2017.08.04

【ライターコラムfrom松本】あの夏から6年…松本山雅に受け継がれる松田直樹の“闘う遺伝子”

松田直樹
松田直樹の死去から6年が経つ [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

 あの夏から、もう6年が経つ。

 2011年8月4日、JFL時代の松本山雅FC。元日本代表DF松田直樹さんが、トレーニング中の急性心筋梗塞で帰らぬ人となった。

 当時、長野県内の新聞社に在籍していた自分は松本山雅の「番記者」ではなく、「ときどき顔を出す担当者」程度の存在だった。2日午後に「意識不明」という第一報を本社デスクから電話で知らされた時は、岩手で北東北インターハイの取材中。それでも、「どうする?」というデスクの問い掛けに対して「すぐ戻ります」と即答した。後日に予定していた陸上競技の取材を諦め、震災復興支援の車両が行き交う東北道をひたすら南下。松田さんの故郷・群馬を経由して松本に帰ってきたのは深夜だった。そこから先は確か、一睡もしていない。

願いは届かず、34歳という若さでこの世を去った [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 4日午後1時すぎ。松本市サッカー場で加藤善之監督の囲み取材に加わっている時、監督の携帯電話が鳴る。手短なやり取りで、「何が起こってしまったのか」を察知した。享年34歳。早すぎる旅立ちだった。

 あれから6年、松本山雅はずいぶんと長足の進歩を遂げてきた。「あっという間。頑張らないと、と思ってやってきたらもう七回忌になっていた感じ」。当時から在籍している唯一の現役プレーヤー、31歳の飯田真輝はそう振り返る。同じセンターバックとしても、年を追うごとにその偉大さを感じているという。「まだマツさんの年齢にも追い付いていないのに、歳を取って身体がキツくなればなるほど『こんなにキツい中でやっていたのか』と思うようになった。しかもマツさんはひざのケガがあったし、練習環境も今より恵まれていなかったのに」。確かに当時はクラブハウスがないのはもちろん、野球場の外野芝生でトレーニングすることさえあった。

松田の熱い魂は今もなお受け継がれている [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 時を経てもなお、遺るものはある。「マツさんは小さい子どもからお年寄りまでサポーターみんなと触れ合って交流していた。そういう部分も含めて大事にしないといけないし、今の盛り上がりがあるのもマツさんのおかげだろうなとも思う」と飯田。当時を知る唯一の選手として、表立って彼の名前を挙げることは少ないという。だが古株の年長者として、行動で範を示す。例えばクラブが運営する「喫茶山雅」でのトークイベントに、第1回目のゲストとして先陣を切って出演。「まず自分が出れば下にも繋がっていくはず」との思いからだ。

 背番号3を引き継いだ田中隼磨の胸にも、さまざまな思いが去来しているようだ。7月31日に誕生日を迎え、松田さんの年齢を越えて35歳に。「マツさんはここまで来られなかった。サッカーができている幸せを感じなきゃいけない」と口元を引き締め、「マツさんの思いを考えながら毎年プレーしているけど、『このチームに来て(健在で)プレーしていたらどうなっていたんだろう』と思うようになった。彼がここでいろいろ変えたかったことを、自分が変えていかないといけないと強く感じている」と心境を吐露してくれた。

松田の背番号3を田中隼磨が引き継いだ [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 そのために必要なものの一つは、まず目の前の試合で勝ち点3を積み重ねること。松本山雅は混戦の中で8位に甘んじているが、ここに来て白星先行の復調傾向にある。「結果を出さないといけないという強い気持ちを改めて感じている」と田中。そして首位の湘南ベルマーレに挑む次節は前節同様、選手スタッフ全員がウォーミングアップ時に背番号3のウェアを着用する予定だ。飯田は「あれを着て身を引き締めて気を引き締めて、毎年成長すること。今年で言えばJ1という目標を諦めないことが、チームメイトを亡くした僕たちの責任の果たし方だと思う」と話す。あの夏から6年。「闘う遺伝子」は確かに刻み込まれている。

文=大枝令

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