2017.03.09

【ライターコラムfrom川崎】「もっと本気にならないとダメだ」 香港遠征中に小林悠が大塚翔平に伝えたこと

小林悠
鳥栖戦で先発出場した小林悠(左)と大塚翔平 ©J.LEAGUE PHOTOS
川崎フロンターレの取材を中心に活動。将棋界にも精通。著書に「将棋でサッカーが面白くなる本」(朝日新聞出版)。「川崎フロンターレあるある1&2」、「将棋ファンあるある」(TOブックス)。「サッカー脳を育む」(中村憲剛/ぴあ)では企画&構成も担当。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。

 開幕戦でスタメンだった家長昭博が欠場。第2節・サガン鳥栖戦でスタメンとしてピッチに立ったのは、大塚翔平だった。

 この試合に向けて取材を進めていると、チームメートからの評価がかなり高いことが伝わってくる。例えば、中村憲剛はこんな期待を口にしていた。

「スペースを見つけるのが上手なショウヘイ(大塚翔平)がいたほうが相手は困る。そういう狙いがオニさん(鬼木監督)にはあると思う。彼にしかない武器はありますから、それが良い方向に転ぶと良いね」

 昨年加入した大塚翔平は、一昨年まで当時J2だったギラヴァンツ北九州に所属していた。そこを戦力外になり、トライアウトを経て、J1の川崎フロンターレの一員に。シーズン序盤は出番に恵まれなかったが、抜擢されたカップ戦で活躍し、夏にはレギュラーに定着。しかし秋以降は試合に絡めず、そのままシーズンを終えている。そして今年、主力を温存して臨んだ先日のAFCチャンピオンズリーグの香港遠征では、チームに帯同していながらも試合当日はベンチ外となるという悔しい思いをした。

「もちろん、出たかったですけど、(監督の)そういう判断だったので仕方ないです」と淡々と語るのは相変わらずで、この鳥栖戦に向けても「高ぶる気持ちはありますけど、試合になったらやることは変わらないですね」と、そのスタンスはブレなかった。ただ、大塚なりに期するものがどこかあるようにも感じられた。

 実はその香港遠征中に、こんなことがあったようだ。それはキャプテンの小林悠からの激励。小林が明かしてくれた。

「香港でメンバー外れた時、ショウヘイには『もっと本気にならないとダメだ』と言ったんです。香港の練習でも、まだメンバーが決まっていない状態だったから、『なんでもっとやらないんだ?』と思ったんです。それは普段の練習からそうで、あまり気持ちが感じられない。『お前のプレーは好きだし、すごく一緒にやりたい。でも、もっとちゃんと戦う部分を練習から出していかないと、試合で使ってもらえないぞ』って本人に言いました」

 小林がそこまで言うのには、大塚に対する「期待」と「もどかしさ」があったからでもある。

「ショウヘイは間で受けてくれるし、スルーパスもうまい。去年もボールがうまく回らない時に、ショウヘイを入れて欲しいと思うことが何回もあったぐらい。だからこそ、もっと頑張れよと思っていた。自分は下手だったけど、頑張ってきた。ショウヘイなんか本当にセンスがあるし、めちゃくちゃ上手い。あとはちゃんとやればいいだけじゃないですか。上手い選手が頑張れば、もっと簡単に試合に出れるのにって……いつも思っていました。あれだけ上手い選手が、なんでもっと頑張らないのか……それをすごく感じるんですよね。もちろん、頑張っていないってことはないんですけど、もっと自覚を持ってやってくれればと思って、ちょっと言いました。そうしたら、こんなすぐのタイミングで(出番が)巡ってくるとは思わなかったですけどね(笑)」

 その鳥栖戦。先発した大塚は、自身の持ち味である、相手のブロックの間で受けるプレーを随所に見せたものの、ハーフタイムに交代。試合後の本人も消化不良といった表情だった。

「うまく先制点が取れて、最初の15分は完全にウチのペースだったと思います。ただそこからゴール前にボールを当てて、そのセカンドを拾うという相手の二次攻撃、三次攻撃を受けました。ロングボールを蹴られると、どうしても後ろは下がってしまうし、ボランチも下げられる。前との距離も開いてしまい、ボールを奪ってからも距離が遠くなってしまい、なかなか一つ剥がせなかった。ただそこでひとつ剥がせれば、というところでした」

 結果から言えば、十分なインパクトを残すまでには至らなかった。しかし大塚の強みは、そういう状況でも、また黙々と試合に出る準備を続けることができるところでもある。大塚翔平のさらなる頑張りに注目したい。

文=いしかわごう

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