2017.07.30

「苦渋の選択」…指揮官交代の浦和、堀新監督は「本当の意味での競争」を求める

堀孝史
取材に応じた堀孝史新監督 [写真]=田丸英生
共同通信社運動部

 2017明治安田J1リーグ第19節で北海道コンサドーレ札幌に0-2で敗れてから一夜明けた30日、浦和レッズがついに監督交代に踏み切った。午前中にクラブ幹部から契約解除を伝えられたミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、練習前のミーティングで選手に対して笑顔で「下を向かずに頑張ろう」と伝えたという。大原サッカー場で取材に応じた淵田敬三社長は「ミシャ監督は5年半にわたって本当に浦和レッズを支えてくれ、今の基盤をつくってくれた大功労者。感謝してもしきれないくらい」と前置きした上で「現状を打開するには何か新しいチャレンジをしていかないといけない、というのがクラブの結論」と、重い決断をした理由を説明した。

 就任6年目を迎えた今季序盤は好調だったが、首位で迎えた4月30日のさいたまダービーで最下位の大宮アルディージャに敗れてから歯車が狂い始めた。そこからリーグ戦では3勝1分け8敗と急失速。29日にアウェイで行われた札幌戦は前半に槙野智章の退場で10人となったにも関わらず、ハーフタイムに3人を一気に代えて交代枠を使い切る指揮官の大胆な采配が裏目に出た。那須大亮が後半開始わずか3分あまりで負傷のため退き、9人での戦いを強いられて完敗。試合後、さいたま市内に戻ったクラブ幹部は深夜まで緊急会議を開いて最終決定した。山道守彦取締役強化本部長は「2カ月間いろんなアプローチはしていたが、なかなか改善が見られなかった。札幌戦の試合内容と諸々のことを見て『ここで判断すべきじゃないか』という結論に至った。ここで新しい風を取り入れなかったら、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)やJリーグYBCルヴァンカップ、スルガ銀行チャンピオンシップも含めて、我々が目指すタイトルで勝ち抜けないんじゃないかと思った。本当に苦渋の選択」と、これまでの経緯を明かした。

 次節の大宮とのさいたまダービーや、川崎フロンターレとのACL準々決勝も控えたタイミングでの交代劇。練習場は朝から重苦しい雰囲気に包まれ、涙ぐんだような表情でグラウンドに現れる選手もいた。サンフレッチェ広島時代から10年以上も監督の下でプレーしてきた槙野は「個人的には浦和の誰よりも長く一緒にやってきて、人一倍思い入れは強い。ただの監督と選手という関係を超えた関係だったと思うし、こういう状況になった責任を感じている。毎年一緒に誕生日パーティーをやっていたので、せめて誕生日(10月18日)までは……。ここまで浦和というクラブを変えてくれたし、僕自身もここまで成長させてもらった」と、声を詰まらせながら恩師への思いを口にした。プロ1年目から先発に抜てきされ、今や主軸となった関根貴大は「駄目な時期も辛抱強く使ってくれたので、結果でもっと(期待に)応えたかった。本当に残念な形で終わって自分も悔しい」と言葉を絞り出した。

 後任に指名された堀孝史コーチは下位に沈んでいた2011年にもシーズン途中から指揮を執り、J1残留を果たした経験がある。12年からはコーチとしてペトロヴィッチ監督を支えてきただけに「一緒に仕事ができて、多くのことを学ばせていただいたことに感謝したい。解任になったことを考えると、当然自分にも責任がある。その責任を一人に負わせてしまって申し訳ない」と、まずは今回の交代に複雑な胸中をのぞかせた。それでも今後の戦いに向けては「5年半やってきて本当にいいものはたくさんあるので、それをゼロにしてしまうのはもったいない。いい部分はしっかり継承しつつ、いろいろな課題は出てくるので選手たちといい方向に進めていければ」と、前任者が築いたスタイルをベースにしていく方針を示した。

 一方で、不振を脱するため随所に変化を加えることも示唆した。例えば代名詞となっている3-4-2-1のフォーメーションについて「世間では数字を並べたシステムのことを言われるが、当然相手があることなので、その時その時で変わってくることもあると思う。システムということよりも、今まで自分たちがスタイルとして持ってきた部分を継続していきたい」と、同じ布陣に固執しない可能性を語った。また、これまで固定されがちだったメンバーについても、選手に対して「本当の意味での競争をしながら、本当に戦う準備ができている人間でゲームをやっていこう」と呼びかけたという。最年長の平川忠亮は「レギュラーに関してはゼロからのスタートになると思うので、もう一度激しい競争をしていく」と述べ、今季3年ぶりに復帰し、ここまで出番がほとんどなかった矢島慎也は「俺らにとってはチャンス。俺とか(オナイウ)阿道、(長沢)和輝くん、(菊池)大介くんとかが(主力を)追い越していかないといけない」と気持ちを新たにした。

 堀監督が6年前に「ピンチヒッター」を務めた時はリーグ戦で5試合を指揮して役目を終えたが、今後について山道本部長は「信頼しているから監督に就任していただくので、スパンは今シーズン云々というよりは、ある程度のものは彼に与えていかなくちゃいけないと考えている」とコメント。淵田社長も「彼は育成に対する見方もしっかりしている。そういう人が将来にわたって新しい浦和レッズのサッカーのステージをつくってもらうのを期待したい」と、今回は暫定的でない考えを強調した。わずか3カ月前まで誰もが想像できなかった低迷から抜け出し、本来の強さを取り戻すために新体制で再出発する。

文・写真=田丸英生

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