2017.06.09

【ライターコラムfrom水戸】ゴール数だけじゃない。精神的支柱としても存在意義を示す林陵平

キャプテンを務める林は今季、チームトップの9ゴールを記録 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
ホーリーホックを追いかけて14年目。横浜から茨城に移住して7年半。有料WEBサイト『デイリーホーリーホック』を運営しながら、地域スポーツ誌『yell sports 茨城』の編集長も務める。

 楽勝ムードから一転、一気に緊迫した雰囲気に包まれた。第16節ロアッソ熊本戦、水戸ホーリーホックは前半に3点リードしながらも、後半7分と12分に立て続けに失点して1点差に詰め寄られてしまった。思い出されるのは、第10節FC町田ゼルビア戦。同じように3点先制したが、終盤の猛攻を跳ね返し切れずに1点差に追い詰められた。試合終了まで町田の反撃を抑えきることができず、終了間際に放たれた決定的なシュートを笠原昂史が好セーブで防いでかろうじて勝利を手にしたものの、「試合運び」という大きな課題を突き付けられることとなった。
 
 またしても3点差を1点差にされてしまったことにより、チーム内に動揺が走った。そんなチームの雰囲気を察したのがゲームキャプテンを務めていた林陵平であった。「このまま試合を再開したらそのままズルズルいきそうだった。とりあえず、一呼吸置くことが大事なかなと思いました」とキックオフ前に選手たちを集めて、輪になって軽いミーティングを行ったのだ。「短時間で失点が続いたので、ああやって集まったことはチームにとって大事だったと思いますし、少しですが、気持ちをリセットできた」と浜崎拓磨が振り返るように、選手たちは落ち着きを取り戻し、その後の熊本の反撃をしっかりと抑えて勝利を収めたのだ。2失点したことはもちろん課題ではある。だが、そのままズルズルいかなかったのは、町田戦からの成長と言えるだろう。

大分戦では試合中断時に西ヶ谷監督(右)とゲーム展開の意思統一をするなど、リーダーとして経験の少ないチームを牽引する [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 そして続く第17節大分トリニータ戦でもピッチ内で選手同士のミーティングが行われた。1点リードして迎えた85分、GK笠原と大分FW林容平が激突。林がその際に負った負傷のため、プレー続行が不可能となった。大分はすでに3人の交代枠を使っており、10人での戦いを余儀なくされた。リードしている水戸にとっては非常に優位な状況となったが、そこですかさず林は再び選手たちを集めて話し合いの場を持った。「林容平選手がもう試合に出られなくて、3枚交代していたのもわかっていた。だからゲームキャプテンの僕が監督に話を聞きに行って、フォーメーションの確認をして、その後のゲーム展開の意思統一をしました」。リードした展開で数的に優位に立つことで精神的な隙が生まれる可能性もあった。だが、戦い方を確認し合うことによって、再び気を引き締め直したのであった。そして、その直後に林自らが追加点を奪い、勝利を決定づけてみせた。

 前述の2試合のように試合運びの稚拙さを露呈するなど、「チームとして勝ち慣れていない難しさを感じる」と林は言う。それでも「いろんな経験をしながらチームは着実に成長している」と胸を張る。それが10試合連続負けなしというチーム記録につながっている。そして、日々進化するチームにおいて、ストライカーとしてだけでなく、精神的な支柱として林は大きな存在感を示しているのだ。

「僕はこのクラブの歴史を変えるために来た」。下位に低迷してきた過去とはお別れだ。今年こそ上位に行ってみせる。そのためにこれまで積み上げてきたすべてを出し尽くす覚悟を持って、林はピッチに立ち続ける。

文=佐藤拓也

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