2017.11.19

【コラム】勝負事の肝を心得ていた川崎。“我慢”の戦いで繋いだ優勝の可能性

残り2試合で首位鹿島との勝ち点差は「4」。川崎の鬼木監督は「数字上は(J1優勝は)他力だけど」と話しつつ「自分たち次第で、まだまだ可能性がある」と力強く口にした
朝日新聞。2010、14年W杯、07、15年アジア杯などを現地で取材。ゆるくつぶやいています(ツイッターアカウント:@nakagawafumi)。

 改めて思う。迷った時に立ち返れる場所があるチームは強い。

 我慢の2文字がキーワードだった。

 15分。中村憲剛が裏に飛び出し、右足の1タッチボレーをゴールの上にふかしたのが始まり。28分。奈良竜樹がCKに合わせたヘディングは東口順昭の右手にはじかれた。54分の小林悠は東口の右足、60分のエウシーニョは東口の左手、73分の家長昭博は東口の右足に。間一髪、阻まれる。

 果敢につないで好機を紡ぎ続ける川崎フロンターレ。決定的なシュートを放つたび、ガンバ大阪の守護神を乗せていく皮肉な循環をたどっていた。

「プレッシャーはあった」と鬼木達監督。18日の明治安田生命J1リーグ、試合がない首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差は7。負ければ鹿島の優勝が決まり、引き分けでも逆転の可能性は限りなくしぼむ。押し込んで、打てども打てども入らない。いつもの川崎なら、焦って一発の逆襲に沈む展開。ある意味、典型的な負けパターンだった。

 こんな時、普通ならベンチは動き、策を尽くして流れを変えようとする。しかし、鬼木監督は違った。「我慢強く戦おう」。胸に決めていた。

「選手も(内容は)悪くはないと感じながらプレーしているはず。自分から変な形で崩したくはなかった」

 多彩なアタッカーが控えで満を持していた。しかし、鬼木監督がようやく切った札は76分、阿部浩之に代えて長谷川竜也。走り回って周りにスペースをもたらす、ともに似たタイプだ。リズムは保ったまま、ピッチの11人から疲れを取り除くことに腐心した。

 中村も思いは同じだった。「ヒガシ(東口)のファインセーブが多くて、けど、そこまでのチャンスはつくれている。方向性は間違っていないって自信があった。手を変えるより、このやり方のままで点を取りにいけると」

 だから、一足飛びのロングボールやパワープレーに頼ろうとはしなかった。前後左右に細かなパスの出し入れを奏でて、根負けせずガンバの守備網を揺さぶった。

 実ったのは82分、長谷川の粘りを起点に得たCKだ。中村が蹴ったボール、家長が頭でコースを変えた。遠くで待ち構えていたのはエウシーニョ。左足で東口の股の下を抜いた。

 思い起こせば今季の川崎、開幕のAFCチャンピオンズリーグから我慢の連続だった。「こういう試合を勝ちに持っていったり、ギリギリで引き分けたり、粘り強くやれるチームになった」と中村。それでも2週間前のYBCルヴァンカップ決勝で初戴冠を逃した。失意が癒えない最初の1週間。「一生懸命に練習しているんだけど、盛り上がりというか、盛り上がっていいのかどうか」との微妙な空気が鬼木監督には伝わってきた。ミーティングで告げた。「自分たち次第。数字上は(J1優勝は)他力だけど、実際には自分たち次第で、まだまだ可能性がある、奇跡を起こせる」。磨き上げた看板のパスワークを「突き詰めよう」(中村)と選手も腹をくくった。

 そうやって生まれた勝利。改めて思う。リアクションに徹して現実的に戦うのもサッカーなら、自らを信じてアクションを起こし抜くのもサッカーだ。優劣はない。ただ、崖っぷちに追い込まれた時、「このサッカーでダメなら仕方ない」(鬼木監督)と割りきれる原点を持っているチームは揺るがない。

 そしてもう一つ、決勝点の余話を。CKを担う中村がひらめいていた。「あの場面までニアに蹴ってはじき返されていた。ファーに蹴れば何か起きるかもと。ファーならヒガシも届かない。跳ね返されて終わり、にもならないんで。目先を変えたら、味方が反応してくれた」

 ちょっとした機転。心の余裕、遊び心と言い換えてもいい。ボール支配率とか体脂肪率とか数字では測れない勝負事の肝を、この日の川崎は心得ていた。

文=中川文如

この試合の他の記事

欧州リーグ順位表

マンチェスター・C
52pt
マンチェスター・U
38pt
チェルシー
38pt
欧州順位をもっと見る
バイエルン
41pt
シャルケ
30pt
ドルトムント
28pt
欧州順位をもっと見る
バルセロナ
39pt
アトレティコ・マドリード
36pt
バレンシア
34pt
欧州順位をもっと見る
ナポリ
42pt
インテル
40pt
ユヴェントス
38pt
欧州順位をもっと見る

Jリーグ順位表

川崎F
72pt
鹿島アントラーズ
72pt
C大阪
63pt
Jリーグ順位をもっと見る
湘南
83pt
長崎
80pt
名古屋
75pt
Jリーグ順位をもっと見る
秋田
61pt
栃木
60pt
沼津
59pt
Jリーグ順位をもっと見る