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【ライターコラムfrom千葉】ハイライン&ハイプレスでJ2を席巻…「自分たちのサッカー」で見えた昇格への光

J1昇格は叶わなかったが、確かなスタイルを確立した [写真]=Getty Images

 今季のジェフユナイテッド市原・千葉を表す言葉は「ハイライン&ハイプレス」だった。

 新しくチームの指揮を執るアルゼンチン人のフアン・エスナイデル監督はレアル・マドリード(スペイン)やユヴェントス(イタリア)など数々のサッカー強豪国を渡り歩き、指導者としてもサッカーの最前線で戦ってきた。その経験が勝利するために必要なフィロソフィーをチームに植え付けた。

「積極的に前からボールを取りに行く。決断をして覚悟を決めて前に行くチームを作っていきたい」とチーム作りの方向性をシーズン前の就任会見から示していた。

 これまで「千葉のサッカーの特長は?」と訊かれてもと明確に指し示す輪郭はなかったが、指揮官は「ハイライン&ハイプレス」を軸にインテンシティーが高く、攻撃的に前からボールを奪うサッカーをチームに求めた。

「攻撃的に戦い、どの試合でも主導権を握る。勝利は他人が与えてくれるものではなく、自分たちが主役となり勝利を掴みに行かなければいけない」

 それと同時にピッチ外でもプロフェッショナルとしての改革を求めた。強度の高いフィジカルメニューを消化するため、そして長丁場となるリーグ戦42試合を戦い抜くための食事管理とコンディション作りを徹底させた。キャンプから1日4回の食事を義務付け「栄養素が高く、脂肪が少ないモノに変えることでパフォーマンス、フィジカルコンディションは上がる」(エスナイデル監督)。また練習時間も前夜に通達することで選手に緊張感を持たせ、これまでとは違った柔軟性とマネジメント法でベースを作り上げて行く。

「選手の意識は高くなっている。セルフケアの意味を分かったらピッチの外にいてもサッカー選手で居続けることが出来る。サッカー選手は24時間サッカー選手でいることが大切。体は商売道具」と練習から真の100パーセント戦うための集団を作った。

フアン・エスナイデル

ハイライン&ハイプレスのスタイルを千葉に落とし込んだ [写真]=Getty Images

 そして迎えた注目の明治安田生命J2リーグ開幕戦はアウェイでFC町田ゼルビアに1-0で競り勝つ。ここまで新戦術に対し思考錯誤をしてきた中で、標榜するサッカーが実を結び勝ち点3をもぎとったのだ。サイドを起点に2列目、3列目の選手が攻撃に絡んで行く。得点を決めた町田也真人は「勝てたがことが嬉しい。自分たちの形がゴールにつながった」と安堵の表情を浮かべた。

 2勝1分けの上々スタートを切ったが、その後は2連敗を喫し4戦未勝利と停滞。不安定は戦いが続く中、第13節のV・ファーレン長崎戦ではチームの超攻撃的サッカーが爆発。新加入の清武功揮がリーグ初となるハットトリックも記録し、“難敵”長崎を5-0で沈めた。「決めるべき所で決められた。セットプレーで得点を取れたことが、このゲームを優位に進められた要因」(清武)と分析する。3試合ぶりのクリーンシートも達成し明るい展望も見えたが、足踏み状態となり序盤の連勝も1度のみ。波に乗れず思ったように白星を積み上げられず前半戦8勝6分け7敗と苦戦を強いられることになる。

 ボールを保持するがチャンスに仕留められないシーンも散見。またアンカー脇のスペースを突かれること、広大に広がる最終ラインの背後にロングボールを放り込まれ2列目からの飛び出しに手を焼き結果がついてこない時期も続いた。

 当時のチーム状況をキャプテンの近藤直也は「連勝がないので勝って行きたい。自分たちのやることも変わらないし、試合を支配してチャンスも作っている。みんなが意識を持ってまとまれるチームになったらもっと安定する」と話した。

 勝利するための思考錯誤を繰り返す中、近藤は普段のトレーニングでの戦術練習から監督やメンバーと話し合いを重ね、目の前の課題と向き合いラインコントロールのブラッシュアップを図る。“ラインを上げるべきところは上げ、下げるべきところは下げる”微修正を加えながらチームメイトとの連係も向上させた。メリハリの効いた守備で的確な指示と判断で最終ラインを統率した。「監督も柔軟性を持たせてくれる。試合を重ね流れに応じた変化を加えて行く中、チームでメリハリを共有している」(近藤)と戦術を遂行しながら、ピッチ上での対応を自ら考えベストなプレーを判断し表現して行く。

 一方、チャンスを決め切れず好機を逃していた攻撃陣もエンジンが点火。スペインで2年連続二桁得点をマークし、鳴り物入りで加入したラリベイが実力の片鱗を見せる。第19節までは2得点しか決められなかったが、リーグ戦の折り返しとなった第22節のカマタマーレ讃岐戦では3戦連発となるハットトリックを記録。追いすがる相手を4-3で突き放した。通算38試合で19得点と結果を出したラリベイは「前半戦は難しい時期となったが、自分を信じた結果が形になった」。日本のサッカーに順応したことでエースが覚醒。決定力不足に泣いてきたチームに救世主が現れた。

 そして夏場の補強期間には、中盤の強化として矢田旭と為田大貴を加え、第26節の徳島ヴォルティス戦、第27節のレノファ山口FC戦で今季2度目となる連勝。勢いをつけた第28節の湘南ベルマーレ戦では一方的に試合を支配し、19本ものシュートを放つがセットプレーの1発に沈み、ホームでの不敗神話は13で崩れた。またアンラッキーな失点と攻守のミスもありここから第35節までの8試合は1勝2分け5敗と大きく黒星が先行。アウェイで勝点を拾えないことも響きプレーオフ圏内から遠のく12位まで順位を下げていた。

 “負けたら終わり”の厳しい局面の中、チームに激震が走った。アンカーとして急成長を遂げていた熊谷アンドリューが9月下旬に暴行容疑の不祥事を起こし、公式戦4試合の出場停止と減棒の処分を下された。大きな痛手となったがエスナイデル監督は、これを機にダブルボランチへと舵を切ると第36節のファジアーノ岡山戦から4-4-1-1の布陣で臨んだ。試合途中に船山貴之がサイドから下がり目のFWとしてプレーし、ボールを引き出し攻撃の起点を作り3-1で試合を制すと、続く松本山雅FC戦でも5-1の完勝した。苦手のアウェイゲームでも勝ち切れるようになると、J1昇格プレーオフ進出の条件として他力という要素と目の前の試合に勝つことでしか道が開けない最終節の横浜FC戦。1-1で迎えた後半アディショナルタイムのCKを近藤がヘディングで捻じ込み勝利を飾ると、クラブ記録となるシーズン終盤の7試合を怒涛の7連勝でフィニッシュ。貫いてきたスタイルが浸透し、イニシアチブを握れる試合が増えたことで、後半戦を12勝2分け7敗とし、年間勝ち点68(20勝8分14敗)を積み上げてプレーオフ圏内の6位に滑り込んだ。

近藤直也

近藤の劇的弾で6位に滑り込む [写真]=Getty Images

 エスナイデル監督は「チームは僕の要求することが出来ている。僕のやりたいことと(選手)彼らがやりたいことが合致している。試合にありったけの情熱をぶつけた。ハードワークをした。シーズン当初よりいいチームになっている」と目を細めた。

 昇格を懸けたプレーオフ準決勝の相手はJ2最多の得点力を誇る名古屋グランパス。だが、リーグ戦では2戦2勝(2-0/3-0)と赤鯱を寄せつけない強さを見せていた。しかし、3度目となった対決には大きな落とし穴が待っていた。相手の術中にハマりチームの良さを出せず精彩を欠きリズムを掴めずに2-4でまさかの敗退となった。

「7連勝をして勢いは自分たちにあったが、ここを勝ち抜くには勢いだけでは足りない。最終的にリーグ6位という結果が、この日の結果を表している。シーズンを通して、しっかりとした戦いができなければ」(佐藤勇人)と、年間を通しての安定感が足りない課題を口にした。

 悲願の昇格には手が届かなかったが、ただ結果以上にチームはブレずに練度を高め“精強で戦う集団”として大きく成長をしたシーズンだった。リーグ終盤の戦いぶりが来季も継続されればJ1昇格は夢ではないはずだ。

 近藤が力を込めて言う。

「自分たちのサッカーを貫くことで勝ちにつながること、それを信じる逞しさもある。安定感を出して経験値をこれからも積み、メンタルの強さを発揮できたらもっと上に行ける」

 自らのスタイルを構築した千葉。これをチームのレガシーとするためにも際限のないさらなる進化の道を歩むことが必要となる。

文=石田達也


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