2017.10.11

【ライターコラムfrom横浜FM】イッペイ・シノヅカ、今夏加入の“勝負師”が首位追撃の鍵を握る

今夏、横浜FMに加入したイッペイ・シノヅカ [写真]=J.LEAGUE
横浜F・マリノスを徹底分析するWEBマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』主筆

 その男は彗星のように突如現れた。明治安田生命Jリーグ第27節・ヴァンフォーレ甲府戦でのこと。1-2と1点ビハインドの場面で投入されたイッペイ・シノヅカは、これがJリーグデビュー戦となった。

 しかし劣勢のチームは追加点を許し、1-3という苦しい状況に追い込まれる。時計の針は後半アディショナルタイムに突入。横浜F・マリノスは敗色濃厚の状況となった。それでもあきらめずに相手ゴールに迫ると、FKからのこぼれ球をシノヅカがダイレクトで決めて1点差に詰め寄る。あと1点が届かずチームは敗れてしまったが、デビュー戦ながら初ゴールを決めた背番号37はサポーターに存在を知らしめた。

 高校在学中にロシアへ渡り、その才能が認められて現地でプロデビューを飾った。スパルタク・モスクワのセカンドチームが3部リーグから2部リーグに昇格するのに貢献し、海外の猛者たちとしのぎを削った。

 今夏、横浜FMの新潟キャンプに練習生として帯同したことをきっかけに加入が決まった。日本生まれながらロシア国籍という、言わば“逆輸入選手”としてJリーグの舞台に立つ。そんな稀有な選手がデビュー戦でゴールという結果を出したのだから、期待値は上がるばかりである。

デビュー戦となった甲府戦で得点を決めた [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 もっとも本人は冷静な姿勢を崩さない。現在の横浜FMは縦方向へのスピードを重視したサッカーを武器にしているが、それが前所属チームの特徴と合致。「世界的にもそういう志向のチームが多い。だから慣れるのに時間はかからなかった」と適応のヒントを明かした。

 活躍の要因はもう一つ。チームの特徴と同時に、海外でメンタルを磨かれたことが挙げられる。日本とは違って自己主張の強い人間と切磋琢磨する日々に、遠慮していては生き残れないことを悟った。当時と外国籍選手について「海外には日本と違う考え方がある。自分で仕掛けて成功すればOK。そういうメンタリティだから、無理に見えることでも成功させてしまう。失敗して怒られても言い返すくらいの気持ちがある。失敗を恐れていたら成功はない。向こうに6年間いて、自分も考え方が変わった」と強気な姿勢を崩さない。

 その考え方は現在も変わっていない。日本人と日本チームに合わせた協調性を持ち合わせながらも、勝負できる場面では臆することなく勝負を選ぶ。「才能のある選手はたくさんいる。どうやって目立って差を出すか。自分が仕掛けて、決めて、結果を出す」。そう言い放つメンタルの強さこそが最大の長所だろう。齋藤学が負傷で今シーズン絶望となった今、トリコロールの浮沈の鍵はイッペイ・シノヅカが握っているのかもしれない。

文=藤井雅彦

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