■名古屋グランパス 闘莉王が見せる戦う姿勢、コンディションに不安も好材料は多い
リーグ戦前節の勝利でアルビレックス新潟との勝ち点差を「1」、ヴァンフォーレ甲府とも「2」差としたことで、名古屋のモチベーションは天井知らずに上昇中だ。
未だ他力が必要な残留争いではあるが、勝てば何かが起こる状況は選手たちの背中を力強く押している。田中マルクス闘莉王は「ここからが勝負。やっと勝負できるようになったんだ!」とチームメイトに訴えかけ、選手たちもそれに呼応。ベガルタ仙台との試合は押し込まれる展開が続いたが、「90分間には守備の時間もある。スコアも流れもある。2分で先制できたし、2-0にもなって守備から入る流れになるのは当然」と、守備で勝ち点3を手繰り寄せたと自信を持っている。 ボスコ・ジュロヴスキー監督も「仙台戦は流れの中から2得点できたこと、そして守備が良かった」と話しており、チームの充実ぶりはとどまることを知らない。仙台戦ではピッチコンディションの悪さからポゼッションを諦めた部分もあったが、ホームのパロマ瑞穂スタジアムではシステマチックなパス回しも復活するはず。ホームコートアドバンテージを利した主体的な試合展開にも期待が集まる。
一方で、矢野貴章が出場停止のためセットプレーでの高さが失われること、そして闘莉王が急ピッチのコンディショニングと10カ月ぶりの試合の負荷で今週は慎重な調整を続けたことが不安材料として挙がっている。闘莉王についてはきっちりと合わせてくるだろうが、不在の矢野の部分だけはメンバー全員でカバーするしかない。チーム屈指のエアバトラーの穴をいかにして埋めるかは、一つ注目点でもある。
また、前節が日曜開催であったため、今週は実質的な練習日が3日しか取れなかったことも気掛かり。コンディショニング中心に進められたトレーニングの中で、どれだけ対アビスパ福岡という部分を追求できたかは未知数だ。それでもチームの勢いは本物で、今季初の連勝への挑戦、5月4日以来のホームゲーム勝利など、選手の意欲をかき立てる好材料の方が多い。一つの勝利が様々な歓喜を呼び起こす一戦に、名古屋はチーム一丸となって立ち向かっていく。(今井雄一朗)
■アビスパ福岡 他会場の結果次第で降格も、名古屋のセットプレーに注意したい
残留圏内となる年間15位と勝ち点差「8」の福岡は、今節負ければ降格が決定する可能性もある。崖っぷちに立たされた福岡だが、「失敗を恐れずに、いつもどおりの積極的なプレーができるかが重要」とDF駒野友一は話す。対する名古屋は、監督交代、田中マルクス闘莉王の加入とカンフル剤を打ち、残留圏内まで勝ち点差「1」に迫った。名古屋の勢いに押されず、積極的な姿勢で臨めるかどうかがポイントになる。
名古屋は闘莉王の加入で最終ラインの安定感が高まった。駒野は闘莉王について「どんなボールでも跳ね返してくれるし、つないでくれるという安心感のある選手」と話しており、福岡は闘莉王ら名古屋の守備ラインに高さの勝負を挑むより、スピードで勝負するイメージを持つ必要があるだろう。金森健志や三島勇太、為田大貴といったアタッカータイプの選手を生かせるかがカギになる。さらに9月26日のトレーニングマッチでは、ひざのけがで先発から遠ざかるウェリントンがゴールを決めており、完全復帰も期待したい。
前節の反省材料は、後半立ち上がりにコーナーキックの流れから2失点したことだ。名古屋はセットプレーを得意にしており、今節は集中力をより高めなければならない。また、両チームともロングボールが多いため、セカンドボールをどちらが拾うかといった点もポイントになる。前節はメンバー外だったが、古巣対戦となるダニルソンが中盤でボール奪取力を発揮できるかが注目ポイントだ。(新甫條利子)