2017.06.22

【ライターコラムfrom松本】工藤浩平 「平常心」と「闘争心」の狭間で雪辱へ

プロ15年目32歳の工藤は今季も主力としてチームを牽引する [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

 その名を聞くだけで、胸がかきむしられる。

 次節の松本山雅FCがホームに迎えるのはファジアーノ岡山。昨季J1昇格プレーオフ準決勝で敗れたのを筆頭に、煮え湯を飲まされ続けている相手だ。山雅に携わるすべての人の脳裏には「リベンジ」という言葉が焼き付いていることだろう。

 選手ももちろん同様。自然体が特徴の工藤浩平に、あえてその胸中を聞いてみると「毎試合のミーティングでもそのときの写真が出るし、やっぱり悔しい思いがある。今回も(プレーオフと同じ)アルウィンでのナイターだし、借りを返すためにやりがいのある試合になると思う」と応じてくれた。昨季の対戦成績は1分2敗で、21チーム中唯一1回も勝てなかった相手だ。「そもそもリーグ戦のどちらかで勝っていれば(2位と勝ち点同数の3位だったため)プレーオフ自体がなかった。やられっぱなしじゃダメ」。口ぶりこそ普段通り飄々としたものだが、語る言葉には気概がにじむ。

次節の岡山戦は昨季の昇格PO敗退の悔しさを払拭する絶好の機会となる [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 だが、チーム全体が前のめりになりすぎても好パフォーマンスを発揮できない可能性がある。今季の松本は12位と苦しんでおり、ザスパクサツ群馬との前節も結果的には2-0で勝ったものの「みんな点を取りたい意識が強すぎて、ゴール前での落ち着きがなかった」と工藤。人懐こい笑顔が印象的な自身でさえ、「今シーズンはもっとボールを触りたくてイライラしていることも多い。そういうときはピョンピョン跳んだり深呼吸したりして、バレないようにリセットしている」と言う。

 そうして工藤は普段から、闘争心と平常心の狭間で絶妙なバランスを保ちながらピッチに立っている。「フィジカルで勝てるわけでも足が速いわけでもないから、相手との駆け引きを楽しんでプレーしている方が結果的にいいし、力が入りすぎて頭が硬くなってしまうとダメだなと若い頃に気付いた。『平常心でやる』と考えて平常心を保っているわけでもないので難しいですけど」。プロ15年目の32歳はセルフコントロールも承知済みで、平常心を貫いた先に誰もが期待する次節でのリベンジがある。

 次節も、2シャドーの一角として攻撃の中心を担う見込み。元来はパサーのイメージが強く、自らも「基本的には(サンフレッチェ広島時代の佐藤)寿人くんとか(京都サンガF.C.時代の)オグリさん(大黒将志)にパスを出したいタイプ」と自認する。だが松本では昨季キャリアハイ大幅更新の11ゴールを挙げたように、シュート意識も「平常心」の中で一定の比率を占めるようになってきた。「なかなか崩し切れる段階じゃないチームでは、シュートのチャンスに打たないといけない」。それはある意味、松本が成長途上のチームだからこそ芽生えたものだった。

「攻撃は生き物というかちょっとしたズレで入らないものだから、それを合わせていくことが大事。最後のパスやポジショニングのズレをもっともっとなくして、流れのいい時に得点できれば」と工藤。チームの総失点14はリーグ最少なのだから、あとは相手ゴール前でのシンクロ率を上げて結果に繋げさえすれば再浮上は十分ありえる。反攻への一里塚とするためにも、雪辱の岡山戦で好パフォーマンスを披露してほしい。

文=大枝令

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