2017.05.10

【コラム】涙を力にかえて…湘南MF神谷優太の挫折を乗り越える“強さ”

山口戦後、サポーターからの応援歌に応える神谷 [写真]=Jリーグ・フォト
サッカーキング編集部

 交代ボードに自分の背番号「7」が記されているのを見た時、彼は何を思っただろう。

 受け入れがたいほどの悔しさ。もどかしさや、不甲斐ない気持ちもあっただろう。ただ、試合後に湘南ベルマーレMF神谷優太が口にしたのは、彼らしからぬ言葉だった。

「特に何もないです」

 普段は勝敗に関係なく、最後まで丁寧に取材対応をする姿が印象的な選手だ。しかし、この日ばかりは口が重く、最後に「すみません」と言い残してミックスゾーンを後にした。言葉に表しきれない感情が、20歳の若者の心を飲み込んでいた。

 7日に行われた明治安田生命J2リーグ第12節のFC町田ゼルビア戦は、神谷にとって、リスタートを切るための大事な一戦だった。

 遡ること5日。5月2日に発表されたU-20ワールドカップ韓国大会に臨む日本代表メンバーの中に、神谷の名前はなかった。

 今シーズンは開幕からなかなかコンディションが上がらずに苦戦していた。その中で今シーズン初先発を果たした第7節の東京ヴェルディ戦では、惜しみない運動量で攻守に貢献し、2アシストを記録。曹貴裁(チョウ・キジェ)監督は、交代でベンチに戻ってきた神谷を熱く抱き寄せ、「今日の優太の出来なら、絶対にU-20日本代表の力になれる」と賛辞を送った。

 それでも当の本人は、「(曹貴裁監督の評価は)本当に嬉しかったけど、もっともっと成長していかないといけない。もっと上で戦うには、まだまだ足りないので」と全く浮かれる様子はなかった。それだけ、U-20W杯に懸ける思いがあったのだろう。神谷は常々、「本当に大事な大会なので、メンバーに入って、優勝を目指して頑張りたい」と口にしていた。

 2日のメンバー発表を経て、3日に行われた第11節レノファ山口FC戦は出番がなかったが、彼の思いを汲み取った湘南サポーターは、試合後に神谷の応援歌を歌い、横断幕を掲げた。

《ここから「一緒に」世界へ這い上がろう 俺達の7 神谷優太》

 その光景を目に焼き付け、再出発を誓って迎えた町田戦は、闘志をぶつけ、自分の力を示す試合になるはずだった。だが、開始3分のプレーで警告を受けると、その後は消極的なプレーが続いた。曹貴裁監督は31分に神谷を交代させる決断を下す。「監督6シーズン目だが、過去に前半で選手を代えたのは1、2回くらい。それだけ彼はひどかった」(曹貴裁監督)。神谷は試合後、「気合いを入れてやろうとしたけど、空回りして、メンタルの弱さが出てしまった」と声を振り絞った。

 彼が今いる場所は、サッカー人生におけるどん底なのかもしれない。だが、周囲の人々は、彼に期待することをやめない。曹貴裁監督の会見での言葉には、続きがある。

「人間、一度は『ひどかった』というプレーをピッチでしないと、特に若い選手はなかなか分からない。今日は優太が学ばなければならない日。僕は彼がもっとできる選手だと思うし、もっとやらないといけない選手だと思う」

 今シーズンの途中からキャプテンを務める菊地俊介も、「落ち込んでいると思うけど、若くてこれからの湘南を背負って立つような選手なので、ここから頑張ってチームの力になってほしい」と、さらなる奮起を期待した。

 神谷のサッカー人生は、これまでもすべてが順調だったわけではない。リーグ初スタメンを飾った昨シーズンの第14節名古屋グランパス戦では、失点に直結するミスを犯し、66分に途中交代している。試合後には目を赤く腫らしながら、「もっともっと頑張って、認められるようになりたい」と誓った。そんな神谷のことを、曹貴裁監督は「挫折したことやうまくいかなかったことをしっかりと受け入れて次に進める、非常にたくましい選手」と評し、時に厳しく、時に温かい言葉を掛けて育ててきた。

 今回の出来事も、きっと成長の糧となる。神谷の何よりの魅力は、涙を力にかえて、高い目標に向かってひたむきに努力できるところだ。東京ヴェルディユースから青森山田高校に転入したのも、湘南への加入を決めたのも、強い覚悟の上のこと。だから皆、彼の未来に夢を見る。

 次節に向けての話を振られた時、神谷は「一度整理してから、また考えたい」と話した。この大きな挫折を乗り越えるには、少し時間を要するのかもしれない。しかし、必ず這い上がり、ピッチの上で輝くだろう。曹貴裁監督や湘南サポーター、彼を支えるすべての人が注ぐ期待と愛を、精いっぱいに受け止めて。

文=平柳麻衣

※『サッカーキング』では2016シーズンより湘南ベルマーレのチョウ・キジェ監督の表記方法につきまして、クラブ側と相談の結果、「曹貴裁(チョウ・キジェ)」とすることにいたしました。

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