2017.04.06

【ライターコラムfrom福岡】「守備は攻撃のための一手」天国と地獄を経てたどり着いた“井原イズム”の進化

井原イズムは、J1昇格とJ2降格という2年を経て、確実に進化を遂げている [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
大学卒業後、雑誌編集者を経て2005年よりフリーランスとして活動中。九州を拠点にサッカーほか、陸上など幅広く取材。1児の母としても奮闘中。

 スコアレスドローに終わったJ2リーグ第6節・横浜FC戦。雷のため試合開始が27分遅れ、55分には雷と雹の影響により試合が19分間も中断するという「集中力を保つのが難しい」(井原正巳監督)ゲームになったが、一方で“井原アビスパらしさ”が垣間見えた試合でもあった。

 アビスパ福岡はこの日、3-4-3のフォーメーションでスタートした。「(横浜FCが)FWイバへのボールを起点に攻撃を組み立てるので、そこをケアしたかったことと、引いて守るだけじゃなく高い位置から圧力をかけたかった」(井原監督)というのが、3バックを選択した理由だ。

 井原監督は2015年の就任当初から、3バックと4バックを併用して戦ってきた。今季も開幕から第4節までは、4-4-2でスタートしたが、第5節の山形戦では「相手の形と、守備の特徴を踏まえて」(井原監督)、2トップの下にFW石津大介を置く3-4-3を採用し、石津が相手のボランチ脇のスペースを使って攻撃の起点となった。井原監督が3バックと4バックを併用する理由は「いい守備からの攻撃を意識したなかで、相手の長所を消して、うちが主導権を握るため」だという。

「たとえば4バックでも、両サイドバックが上がってボランチが下がった形でビルドアップすれば3バックのような形になるし、システムがどうであれ、基本的にはやることに変わりがないというイメージです。守備はボールを奪うためにあるので、いい形で効率よくボールを奪って攻撃につなげるために、相手の長所を消す形を選択しているということです」

「相手の長所を消す形」という部分において、第6節の横浜FC戦は、井原アビスパらしい対応を見せる。4-4-2の横浜FCに対し、3-4-3でスタートした福岡だったが、右サイドに入った駒野友一の裏のスペースを使われ、序盤に2度のピンチを招いた。そういった状況から判断し、井原監督は開始10分ほどであっさりと、フォーメーションを4-4-2に変更して問題点を修正した。

「(横浜FCの)サイドのMFがインサイドに入って、そこにコマ(駒野)が引きつけられて、空いたスペースを使われました。サイドで深いところまで侵入されると押し込まれると思ったので、早い段階で4バックに変更しました。試合前からフィットしなければシステムを変えるということは選手たちに伝えていましたし、同じ形になって(マークの相手も)ハッキリしたと思います」

 3バックでは左DFだった冨安健洋は、4バックに変更したタイミングでボランチに上がった。それでも「試合前から想定していたので、戸惑いなくできた」と本人が話す通り、システム変更にもスムーズな対応を見せた。その後は横浜FCのFWイバ、三浦知良にほとんど仕事をさせず、序盤は攻撃参加が目立った田所諒のオーバーラップも減少した。そして試合はスコアレスドローとなった。

 得点に結びつけられなかったことは、課題だ。しかしシュート数は、横浜FCが5本だったのに対し、福岡は12本とFW石津の言葉を借りれば、「シュートまでは行けた」。ここが、井原体制3年目で見せる進化のポイントだ。昨季までの福岡ならば、運動量が落ちてくると、たとえば3バックが5-4-1のような形になり、コンパクトな形を保つことができず、1トップが孤立してしまう場面も多く見られた。しかし今季は形にこだわらず、コンパクトな守備から前向きにボールを奪って、スムーズにシュートまで運べている。

“守る”ためではなく、“攻め”のシステム併用。「守備は攻撃のための一手」という“井原イズム”は、J1昇格とJ2降格という2年を経て、確実に進化を遂げている。「奪ってからの質と判断」(井原監督)。これが、今後の課題だ。

文=新甫條利子

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