。

2002年シーズン、当時3年連続最下位に沈んでいた甲府の指揮官となった大木監督。のちにJ1の舞台で粘り強く戦うチームの基礎を作った [写真]=J.LEAGUE

 そして、再び大木監督が甲府の地へ戻ってきたのが2005年。既に中位をキープする力を付けていたチームは、大木イズムの復活と共に大きく躍進。シーズン終盤まで昇格争いを繰り広げ、リーグ3位でJ1・J2入れ替え戦へ進出すると、今や伝説となっているバレーのダブルハットトリックで柏を退け、涙の初昇格が決定。試合後、泣きじゃくるバレーに笑顔で「オマエ泣くんじゃないよ」と優しく語り掛ける大木監督の姿を、今でも鮮明に覚えています。

 この2005年シーズンも佳境に入っていた頃、私は大木監督へインタビューする機会に恵まれました。一番印象に残っているのはこのフレーズ。「このチームでは『プレイすること』が一番大事。『倒れてもすぐ立て』と言いますよ。“アクター”ではないから。サッカーはプレイするから“プレイヤー”という。僕らのチームは11人全員が“プレイヤー”です」。この言葉は自らのサッカースタイルを構成する要素として、今でも大事にされているはずです。

 J1初挑戦となった2006年は15位で見事に残留を勝ち取り、そのアグレッシブなスタイルと共に多くの人の共感を集めた大木ヴァンフォーレ。翌シーズンは降格を強いられることになりましたが、3桁しか観客が集まらなかった時代を知る甲府が、5桁に近いサポーターを集めるまでになった経緯の中で、大木監督が果たした功績に計り知れないものがあることは、改めて言うまでもないでしょう。

 甲府のJ2降格を受けて、久々に実現することとなった『大木武×ヴァンフォーレ甲府』。2012年に大木監督が率いていた京都と甲府の対戦成績は、京都から見て1勝1分ですが、小瀬でのゲームはアウェイチームがホームチームを3-0で粉砕しており、『大木武×ヴァンフォーレ甲府』の相性は前者に分が。ただ、岐阜と甲府の対戦成績に目を移すと、リーグ戦では過去10度対戦している中で、岐阜は5分5敗と1度も勝っていないんです。果たしてどちらのデータを信じるべきか。非常に難しい所ですが、ここはアグレッシブなゲームを期待しつつ、どちらのデータにも該当しそうな「0」にマークしてみます。

■全国高校選手権で注目を集めた2人が、水戸と町田の指揮官として相まみえる

 開幕ダッシュに成功した3位の水戸と、いまだ無敗で2位につけている町田が激突する、今節屈指の好カードと言えそうな上位対決。このゲームは揃って1971年生まれでもあり、共にバルセロナ五輪予選も戦った指揮官の“高校選手権”をフィーチャーしたいと思います。

 今季から水戸を率い、早くもその実力を示し始めている長谷部茂利監督は、桐蔭学園高校の出身。3年時には同学年に戸倉健一郎、1学年下に林健太郎、福永泰、2学年下に栗原圭介とのちのJリーガーをズラリと揃えたチームを主将としてまとめ、同校にとって初めてとなる高校選手権での全国切符を獲得。関東大会優勝、全日本ユースベスト4という成果を引っ提げ、初出場ながら優勝候補として大会に挑みます。

 一方、町田での第二次政権も5シーズン目となる相馬直樹監督は、清水東高校の出身。言わずと知れた強豪ひしめく“王国”の中でも、清水FC時代に全国優勝を経験し、3年続けて国体選抜に選出されるなど、その存在を広く知られていた相馬監督でしたが、高校選手権は1年時に東海大一、2年時に清水商業とそれぞれ全国で準優勝、優勝を成し遂げるチームに予選で敗れ、晴れ舞台には届かず。そしてラストチャンスとなった3年時に、その清水商業と東海大一を続けて破り、ようやく冬の全国出場を手繰り寄せます。

水戸の長谷部監督と、町田の相馬監督。高校生の時には、どちらも全国高校選手権に出場している [写真]=J.LEAGUE

 長谷部監督の選手権デビューは鮮烈の一言。1回戦の山口戦で前半32分までに3ゴールを叩き込み、ハットトリックを達成し、チームも5-1で勝利を収めると、2回戦の岐阜工業戦も1ゴール1アシストの活躍で5-0の快勝に貢献。さらに、3回戦も伝習館を4-0で退け、3試合で14得点1失点という驚異的な数字を残してのベスト8進出。『桐蔭強し』を印象付けます。

 6年ぶりの全国となった清水東は2回戦から登場。徳島商業相手に1年生の斉藤俊秀や2年生の野々村芳和もスタメンに名を連ねる中で、キャプテンの相馬監督もフル出場を果たし、3-0できっちり初戦突破。上々の滑り出しを見せましたが、そんな彼らの前に3回戦で立ちはだかったのが1年生で武南の10番を背負っていた上野良治。後半にスーパーなボレーで先制ゴールをマークすると、清水東の猛攻も及ばず、ゲームは1-0でタイムアップ。「全国制覇するために清水東に入った」という相馬監督の夢は、ここで潰えることとなりました。

 桐蔭学園が国立競技場を懸けて、準々決勝で対峙したのが群馬の前橋商業。一昨季まで群馬で監督を務めていた、超高校級ストライカーの服部浩紀を擁する相手に、福永のゴールで先制したものの、その服部の2ゴールで前橋商業が逆転に成功。ところが、桐蔭学園は長谷部監督が直接FKで同点弾を記録し、ゲームは振り出しに。最後はPK戦で前橋商業が競り勝ち、長谷部監督の選手権もベスト8で幕を閉じることになりましたが、その洗練されたスタイルも含めて、新時代の到来を告げるかのようなチームの中で、10番のキャプテンだった長谷部監督の存在感が際立っていたことを、ハッキリと記憶しています。

 そんな2人は前述したように、バルセロナ五輪予選を経験した大学時代を経て、プロの道へ。引退後は指導者を志すと、今ではJリーグのクラブを監督として率いるようになり、今節で監督同士としては初対戦を迎えます。水戸の前節は横浜FC相手にスコアレスドロー。ここ2試合は白星こそ挙げられていないものの、数多くの選手がスタメン起用されており、チームの底上げも確実に着手。対する町田の前節も金沢と引き分けましたが、先制を許す中で追いついての勝ち点1獲得。終盤の大ピンチもスタメンを外れ、途中出場に奮起した酒井隆介がスーパークリアで凌ぐなど、粘り強いゲームを続けており、そう簡単に崩れる気配はありません。過去のリーグ戦における対戦成績も、1勝4分1敗とまったくの五分。この一戦もお互いが守備の堅さを披露しながら、ドロー決着となる「0」を予想します。

文=土屋雅史

予想難易度が高いとされるJ2は、toto当せんのカギを握る重要な要素の一つ。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ2を徹底解剖する! 『今週のJ2(http://www.totoone.jp/j2/)』はサッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/)』にて好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J2リーグ第7節
2018年4月1日(日)14時キックオフ
FC岐阜vsヴァンフォーレ甲府(岐阜メモリアルセンター長良川競技場)

■明治安田生命J2リーグ第7節
2018年4月1日(日)14時キックオフ
水戸ホーリーホックvsFC町田ゼルビア(ケーズデンキスタジアム水戸)

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