2017.10.28

【ライターコラムfrom東京V】「いるといないとではチームが変わる」MF内田達也が新天地で得た全幅の信頼

内田達也
今季東京Vに加入した内田達也 [写真]=J.LEAGUE
フリーライター。横浜Fマリノス、ジュビロ磐田の公式ライターを経て、2007年より東京ヴェルディに密着。プロ野球でも取材・執筆活動中。

 内田達也は充実のシーズンを送っている。「もう1つステップアップするために」と、自ら下した決断は、間違っていなかった。

 25歳の誕生日を目前に、生まれて初めて故郷・大阪を離れた。ジュニアユースから、生粋のガンバ大阪っ子。2010年にトップ昇格を果たしてからも6シーズン、青黒の戦闘服だけを身に纏ってきた。2013シーズンに、キャリア最多の33試合に出場したものの、その後は、膝の大ケガなどもあり、出場機会を得られずにいた。それでも、「試合に出ていなくても、ガンバでやっていれば、成長できる」。J1優勝2回、AFCチャンピオンズリーグ優勝はじめ、常に優勝争いをするチームの中で毎日サッカーをすることこそ、最高の修行の場だと信じてきた。

内田達也

G大阪の育成組織出身の内田 [写真]=Getty Images

 だが、昨オフ、その思いに変化が訪れた。25歳のシーズンを前に、改めて立ち止まって考えた。「長い目で“サッカー選手”としてみた時に、このままやりやすい所にいてもダメなのかなと。成長できる環境に行って、試合に出なければあかん」。
 
 決めてからは、早かった。『試合に出られること』を最重要視していたため、カテゴリーが1つ下でも、厭わなかった。また、育ってきたG大阪と同様、クラブのフィロソフィーをしっかりと掲げ、「下部組織から上がってきている若い選手も多くて、上手い選手がたくさんいる」東京ヴェルディを新天地に選ぶのに、迷いは一切なかったという。

 実際、その選択は英断だったと言えよう。クラブは、今季からスペイン人監督、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督を招聘し、全員がフラットな状態からスタート。新たに持ち込まれた、スペイン流の“ポジション・サッカー”に戸惑う選手も少なくなかったが、その中で、ナニワっ子は、いち早く監督の目指すフィロソフィーを吸収し、プレーで体現した。早々から指揮官の信頼をつかむと、開幕戦からボランチで先発起用され、以後、ここまで38試合中37試合、いずれもスタメン出場が続いている(第38節終了時点)。「ウチは、我々チームが目指しているサッカーにおいて、とても重要な選手です(ロティーナ監督)」。現在5位と、プレーオフ進出争い渦中のチームにとって、絶対に欠くことのできない存在なのである。

 監督だけではない。チームメイトも、全幅の信頼を寄せる。「ウッチーがいなかったら、今年はこんな上位にいなかったと思う。いるといないとでは、チームが変わってしまうくらい重要な選手」と、強くリスペクトするのは安西幸輝だ。安西自身、今季は本職のサイドバックのほか、FW起用で、決定的シーンの演出や点を取る役割を求められることも少なくないだけに、ボランチ内田の配球が、プレーに直接大きな影響をもたらす。シーズン通して安定した好パフォーマンスを続けられている要因として、内田の存在はあまりに大きいという。「最近のヴェルディには、ああいうタイプの選手はいなかった。本当に、全体のバランスを見ながらサッカーをやっているなぁと感じます。僕とは正反対の選手。ウッチーは、全体の距離感とかを大切にしている、輪(和)を作る選手だけど、僕は、その輪(和)の中に入らない方が上手くいっている。というのは、僕みたいなタイプは、我が強くて、多少無理でも仕掛けたり、パスを選択してもいいのにドリブルで行ったりなど、強引さがないと、個性が生きなくなってしまいます。その中で、ウッチーがチームにとって一番大事な輪(和)を作りながら、僕が上手くいくように指示をしてくれる。心から信頼しています」。

チームメイトも内田への信頼を口にする [写真]=Getty Images

 また、ボランチとしてコンビを組む井上潮音も、“ガンバ風”の融合に、引き出しを増やしてもらっているという。「ウチ君は、細かいことも好きですけど、状況を見て、1本長いボールで状況を変えられたり、サイドを変えられたりできる。どうしても、ヴェルディ育ちの選手だけだと、(狭いスペースを通すのが1つのスタイルでもあるため)ごちゃごちゃとなってしまいがちな部分で、ウチ君が1度サイドを変えてくれたりすると、チーム的にもすごく楽になったりするので、勉強になります」。同じボランチでも、井上や渡辺皓太など、東京V生え抜きの若手MFにはオフェンシブなタイプが多いだけに、守備センスに長けるインテリMFの存在は、極めて貴重である。

 監督・コーチや仲間たちから、これだけ頼られていても、本人は「そんな風には感じないんですけどね」と、苦笑するばかり。起用してもらっていることへの感謝と責任感、試合に出続けることで得られている成長に手応えを感じていることは確かだが、その一方で、J1で活躍するための個人的な課題も、明確に見えてきたという。「攻撃面で、点に絡むプレーが物足りない。無難につなぐだけではなくて、もっと点に直結するプレーを意識してやっていきたい」。

 第37節のザスパクサツ群馬戦では、キャリアハイの数字を残した2013年以来、キャリア2点目となるゴールを決めた。この得点だけではなく、その前にも決定的なシュートを放っている。さらに、この試合に限らず、ここ最近は、ペナルティ・エリアでチャンスのシーンに顔を出す機会も増えており、監督も「とても重要なこと」と、評価する。だが、「1本目の決定機に決められていない。チャンスになりそうなパスも、思うようには出せていないので、まだまだ」。目指す理想像とは程遠いようだ。

「ヴェルディに来て、良かったことしかない」と、25歳ボランチ。「出場機会を求めて来ましたが、ほんまにこれだけしっかりと出られるとは、想像もできなかった」と、正直な胸の内を明かしつつも、チームに必要とされ、中心として勝敗の責任を担って戦う喜びを感じながら、東京での毎日を過ごしている。加えて、残り4試合を迎え、チームはプレーオフ進出争いの渦中にある。「この順位にいるのはすごく楽しい。プレーオフ争いは経験したことがないので、ものすごく新鮮ですし、最後まで真剣勝負が続くと思うので、そういうのが経験できているというのは、本当にやりがいがあります。このチームを、J1に上げたいです」。

 性格はおとなしいが、そのプレー、そのパスには一つひとつ、誰よりも深い考えと、意図が込められている。まさに、ロティーナ・サッカーの象徴ともいえよう。ロティーナ・ヴェルディがJ1昇格の権利を手に入れられるのか。背番号17の躍動が、大きな鍵を握っていることは間違いない。

文=上岡真里江

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