2017.12.13

【ライターコラムfrom松本】「勝負強さ」を欠きJ1昇格ならず…苦難と転機の8位、未来への道筋は明確に

今季は8位。来季こそJ1を目指す [写真]=J.LEAGUE
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

 松本山雅FCの2017年は、目標と結果の落差が過去最大の苦しいシーズンだった。

 昨季の勝ち点は84。もちろん1年ごとにリーグ全体のパワーバランスは変わるから単純比較はできないが、今季に当てはめれば優勝した湘南ベルマーレを上回る勝ち点を積み上げた。しかし土壇場でJ1自動昇格を逃し、「勝ち点1の重み」をテーマに捲土重来を期して新シーズンに突入。選手たちも異口同音に「J2優勝」「J1昇格」を掲げていたが、ふたを開けてみればなかなか上昇気流に乗り切れなかった。

 最終的には19勝9分け14敗で8位となり、J1昇格プレーオフ進出も逃して閉幕。勝ち点66はJ2の成績で比較すれば、参入2年目の2013年と同じ数字だ。「死力を尽くした結果なので受け入れざるを得ない。色々な意味で厳しいシーズンだったが、現場は選手もスタッフも全力を尽くしてやってきたと思っている」。最終節の京都サンガF.C.戦で敗れてJ1昇格プレーオフを逃した後の記者会見で、反町監督はそう今季を総括した。

 それから3週間余。クラブはすでに課題を洗い出し、来季の戦力を整えるフェーズに突入している。この段階で、改めて後ろ髪を引くような「敗因分析」を加える必要性があるのか。本稿の執筆依頼を受けたときそう感じたのが正直な心境だが、世に出ている「フェアな総論」が数少ないのも事実。そのため、あえてこの場を借りて多角的に検証したい。

 走力とハードワークを基盤にしつつ、能動的にボールを動かすスタイルは昨季を踏襲。選手の顔ぶれも大きく変わったわけではない。だが今季の松本は時折ルーズさが顔を覗かせ、「勝負強さ」に欠けていた印象が先行する。

石原崇兆

勝利が求められた最終節で勝ち点を積み上げられず [写真]=J.LEAGUE

 その原因を要素ごとに分解していくと、まずは失点の多さが目を引く。総失点は昨季リーグ最少の32だったのに対し、今季は45と大幅に増加。反町監督が一つの目安とする「1試合平均1以下」を下回る数字に終わった。「序盤は後ろが不安定で自分たちのバランスが崩れてしまったというのは間違いなくあるので不甲斐ない」とディフェンスリーダーの飯田真輝。しかも流れの中から完全に崩されたり、セットプレーの頭脳戦で敗れたりした失点は少なく、クリアミスに起因するものやバイタルエリアでのマークが緩んだ一瞬を突かれるケースが頻発した。記憶に新しい京都との最終戦も同様で、FKをクリアし切れず相手にボールが渡っての失点だった。

 試合終盤での底力が出せないのも要因の一つだった。時間帯別の得点数を見ると、76分以降のゴール数は7でリーグ22チーム中ワースト2位タイ。途中交代でガラリと流れを変えたり、終了間際に走力の差を発揮して試合を動かしたりするケースは明らかに少なかった。ならば先行逃げ切りといきたいところだが、後半の失点は30でトータルの66パーセント。象徴的なのは第34節レノファ山口FC戦だった。2-0で迎えた終盤、84分の失点を皮切りに大崩れしてまさかの逆転負け。後半早々の追加点が相手の凡ミスで得たオウンゴールだったという要因もあり、2点リードの段階で油断が生じたことは否定できない。

 元来、一切の慢心を排した「弱者のサッカー」からスタートしてステップアップしてきた松本。なぜ勝負強さが消えたのか。その原因を探ると、シーズンを通して薄雲のようにチームを覆っていた「停滞感」に行き着く。

 人間誰しも、物事をうまく運べないと「自分以外の何か」に責任を転嫁したくなるもの。このシーズンの松本も例に漏れず、反町監督を含めてどこか他人事のようだったことは否めない。指揮官はチーム編成に苦言を呈する意味で再三「30歳以上の選手が多い」などと会見で発信したが、これを知った選手たちの士気は果たして上がっただろうか。もちろんJ2参入1年目にゼロからスタートし、6年間でチームを急成長に導いた功労者が反町監督であることに異論を差し挟む余地はない。個人的にもその仕事ぶりには私淑しているが、この点に関しては「自ら状況を難しくしてしまったのではないか」という思いが拭えなかった。

 また、指揮官は「若手の突き上げが足りない」という主旨の発言もセットのように繰り返した。もちろん監督は全責任を背負って目の前の一戦で結果を出すことから逆算するため、少なくともその眼鏡にかなわなかったことだけは確か。実際に湘南を率いていた2010年には遠藤航(現浦和レッズ)や永木亮太(現鹿島アントラーズ)らを見出して重用していたから、「ベテラン優遇」とレッテルを貼るのもいささか性急だろう。自身もそうした見方に対し、特別指定選手のDF下川陽太らを例に挙げながら「使えるヤツがいれば使っている」と語気を強めていた。

 だが実際に若手の力量不足だったのか、与えられたチャンスが不足していたのかは定かでない。少なくともクラブ内に「ガマンして褒めて伸ばせば戦力になり得る」とする向きがあったこともまた事実。そしてそれは、「プロ選手は『育てる』のではなく『育つ』もの」という反町監督の指導哲学とは食い違う。

 それでもシーズン当初の指揮官は、譲歩の姿勢を示すかのようにMF志知孝明(夏にJ3福島ユナイテッドへ期限付き移籍)、FW岡佳樹、DFジエゴら20代前半の選手を随所に起用していた。だが思うように勝ち点を積み重ねられず、実質的な「ラストチャンス」となったのが第14節モンテディオ山形戦。3連戦の2試合目で長距離バス移動を強いられる遠距離アウェイだったこの一戦で、エース高崎寛之や不動のボランチ岩間雄大らを帯同させないターンオーバーに踏み切った。その結果は、なす術なく0-1で敗戦。以降は下川がチームに合流していた時期を除き、スタメン11人の平均年齢は29~30歳だった。

 ただそもそも、眼前のミッションに没頭する現場と中長期的なビジョンも考慮するクラブの考えが同じ像を結ばないことは決して珍しい話ではない。それがJリーグ参入6年目にして初めて表面化しただけのこと。そうした状態にありながらも夏場以降に成績を伸ばし、一時は4連勝を含む6試合負けなしで2位に勝ち点差4まで迫ったのはある意味で健闘したとも言える。選手の流した汗と涙、そしてサポーターの声援に一切の偽りがなかっただけに無念さは残るものの、魔法が解けたわけでも物語が終わったわけでもない。

反町康治

来季も反町監督が指揮を執る [写真]=Getty Images

 そしてシーズン終了後。クラブ側はチーム統括本部の人員を増強させることで反町監督のリクエストに応えた。指揮官は自身最長をさらに塗り替える7季目の続投を決意し、その後は「自分が全て正しいわけではない」「生まれ変わらなければならない」などと発言。クラブとしての大きな転換点でもあった局面で、双方は再び歩み寄って未来へのリスタートを切ったのだ。新任の柴田峡・編成部長は「皆がクラブをいい方向に向かわせようとしていて、その立場が違っただけ。決して今までの強化を非難するつもりはないし、自分が来たから良くなったという構図でもない」と力説。個人的にも同感だ。さらに、プレーオフに絡めなかったことをプラスに捉えれば、1~2週間早いタイミングで来季への動きをスタートさせることができている。この「アドバンテージ」を生かさない手はない。

 このように松本は苦い経験を糧とし、例年のチームスローガンでもある「One Sou1」に回帰。賽は投げられ、水戸ホーリーホックにレンタル移籍中でJ1クラブも熱視線を送っていた20歳の快足FW前田大然は復帰を決めた。このほか大卒ルーキーも、今季すでに左ウイングバックで8試合に出場した下川ら3選手の加入が発表済み。「若返り」への布石は次々と打たれている。このほかパウリーニョ、セルジーニョのブラジル人MF2人と飯田の契約更新も発表。例年の傾向からすると異例の早さと言える。

 思い返してみれば、2015年のJ1時代から3年連続で目標を達成できていない松本。飯田を筆頭に、その悔しさが骨身に染みているベテランも少なくない。来季はそうした古株とフレッシュな若手が激しくせめぎ合う、新しい姿を見せてくれるだろう。

文=大枝令

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